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ジョブホップする第二新卒と、その行く末

スカウト媒体、人材紹介からの提案、そしてキャリア相談でここのところ多く見られるのが「社会人経験年数より在籍社数の方が多い」という第二新卒の方々です。

心ない情報商材、人材業界に翻弄されているケースが多く、由々しき問題だと感じています。今回は「ジョブホップする第二新卒」と題してこの問題を整理していきます。五月病で退職を考えている新卒の皆さんにも参考になれば幸いです。

世間的な第二新卒の定義は景気に応じて変化する

厚生労働省としては2010年11月より「3年以内既卒者は新卒枠で応募受付を!!」という打ち出しをしています。

しかし本noteでも度々話題にしますが、実際の転職市場において第二新卒の定義は景気に応じて変化し、枠の拡大や縮小が繰り返されています。

元々の定義は卒業後1-2年程度を指していたのですが、2022年11月までの積極採用下では20代全般(厳しい場合でも27歳程度まで)が第二新卒と定義されていました。しかし現在では再度卒業後1-2年程度に戻っています。一昨年まではハードルが低かった年齢層が、現在ではそうでもないという状況になっています。

エンジニア界隈については現在はスコープが狭まっている時期です。これまで第二新卒という定義に甘えて転職を繰り返すと、いつの間にかスコープ外になります。

心ない第二新卒エージェントとアフィリエイター、情報商材による手引き

良いことのみであったり、虚偽であっても耳目を引き、コンテンツ購入をさせなければならない情報商材屋。

内容が嘘、大袈裟、紛らわしい情報であっても人材紹介会社に新規登録して貰わなければならないアフィリエイター。

流入した人材に対して入社をして貰わないと売上が上がらない人材紹介会社。最終面接前に現職残留を防ぐために退職を促すような企業もあります。

これらのプレイヤーを信じてしまうとジョブホップしていくことになります。Xで「プログラミング初学者が欲しいのは『一流のエンジニアになること』ではなく『時間と場所に縛られず十分に稼げるようになること』」という投稿がありました。残念ながらこれは真理であり、嘘を交えた甘言の方がキャリア序盤の方には響きやすいものです。甘言を元にした情報発信の需要は無くならず、それらを信じてジョブホップする人たちもまた減らないと考えています。

新卒カードを有効利用したルートと第二新卒の給与差

バブル崩壊以降、微増だった初任給ですが、ここに来て増加が見られます。

産労総合研究所(東京・千代田)の調査によると、1995〜2022年度の大卒初任給の前年度比増加率は1%未満に落ち込み、ほぼ横ばいの時期が長く続いた。ようやく23年度に2.84%となり、30年ぶりに2%超の増額となった。

AIブームと外資系企業への人材流出問題により、高度なスキルレベルを持つ学生に対して1,000万円以上提示するようになった2019年。某社に話を聞くことができましたが、「新卒で突き抜けた金額で働いている人物は居るのか?」という問いに対し「どこかに居ると聞いているが、個人が特定されないようになっている」とのことでした。

この動きに対し、(10年以上前からDeNAなどで行われていた採用手法ですが、)ベンチャー企業などを中心に「スキルアセスメントをベースとした個人に合わせた柔軟な初任給定時」が拡がっていきました。

2021年以降動き始めた新卒給与見直しでは、特定のハイレベルな人材に限定したものではなく、全体的に見直しがなされるようになったことが特徴です。企業側の動機としては少子化を見据えて「優秀な人材を囲い込みたい」という思惑もありますが、シンプルに「物価高もあり、これまでの初任給であれば暮らせないのではないか?」ということで見直されているケースが見られます。合わせて既存社員の年収見直しも起きています。

今回論点にしたいこととしては、こうした新卒給与の見直しに対し、第二新卒は対象外とされることが多いという点です。新卒カードを駆使してこうした企業群に入れば初任給が500万円以上から始められる可能性が高くなってきたのに対し、一度第二新卒になってしまうと未経験であれば230万円~、何かしらの評価できるスキルがあり条件の良い会社から内定が貰えれば400万円が狙えるかも知れない、という相場観です。安易に退職し、第二新卒に行くことは年収の観点からは(企業にも依りますが)お勧めしにくいです。

未経験層転職市場が荒れすぎて受け入れ・育成を諦めた優良企業

フリーランスになることを目的にした未経験者層が市場に溢れ、短期離職を繰り返していきました。「未経験を育成したい」という前向きなマインドのある企業はあったのですが、育成コストが出て行くばかりで人が残らないため、諦めた企業があります。彼らが残ってくれていれば、今現在でも受け入れ可能企業がそれなりにあったように思われます。代わりに残ったのは次に話すような訳あり企業となり、持続可能な働き方とは言い難いキャリアに繋がっていくリスクが高いです。

ジョブホッパーの行末

第二新卒での転職が決まらなくなったらどうなるでしょうか。多くの場合、就職氷河期世代と同じく、非正規に誘導されていきます。近年増加傾向にあったのが、下記のいずれか、もしくは複数を満たす志の低いSES企業です。

  • 最低賃金に近い待遇

  • 入場先が決まるまで契約がなされない

  • エンジニアとして入社したもののコールセンターや総務、家電量販店に回される

  • 案件が切れると解雇される

志の低いSES企業については更に厳しい傾向があります。ここのところ好景気なのは日系大企業が中心です。日系大企業の多くはSIerに投げるため、SIerや、彼らと取引をしているSES企業は活況です。日系大手企業が実績の乏しいSES企業に声をかけるケースは少ないです。

また、全体的に不景気なスタートアップなどを主要顧客にしているようなSES企業は苦労している傾向にあり、上記のような事象に見舞われる方が散見されます。

2023年の学情の発表では、転職活動にあたっての企業選びの観点について触れられていました。私が気になったのは「企業文化・社風」が社会人経験3年未満(22.2%)と3年以上(8.2%)では14%差があるという点です。ジョブホップをするに従い、諦めの感情に繋がっていったのではないかと捉えています。

8割超の20代が、「就職活動と転職活動では、企業を選ぶ視点が変化した」と回答

現職に疑問を持った際の相談先は人材紹介会社や情報商材屋ではない

  • 「一歩踏み出す勇気」

  • 「好きを仕事に」

  • 「早期退職で未経験から憧れの職業へ」

  • 「新卒と違って社会人経験があるのが大きなメリットで、その経験を企業にアピールすることができる」

第二新卒の人材紹介会社がよく使う背中を押すための売り文句です。現職に違和感を感じた際、こうした声に耳を傾けると早期退職することになります。

もちろん早期に辞めた方が良い企業はあります。ハラスメントの巣窟である企業や、反社会的な企業は早々に辞めるのが賢明です(入社前にしっかり選びましょうという話ですが)。ただ一般的な企業であればこれまでお話ししてきたように自社で何とかする工夫をした方が良いです。

人材紹介会社は成果報酬型のサービスのため、自社経由で入社してもらわねば売り上げが立ちません。相談に行ったからには何とかして転職してもらおうとするのが彼らの仕事であり、自然な行動です。しかし彼らにとっても何度か短期でジョブホップされてしまうと紹介が難しくなります。言ってしまうと「味がしなくなった頃合い」になってようやく「現職に留まりましょう」となったり、非正規や訳ありSES企業に誘導されます。まずは相談するべきは上長であり、自社の人事です。

もう一つ注意が必要なのが、「やりたい仕事ではなかった」ということを理由に転職を考える流れです。

ジョブ型採用のように対象者に特定のスキルがあり、企業側に依頼したいジョブがある場合はマッチングが取れます。しかし多くの新卒一括採用の場合、新卒はゼロからカウントされます。加えて自身にビジネスに直結するような主張するだけのスキルがないと企業側も扱いに苦慮します。「自身は何屋なのか?」と言える状況になるまでは自社で色々と経験してみることをお勧めします。

また、何をもってしてやりたい仕事なのか?という論点もあります。「天職を探そう」などの言葉もありますが、油断するとこれらの言葉を発信している人たちの売上になります。何度も転職してやりたい仕事を選ぶより、心底やりたくない仕事を除外した方が無駄に転職しなくて良いです。

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久松剛/IT百物語の蒐集家
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