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お客様に”選ばれる”ための5つの質問

過去に優秀な実績を持つ人ほど、フリーランスになったら喰えない。
意外かもしれないが そんなことは実によくある話なのだ。
それはなぜか。
その理由は、すべてこの「5つの質問」の中にある。

ケーススタディ:私の友人の話。

まずは私の友人の話から入っていこうと思う。
私の小学~中学時代の友人でケンジ(仮)という同級生がいる。彼は子供のころから優秀で、しかも女子にモテる。私にとっては羨ましく思えるやつで、若い頃は無意識のうちに彼の真似なんかしたこともあったっけ。そしてその都度 彼ほどしっくりこなくて恥ずかしい思いをした。ケンジはある意味、私の憧れの存在だったように思う。

中学を卒業するとケンジはまるで当たり前のように県内で有数の進学校に進み、そして東京の有名な大学へと進んでいった。

その頃になると付き合いは年に数回の他愛もない電話くらいで、同じ東京で暮らしていても果たさない約束をするばかりだった。そう考えると、彼との付き合いは中学までが最も濃くて、それ以降は何年かに一度会って酒を飲む程度の薄い付き合いだったように思う。

その後も彼はいわゆる”エリート”として、誰もが知る大手有名企業に就職する。それから彼の歩んだ数十年間は、他人から見たら羨むほどのエリート街道だったのだと、その頃の私は思っていた。

お互いが社会に出てからも年に数回は電話で近況を伝え合った。嫌な上役の話や当時付き合ってた女性の話。好きな有名人の話や今気になってる趣味の話など、本当に他愛もない話で私たちは友人として繋がっている気がしていた。

社会人として順調にキャリアを積むケンジ。

会社員としてのキャリアを積んできて、40代の頃 ケンジは新卒で入社した大手企業の執行役員になった。私の中では勝手に「彼はこのまま順調なままで定年を迎えるんだろうな」。そう思えたし、そうなるものだと信じて疑わなかった。

そしていつの日からか 年一度が数年に一度になり、10年も会わない日が続いた頃 世の中はコロナ禍に突入した。

もう会わないことが普通に感じていたころ、突然彼からメールが入った。
「久しぶりにzoomでもどうだい?」

フリーランスになっていたケンジ。

ケンジとのzoom。いつものようにお互いの近況から話しだすわけだが、なにかケンジの様子がおかしいなと気付いた。いつもの印象としては「堂々と」「溌剌と」という感じなのだが今日は少し緊張しているようにも見えた。

「なんかあったんか?」私がそう聞くとケンジは「実はさ…」と言いにくそうに切り出してきた。

彼の話を聞いてまとめると「執行役員までいった会社を辞めた」ということと「フリーランスのコンサルタントになった」ということだった。

私は少し驚いた。新卒から執行役員までの30年以上も過ごした会社を辞めたこともそうだが、それ以上に転職ではなくフリーランスになったことに驚いた。

その決断をする上でいろいろあったのだろうとは思った。だからその「理由」を私は深く聞くことをしなかった。彼の決断、彼の意思決定だ。それは尊重すべきだし、何よりも私がとやかく言うことではない。

普通に考えれば、ケンジがフリーランスになったらビジネスもうまくいくと思うだろう。何といってもあの”ケンジ”だ。きっと今までの経験を活かしてフリーランスとしても成功していくだろう。
私はそう思ったが、実際のところは違ったようだ。

「もう2年頑張っているんだけど、そろそろ貯金もなくなってきて不安ばかり大きくてさ。」ケンジはそう言うと、私に初めて見せる苦しそうな表情を浮かべて下を向いた。


「培ってきた能力」と「売れる力」。
その2つは別のスキルなのだ。

ケンジもそうだが、起業しようとする人には何がしかの「スキル」がある場合が多い。もちろんフランチャイズビジネスやMLMなど、ノウハウや商品を買って(契約して)行うビジネスもあるが、フリーランスの場合は「スキル型」が多い。

例えば、会社員時代に部長職などのゼネラリストだった人が同業界のコンサルタントになるとか、飲食店の店長がその経験を活かして個人店舗をオープンさせるなんてこともある。
「スキル」と明確に言えるものもあれば「経験」というキャリアとしての能力もあるだろう。

ケンジも長年の経験(成功体験・実績)を武器にフリーランスになった。普通に考えれば経験もあるし実績もあるわけだ。顧客が付いてサービスを提供できれば少なくともビジネスとして成立するはずだと思った。

しかしケンジは成功しなかった。ウェブサイトをしっかりお金をかけて作ったし、効果的だと言われる広告宣伝も先行投資してやってきたという。
だけどどれもうまくいかなかった。

それはなぜか。
私の考えはこうだ。

能力は武器。しかし使いドコロがない武器はただの道具ということだと思う。つまりこの2つはまったく別の能力であり、しかも成功するためにはその「両方」が必要だということだ。

スキルがあれば売れるわけではない。スキル=売れるではないのだ。
しかしスキルがなければ売れはしない。例え売れたとしてもリピートされないだろう。ビジネスとしては成立しない。

やはりスキルを提供するためには具体的な「売る力」が必要だ。

では その「売る力」とは何か。
ケンジの例に合わせて書いていこうと思う。


「美味いもの」が一番売れるものではない。
「欲しい」を多くつくれたものが売れるのだ。

悩み苦しんでいたケンジは私が初めてみるケンジだった。
子供の頃から自信に満ち溢れていた憧れのケンジが見せた初めての姿だった。

私はケンジのビジネスモデルを聞いてみた。
すると正直言って「穴だらけ」だった。こ綺麗なウェブサイトはある。キャッチーなウェブ広告は何年も続けて打っている。だけど問い合わせすら年に数えるくらいで、売上のほとんどが知人の紹介だった。

これは意外とフリーランサーのよくある傾向なのではないかと思うわけだ。

つまりこの傾向の人に必要なのは「美味いものが一番売れるのではない」という思考の方程式を理解することだ。
勘違いしないでほしいのだが「美味いものが売れない」と言っているのではない。美味しいものには人の食欲をそそる力があるし、そもそも「美味い」という事実は売れるために必要な要素だ。

この話をケンジに例えてみよう。
ケンジは経験やスキルが高く実績も豊富だ。料理に例えると「美味いもの」で間違いない。しかしその美味いもの(ケンジ)を買う人がいないのだ。
それはなぜなのか。

「美味しさ」の論理。

その答えは実は簡単だ。それは「美味しさとは食べた人にしかわからない」ということだ。つまり「売れる力」のひとつのキーワードは、
「それを欲しいと思わせる力」なのだ。ケンジにはそれが不足していた。食べれば美味しい(能力がある)のに、それを「欲しい」と思わせられなかった。そしてその部分に注力できていなかった。

広告宣伝をし続けてきたというから、もしかしたら「美味しそうだ」とは思われていたかもしれないが、「欲しくなった」という顧客感情を生むことができない結果が「売れない」という事実になっていたのだ。

これを読んでくれているみんなはどうだろう。
顧客が主体的に「これ、欲しい」と思えるようなアプローチができているだろうか。ぜひ自問自答してほしいと思う。


打ち出すのはスキルではない、顧客心理だ。

スキル型フリーランサーの陥りやすい罠だと私が思っているのは、「自分のスキルをアピールしたくなる症候群(シンドローム)」だ。
自分のスキルに顧客はお金を払ってくれるわけだからそうなるのは自然なことだとは思うが、残念ながらそれでは売れない。

ケンジの場合もまったくそのパターンだった。
「自分に任せてくれればこんなことができます」
「自分に任せてくれれば大手よりも安くできます」
「自分にはこんな成功体験や実績があります」

それは間違いないことだし嘘ではない。私はケンジのことを知っているからわかる。ケンジに依頼すれば真面目に真摯に仕事をしてくれるだろう。

しかし残念ながら見込み顧客はケンジのことを知らない。なぜ自分がケンジに依頼しなければならないのかもわかっていないのだ。

私はケンジに「まずは顧客目線で自分のビジネスを考えた方がいいよ」と伝えた。「売り買い」という行為を考えてみようということだ。買い手が買おうとしなければ何も起こらないのだ。

顧客が何に悩んでいるのか。
顧客が何を解決して欲しいと思っているのか。

買い手(顧客)の行動を促すことこそが「売る力」のはじめの一歩なのだ。


選ばれるための「5つの質問」

私は何をしていいか迷っているケンジに
「この5つの質問に自問自答してみてよ」と言ってみた。

・それを買ってくれる人は誰か。
・その人は何を求めているか。
・その人はどこであなたを探すのか。
・その人は「いつ」あなたを探すのか。
・そして「なぜ」あなたを選ぶべきなのか。

この質問を投げかけた時にケンジは少し詰まっていた。すぐに答えられなかった。これは今までに自分に依頼してくれる人の感情に触れてこなかった結果だと思った。

これは私の知るフリーランサーの傾向論だが、「売れているフリーランス」はいつもそれを考えているからスムーズに答えられる。
特に「いつ、あなたを探すのか」とか「どこであなたを探すのか」という質問については、いつも考えていないとスムーズには出てこないものだ。


それからもう8ヶ月くらいが過ぎた。ケンジからは頻繁に状況を知らせるLINEが入るようになった。
今は数件だが長期契約の顧客もできたそうだ。まだまだだけど、それでも見込み客リスト(購入前客)は200名近くなってきてオンラインセミナーも定期的にやっているらしい。

その流れさえできればケンジは大丈夫だと私は思っているから少し安心だ。


スキル型フリーランスの皆さんはこの5つの質問に答えられますか?
もしスムーズに答えられない人がいたら、ぜひ考えてみてほしい。

フリーランスの皆さんが、フリーランサーになったことを誇れるように。
皆さんのビジネスを陰ながら応援しております。




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