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より良い知的生産のためのリベラルアーツ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

今年はビジネスの世界でアートに言及する記事が多かったように思います。オークションなどのセカンダリーマーケットも非常に盛り上がりましたし、株高で余剰資金の増えた方が投資対象として現代アートになだれ込んできたイメージもあります。また、NFTアートが流行の兆しを見せており、同様の動きが観測されています。

先日リベラルアーツについて書いた記事が思ったより読まれていました。

記事ではジョブ型雇用との関連性について指摘をしたのですが、実は本当に言いたかったことにはあまり触れていませんでした。一番最後にちょっとだけ触れていたのですが、もうちょっと掘り下げて書いてみようと思います。

わたしはリベラルアーツのアート(藝術)の中には、ぜひ音楽も入れて欲しいと思っています。一瞬で言語を越えた共通体験を分かち合える音楽。これも不確かな時代をグローバルに生き延びるための素晴らしい文化なのではないでしょうか。

元々のリベラルアーツ、ここでは古代ギリシャ時代の自由民に必須の教育であった「自由七科」を指しますが、この中には「音楽」というのが必須科目として含まれていました。音楽理論は数学的な側面があるという理由もあるでしょうが、楽器演奏や歌唱も必要になることが重要なのだと思います。

アートを鑑賞するためには、前提となる体系化した知識があったほうがより深く理解できます。もちろん感性も重要なのですが、和食屋さんでかっこいい器だなと思ったときに、それが尾形乾山や北大路魯山人の写しであることがわかっていたほうが大将の好みを理解できるみたいな話です(もし運良く本物だったら、ぜひ舐め回すように賞翫してください!)。

アートはビジネスに役立つと言われ、書店には様々な啓発本が並ぶ。記者もいくつか読んではみたものの、「感性を鍛える」「想像力や発想力を養う」……。なんだか抽象的だ。

「具体的なメリットは何か?」。そんな疑問を感じていると、文化庁のワーキンググループで気になる発言をする男性がいた。いわく「ART(アート)は多様な知性で見るもの。感性だけで見るものじゃないんです」。

ビジネスの世界は知的生産であることは多くの方が同意してくださるでしょう。では、知的生産とは何かというと、知覚>思考>実行のプロセスから意味あるアウトプットすることです。世界にある様々な情報を選択して解釈をする(インフォメーションからインテリジェンスへの変換)。そして、適切な課題設定をする。これらの知覚プロセスから様々な分析を行い、課題解決のための打ち手を検討して意思決定をするという思考。最終的にはこれらを実行して改善をしていくという生産行為です。

リベラルアーツの基礎となる3学(文法学・論理学・修辞学)はまさにこの知的生産プロセスそのものです。そして、音楽というのは言語ではない方法でこのプロセスを高速で回すためにうってつけなのです。楽譜を見る、作曲者の意図を分析する、演奏する等の行為を考えればわかります。また、一緒に演奏する場合はより情報処理が複雑になるでしょう。

京都で1688年から12代続く西陣織の老舗「細尾」の当代である細尾真孝さんはその著書『日本の美意識で世界に挑む』で以下のように指摘しています。

これからのビジネスに求められるのは、「余暇」と「労働」という区別をなくし、働くことで自由と創造性を発揮し、それによって新しい価値を生み出していくことではないでしょうか? そして「自由と創造性を発揮するカギは、工芸にある」というのが私の持論です。

知的生産のプロセスの中に自由と創造性を発揮させる。そのためには自身の中に美意識を養うことが大切です。といっても大層なものを求めているわけではありません。「どんな髭剃りにも哲学がある」と言ったのは村上春樹の小説に出てくる人物のセリフですが、平凡にみえることでも日々続けていれば学びがある。努力さえすれば人はどんなことからでも学べるんだというくだりです。

美意識をさらに磨いていくためには、音楽もよいですし、茶道や華道や香道などの「道」がつくものを習うとよいと思います。長年培われた型を身に着け、手を動かし五感を研ぎ澄ます。そのような一連のプロセスが、ふとビジネスにも活きてくると考えています。

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タイトル画像提供:cba / PIXTA(ピクスタ)


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