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2022年の複業(副業)解禁企業を総まとめ&解説

株式会社Another works代表の大林です。45,000名以上が実名顔写真付きで登録する複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております。

2022年は複業(副業・兼業)が国策として動き出し、新しい働き方を導入する企業が爆発的に増加した、変化の多い1年となりました。

2022年の複業(副業)動向をまとめると、主に「大手企業・金融機関の解禁・容認」、「解禁から推奨への動き」、「公務員での容認」の3点において大きな動きがありました。本記事では、3つの観点で2022年の動きや複業(副業)解禁企業を総まとめ&解説していきます!

毎年1年の振り返りと次年度のトレンド予測をしています。過去の記事はこちらをご参照ください!

大手企業・金融機関での複業(副業)解禁が続々と

①凸版印刷

凸版印刷では、2021年4月より容認していた社外副業に加え、2022年4月より社内副業を含めたトッパン版ジョブ型人事処遇制度の導入を開始しました。日経の記事によれば、社外兼業副業制度は従業員のスキルアップやキャリア形成などを目的にしており、「副業・兼業」を通じて知見やスキルを得た社員による事業ポートフォリオの変革達成への貢献に期待しているといいます。制度としては、事前に会社に許可を得た上で、月40時間を上限に活動できるとのことです。2020年のモデル就業規則改訂をきっかけに、各企業での制度設計が加速し、従業員が複業に取り組みやすい体制が整いつつある印象です。

また、凸版印刷の取り組みでは、シニア層への制度設計が特徴的です。記事によれば、45歳以上の社員を対象に一部、通常勤務時間帯での社外副業・兼業を認める、「セカンドキャリア副業・兼業」制度を併せて導入し、社員のセカンドキャリアを積極的に支援するとのこと、週2日を上限に中高年層社員の「挑戦」を後押ししています。

人生100年時代、先行きが不確実なVUCAの時代において、これからはミドルシニア層(40代〜60代)も「複業」を通じてリスキリングやキャリア構築をしていく時代になると予測しています。実際に複業マッチングプラットフォームを運営する中で、ミドルシニア層のサービス登録も年々増えています。自身の長年培ってきた知識・経験力・人脈を「顧問」や「社外取締役」などで活かすセカンドキャリアを探索する方が増えているのです。複業は若手のキャリア設計のためだけにある、という考え方は全く違います。複業がしやすくなった現代だからこそ全世代で複業が注目されているのです。

②大和ハウス

2022年4月は、大和ハウスでも副業が解禁されました。記事によれば、副業をする方法は、受け入れ先企業やNPOなどを会社があっせんする公募型と、社員自ら副業先を選ぶ申請型の2種類が用意され、対象は、いずれも入社4年目以降の社員とのことです。スキルの向上や新たな人脈づくりなどを想定し、「キャリア自律」の意識浸透を狙うといいます。

複業(副業)解禁・容認企業の多くに共通しているのが「キャリア形成」を狙うという点です。新しいスキルが台頭し、次々と新たな知識が求められる現代において、実務経験でしか得られない経験が、キャリアプランをより鮮明にイメージすることへ直結します。昇格、転職、独立起業など今後10年、20年を考えるキャリアにおいて、複業(副業)が欠かせないでしょう。

③日本郵政

2022年11月に発表された日本郵政グループでの社外副業容認も大きな話題を呼びました。日経の記事によれば、日本郵政グループでは、勤務時間外に加えて、週1日分までの勤務を自治体や企業での副業に充てられる社外副業を認めるといいます。持ち株会社と傘下の日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の各本社勤務の約6000人が対象となるとのことで、多様な働き方の支援と社員のキャリア形成が目的だといいます。

日本郵政の特徴は、社外副業の想定の1つを自治体での地域開発としている点です。後述もしますが、複業(副業)解禁・受け入れの流れは民間企業に留まらず自治体・行政でも広がっています。行政では、新型コロナウイルスの流行・拡大をはじめとした未曾有の状況の中でも最適な行政サービスを住民に提供するための情報発信、DX推進など、職員の専門的な知見やリテラシー向上が急務となっています。そこで、専門知識や経験を持つ民間複業人材の受け入れに注目が集まっているのです。例えば、長野県ではメタバース(仮想空間)の活用や、広報の基本方針策定など、6つの案件で複業人材を募集しています。複業をしたい個人にとっても、普段は関わることが難しい行政に複業という新しく働き方で参画し、地域活性に関わることで、本業に還元できることも多いでしょう。今後、行政複業は確実に増えていくと予想しています。

④金融機関

2022年は、金融機関での複業(副業)解禁・容認が注目されました。日経では、「銀行を変える」という特集が組まれ、銀行員の副業がピックアップされています。記事の中では、金融機関の副業・兼業制度の導入状況を示され、2021年3月末時点では20前後だった副業導入も、2022年3月末には40を超えているというのです。

鹿児島銀行では、2022年1月から希望する行員の副業を認めました。記事によれば、行員約2200人の調査で、約8割が「副業する機会があればチャレンジしたい」と回答したといい、副業意欲の高まりが分かります。

山梨中央銀行では、2022年4月に副業が解禁され、実際に若手行員が副業として花火師をしているという異業種での副業が取り上げられていました。行員の持つ地域貢献への想いが、副業を選ぶ基準になっているそうです。異業種への挑戦はなかなかハードルが高い一方、本業を続けながらチャレンジできる複業だからこそ、大きく環境を変えることなく実現できるのです。

群馬銀行では、2022年8月から副業制度を導入し、臨時従業員も含む全従業員約4300人を対象に、就業時間外に銀行以外の事業を行うことを認めました。記事によれば、育児休業や介護休業中の従業員にも認める制度であり、銀行だけでは得られない経験や人脈の獲得や、キャリア形成の後押しにも繋げる狙いがあるといいます。

常陽銀行と足利銀行などを傘下に持つめぶきフィナンシャルグループ(FG)では、2022年11月から2行をはじめとした6社で副業制度を導入しました。副業は許可制で、認められる業務は個人事業か業務委託に限定され、雇用契約を結ぶ正社員やアルバイトなどは不可としているそうです。こちらも、群馬銀行同様、スキルアップや人脈拡大などにつなげてもらう目的があるといいます。

今回はすべての企業を紹介することはできませんでしたが、そのほかにもエクシオグループ株式会社、小林製薬株式会社、株式会社ソミックマネージメントホールディングス、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、佐賀銀行など、多くの企業で複業(副業)解禁や容認が進みました。また、JR西日本ではグループ内で副業を公募する制度や、キリンHD・ヤフー・パーソルブリヂストン・パルコなど6社でそれぞれ行われた相互副業の取り組みなど様々推進されています。

複業(副業)解禁から複業(副業)推奨へ

2022年は、複業(副業)を解禁するに留まらず、自社への還元やキャリア形成を目的に複業(副業)を推奨する動きが、大手企業を中心に始まりました。

よく言われている複業(副業)解禁にあたって企業の懸念は、主に人材流出・情報流出・労働時間管理の3つです。中でもネックになっているのが人材流出でしたが、その課題は幻であったことが証明されつつあります。日経の記事によれば、2020年7月に副業制度を導入したキリンホールディングスでも同様の心配があったものの、副業を通じて本業でまだやれることは多いと再認識する人が多く、杞憂であったというのです。社外で得た知見を本業に活かせるというメリットが大きいうえ、人材流出という懸念がなくなった今、複業解禁は増加の一途を辿るでしょう。

昇進条件に複業(副業)を

三井住友海上火災保険では、2030年を目安に出向や社外での副業など「外部での経験」を社員が課長に昇進するための前提にするといいます。記事によれば、多彩な人材の育成や外部との連携強化を狙いとし、外部の企業や官公庁に出向する機会を確保した上で制度設計を進めるとのことです。既に週末を副業に充て会社を起業した事例も出てきており、実際の声が紹介されています。

複業(副業)解禁が進んだ現在、解禁してもほんの一握りの人しか始めていない、制度で終わってしまうという企業側の悩みを聞くことが増えてきたように思います。複業(副業)の解禁を制度で終わらせず浸透させるためには、なぜ副業を解禁するのか、それをどう本業に還元することを期待しているのか、企業側が明確に指し示し、個人も目的を明確にすることが重要です。複業(副業)をすると本業の手を抜いているように見られるのではないか、反対されるのではないか、そんな懸念や雰囲気が複業(副業)を始めるハードルを上げているでしょう。そこで、本件のように昇進条件など企業が目的やメリットを明示することで、複業(副業)がしやすい環境へと変化していくのではないでしょうか。

週休三日制の導入、リスキリングの促進×複業

現在、リスキリングや学び直しが叫ばれる中、それを行う機会の確保や制度設計が課題になっています。厚生労働省は、労働者の「学び直し」に向けて労使が取り組む事項を示したガイドライン(指針)を策定し、その中で、学び直しで得た新たなスキルを実践する場として、副業・兼業といった働き方ができる環境の整備について触れています。

パナソニックでは、希望する社員が週休3日を選べる制度を導入する方針を明らかにました。記事では、対副業や学習、地域ボランティアなど会社外での取り組みを推奨し、社員が働きやすい環境づくりを進めるといいます。

塩野義製薬でも、希望する社員が週休3日を選べる制度を始め、全社員の7割にあたる約4000人が対象となるとのことです。大学院でのリスキリング(学び直し)などを想定し、同時に副業も解禁することで、知見の吸収や外部の人脈づくりに使える時間をつくり、組織全体のイノベーション力を高める狙いがあるといいます。

複業でウェルビーイングという感情報酬を得る

複業で「ウェルビーイング/well-being」を求めることも可能です。一日の大半を占める仕事で、挑戦や夢、趣味を一社だけで全て実現するのは非常に困難です。一方で、今勤めている企業を退職してゼロから新しいことに挑戦することも、ハードルが高く、非常に難しい決断になるでしょう。そこで複業です。複業という形であれば大きく自分の環境を変えることなく、本来やりたかったことに挑戦することができます。近年複業の案件は、企業はもちろん、自治体やスポーツチームなど幅広く募集があり、「働く環境」における選択肢が広がっています。複業を通じて、新しい学びを得て、自身の成長を実感(自己実現)したり、思い入れのある地域に恩返し(他社貢献)をしたりすることで得られる感情報酬はウェルビーイングに繋がるでしょう。

ヤフー株式会社では、副業に制限はなく、出勤不要の働き方や子育てや介護のための週休3日が導入されました。記事の中で同社本部長は「一人ひとりが望む働き方や生活の実現を会社は応援する。個々のウェルビーイングが高まれば業務パフォーマンスを最大化できる」と話しています。

一方で、副業に潜む危険に、ウェルビーイング(心身の健康や幸福)の観点でアラートを出している記事もあります。東洋大学の川上淳之教授は記事内で「副業をするのは何かが足りていないからだ。収入なのか、やりがいなのか、元になっている問題点と向き合う必要がある」と指摘し、スキル向上を目的とする人は満足感や幸福度が比較的高いが、収入目的の人は低い傾向にあり、生活を維持するために副業せざるを得ない状況は幸福とは言いがたいと話しています。複業(副業)制度はあくまで1つの手段であり、導入することで幸福度が高まるわけではありません。どんな目的を持ち、何を得ようとしているのかが重要であり、課題に対する適切な制度設計が不可欠でしょう。

公務員の複業(副業)容認が話題に

2022年注目をあつめたのが、公務員の複業(副業)容認です。一般的に、複業(副業)に対して風向きが厳しいといわれている公務員は、国家公務員法や地方公務員法により、現時点では複業(副業)が制限されています。しかし、公務員もすべての複業(副業)が禁止されているわけではありません。例えば、公共性の高いボランティアや講師などの活動は許可されるケースや、プロボノのボランティアという形であれば、届出をすることで容認されているケースもあります。各自治体が独自で規則を作り、複業(副業)を容認している事例が増えているのです。

①長野県

長野県では、2022年4月から副業制度を改定し、地域や社会に貢献する活動に限って県職員の副業を認める制度を導入、副業に従事できる時間の上限を設けるほか、許可する副業を具体的に例示し積極的な利用を促すといいます。職員が「このケースでは副業が認められているのか」と判断に迷い、利用をためらうケースを防ぐ狙いがあるといい、農産物の生産やスキーのインストラクター、地域課題解決に関連する事業の企画運営などの具体例を提示したそうです。

②山形県

山形県では、サクランボ収穫の作業に限り県職員の副業を解禁しました。記事によれば、県の調査で2020年はサクランボ農家の24%が「人手不足」と答えており、人手不足を解消するために県職員の副業を認めたといいます。

③北海道

北海道では、2022年4月に規定を見直し、希望する道職員が副業しやすい環境を整えたといいます。北海道日高振興局では地域の課題解決につながる活動や勤務時間などの条件があった職員から活動を始めているようです。

兵庫県神戸市、奈良県生駒市などの先進事例

公務員の先進的な取り組みで有名な兵庫県神戸市では、職員が公共性のある組織で副業に就きやすくするため、2017年4月から独自の許可基準を設けています。奈良県生駒市でも同年8月から職務外に報酬を得て地域活動に従事する際の基準を策定し、市民との参画や協働によるまちづくりがより一層活発になることを目指しているそうです。

他にも、2022年までに複業(副業)を一部容認、地域貢献活動という名称で外部での活動を支援している自治体は、埼玉県北本市、神奈川県横須賀市和歌山県有田市、青森県弘前市、愛知県西尾市、兵庫県丹波篠山市、熊本県あさぎり町、北海道新得町、北海道池田町、北海道様似町、山形県寒河江市、長野県塩尻市など多数あります。

自治体が民間複業人材を受け入れる"行政複業"がトレンドに

未だ公務員の複業(副業)解禁の障壁が高い一方、既に、民間複業人材を行政へ登用する「行政複業」が増えています。「行政複業」とは地方自治体が複業を募集、(地域を問わず)民間人材とマッチング、オンラインで複業参画する働き方です。例えば、長崎県壱岐市では、職員がワーケーションの誘致や行政のDX化などを進めるため、首都圏や福岡に在住の民間人材5名を複業アドバイザーとして採用しました。

新型コロナウイルスの蔓延により、デジタル化への対応や情報発信の強化など、行政に求められる役割は多様になっています。民間人材の学び直しが叫ばれる今、行政職員にも学び直しが求められているのです。記事では、職員がオンライン講座で学び、資格取得やボランティア活動に活かしている事例が紹介されています。行政複業においても同様です。外部の複業人材と職員が共同でディスカッションを行うことで新しい視点や学びを得たり、些細なコミュニケーションから気づきがあったりと学び直しに繋がっていきます。行政複業がトレンドとなったように、行政内で複業という働き方への抵抗が徐々に薄れてきています。公務員の複業解禁も必ず実現するでしょう。

まとめ

ここまで、2022年の複業(副業)解禁動向を、大手企業・金融機関の解禁、解禁から推奨への動き、公務員の容認の3分野に分けてご紹介してきました。2023年も最新の複業動向を日経COMEMOから発信していきます!

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