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就活生が初任給を上げるポイントと、採用企業に考えて欲しい「備え」

前回のnoteでも話題にしましたが、初任給に関する見直しが進んでいます。2019年前後のように一部の高度人材に対して特別な給与を支給するのではなく、良い人材を確保するために全体的にBiz/Dev問わずに見直す流れが産まれています。

産労総合研究所によると下記のような初任給事情となっています。

2024年4月に入った新入社員の大卒初任給は前年より4.01%高い22万6341円だったと発表した。上昇率は1991年(5.2%)以来の高い水準になった。

就職氷河期世代からすると十分高いわけですが、前回も触れたような一部IT企業では年収にして400万円以上を狙える状況になっています。年収700万円以上となると在学中から相応の努力と素養が必要ですが、400万円や500万円以上を狙うにはいくばくかの覚悟と努力で十分達成できる状況となっています。

今回は就活生に対しては初任給を上げるポイントを、企業向けとしては今から考えて欲しい備えについてお話ししていきます。


就活生に意識してほしい「初任給を大幅アップさせるポイント」

初任給を400万円以上に設定する企業が欲しがる人物像としては、下記の5点が代表的なものになります。本選考までに間に合う形で行動しましょう。

  • 当該職種になる覚悟ができている

  • 当該職種に向けて駆け出している

  • 当該職種の素養が感じられる

  • 受け身ではなく能動的な姿勢

  • 高い利他性

例えばITエンジニアの場合、情報系であることは2024年現在は一切問われていませんし、文理すら関係ありません。言ってしまうと1年未満の努力で初任給がジャンプアップできる可能性があるボーナスステージです。就職氷河期世代の情報系修了者としては信じられない状況です。そして上記に至るきっかけになることが多いのが、次にお話しするサマーインターンです。

とにかくサマーインターンに行こう

会社というものの雰囲気を知ったり、受けたい企業を知るためにサマーインターンに行かれる方は多いでしょう。しかしそれ以上に重視してほしいのが、前述した5点に繋がる姿勢を自身の中で育成していく「きっかけづくり」です。

サマーインターンというと、ある程度腕に覚えのある方が参加するイメージを持っている方も居られるでしょう。しかし未経験向けのインターンも多数存在しています。サマーインターンに参加しすることで周囲を見て刺激を受け、本選考期に向けて急成長していく方が毎年数多く見られます。

ITエンジニア志望であれば下記のサイト「魔法のスプレッドシート」を参照しつつ、応募をするところから始めましょう。各社のインターン情報が集まっています。5月中には締め切りを迎える企業もあるため、早いインターン参加の意思決定がポイントです。交通費・宿泊費負担がある企業も多いため、特に都心から遠い方はよくチェックしましょう。

どうしても研究活動などでサマーインターンに参加ができない場合、上記の5点を達成するように意識していけば本選考で十分可能性があります。ウィンターインターンなども視野に入れ、応募先の企業を見ていきましょう。

各社に今から考えて欲しい、初任給を上げた各社がぶつかりやすいアンチパターン

ここからは各企業で考えるべき点です。初任給を上げることを検討する企業は多いのですが、壁も多いです。その代表的なものをお話ししていきます。

初任給をどう設定していくか

多くの日系企業の場合、新卒入社する人を一律で見直すケースが多いようです。

しかしITエンジニアの場合、在学中の過ごし方によってはスキルや視点、チーム開発の姿勢などに差が見られやすく、また、他社との差別化の兼ね合いもあり色をつけていく企業が多数見られます。この際、大いに影響するのがスキルレベルです。前のめりな企業ですと中途と同じスキルアセスメントを通して能力評価をし、中途の給与テーブルを見ながらオファー金額を出すケースがあります。第二新卒や若手採用でも同じ選考ステップになるため、合理的に思えます。

ここで問題になるのが能力評価はできたとしても、行動評価、視座、自社での成果を評価できないということにあります。能力評価を中心に評価し、行動評価については伸びることを期待しながら半年~1年程度見守るという曖昧な意思決定をしている企業もあります。

初任給は高いが、次の昇級ハードルが高い

初任給だけ見直しをした際に直面するのが「初任給は高いものの、次の昇給をするにはリーダー経験が求められるため、数年足踏みをする」という現象です。本人が「何をやっても評価されず、給与に反映されない」と感じやすいため、折角採用した人材が短期離職するリスクが高いです。根本的には全体的な給与テーブルを見直していくことが理想です。

既存社員のやっかみ、エンゲージメント低下、離職率上昇

全体的に給与を見直しても古参社員を中心に発生しやすい問題です。「自分が新人の時は〜」「自分がリーダーの時の給与と同じだ」「私がその給与になったのは⚪︎⚪︎歳だった」などと言う後ろ向きな社員は一定数存在します。経営層からの「なぜ給与を見直すのか」という落とし込みが重要となるでしょう。

「社内で給与の話をしないこと」という緘口令を試みる会社もあります。しかし若い世代は横の方向での透明性が高い傾向にあり、野良Slackや野良discordなどでボーナスをやり取りしているケースも多々見られます。中には口の軽い中間管理職が漏らして転職祭になるケースも見られました。緘口令には限界があります。

堂々と開示できる施策がリスクもなく良いでしょう。

経営層による「新卒を採用して何がしたいのか」という言語化と覚悟

コロナ禍以前の新卒採用では、「どうやって母集団形成するか」「どのようにして自社の訴求をするか」と言った悩みが主流でした。そしてここ数年の初任給見直しの動きに伴い、下記のような悩みが追加されました。

  • 何に基づいて給与を提示するか

  • 既存社員とのバランスをどうするか

  • 社内への説明をどうするか

  • どのようなバリューをいつ頃から発揮することを期待するか

何となく前年踏襲で続けて行くと、初任給などであっさり他社に負けます。近年は内定承諾後時代を入社前の3月にされる方も見られるようになりました。採用コストをかける以上、採用成果の大幅未達はまずいです。何のために新卒を採用するのか。そのためにはどういった人物が必要なのか。そうしたことから言語化し、覚悟を持って予算投下をして行きましょう。

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