TikTokのEC機能はいつ日本に導入されるのか。アメリカでの例から学ぶこと、中国での事件から考察すること
TikTokは日本でも若者世代を中心に毎日欠かさず見るサービスになってきているでしょうか。ただ、このまえ久々に日本のTikTokアプリを友人と見ていたのですが、中国のTikTok(抖音)では備わっている機能が相変わらず全然ないですね、特にEC機能。
かなり前から、中国のTikTok(Douyin)はショート動画を見るためだけのアプリではありません。ECの買い物などでも使うスーパーアプリになっています。
上記のnoteでも紹介したように、ショート動画アプリだったはずが、今ではタオバオやJDなど既存の買い物プラットフォームの数字を信じられない速度で追いかけていて、今年の11月11日セール期間での数字がどんなものになるのか恐ろしい。
今はEC機能がないですが、今後日本でもきっと実装されるんだと思いますので、日本の皆さんも期待していて欲しいです。タイ、ベトナム、マレーシアなどの東南アジアで実装されていることはご存知の方もいると思いますが、実は2023年5月からTikTokは北米でもEコマース事業を行っていて、様々な分析があります。この分析には、tiktokに限らず、日本でのEC事業のヒントがあるかもしれません。
■北米で苦戦するTikTokのEコマース。ライバルが強すぎ、TikTokの強みを活かすことも難しい
2023年から始まった北米でのTikTokのEコマース事業。2024年の上半期で、アメリカでの平均日次売上(GMV)は2000万ドルを超え、昨年末から倍増しました。これでも十分頑張ってると思いますが、TikTokが掲げていた年平均4500万ドルという目標にはまだ大きな差があるようです。
TikTokの北米でのEコマース事業はかなり慎重に行われてきました。いきなりアメリカで始めたわけではなく、2021年に欧州、なかでもイギリスに注力して開始。イギリス人の消費習慣や消費力がアメリカに近く、将来のアメリカ市場開拓のテストになると報道されていました。
また、2023年にTikTokのEコマースは ブラジル、アイルランド、スペインなどへの進出を一時停止。これは、2023年の年末にアメリカで正式に立ち上げるためにリソースを集中したと言われています。それほど準備を重ねて北米へ進出したのです。
ただ、日本の皆さんもご存知のように、アメリカはEコマースにとって最も難しい市場。競争は激しく、Amazonが絶大なシェアを誇り、ライブ動画から商品を買う習慣もない。日本で大人気のメルカリですら惨敗していたことも話題になりましたね。
さらに、進出している中国企業のSheinとTemuが強すぎることも難易度を高めている原因。特にTemuはアメリカに進出してから1年も経たないうちに2番目に人気のあるEコマースアプリとなり、約15%のアメリカ人がTemuで購入した経験があるという化け物サービスぶり。
■成功したTemuを参考にすると、逆にTikTokの強みとの共存が難しくなる
以前、「temuがなぜ北米でも成功できたのか?」について詳しく書きましたが、その理由の一つは「全托管业务」という仕組み。プラットフォームが国際物流を始め、その後のカスタマーサービスなどの業務のほとんどを引き受けてくれるのです。
と、文字で書けば簡単ですが、これを実現しているのがどれほどすごいことか。TikTokもTemuを模倣し「全托管业务」を行っているのですが、全くレベルと規模が違うのが現状。
さらに、この仕組みを入れると海外販売のハードルが下がるので、多くの商家が参入することができます。つまり、アメリカで配信したり物販している人たちが激しい競争に巻き込まれることになります。
配信とセットで行うことがTikTokEコマースの強みなので、当然北米在住の配信者が増えることが望ましく、TikTokはある程度北米配信者を優遇してきたとも報道されています。一方で「全托管业务」は中国からの商家を多く参入させることになるので、戦略が噛み合わない。この辺りも苦戦の原因と目されています。
■すでに成長して活発な中国市場では思わぬ展開
TikTokのEコマースが欧米、北米でなかなかうまく行かない一方で、中国版のTikTokの抖音は発展しすぎていることもあり、驚くべきことが起こっています。
膨大なユーザー数を持つプラットフォームでのEC事業は、成約金額も半端ないのですが、それ故に事件での規模も巨大なものが多数。ちょっと前の中秋節で、抖音のTOPクラスのEC販売部員が広州のメーカーが生産した月餅を香港老舗の看板商品として高価で売り出し、それがバレて大炎上(広州と香港はそこそこ近いですが違いますので)。
結果としては不実の宣伝などの理由で「行政処罰法」や「不正競争防止法」の違反で、違法所得及び罰金合計6894.91万元の行政処罰が下されました。約15億円です。
これ以外にも、食品の虚偽広告や医薬品の詐欺なども起きていて、いずれも規模が大きいものになっています。このあたり、今後政府による規制なども入ってくるかもしれませんので、注目しておきます。
また、日本でも広告詐欺などが度々問題になってると思います。これほどECサービスが発展してる中国でももちろん、最終的には自身のことは自分で守るしかありませんので、みなさんもお気をつけください!
(参考資料)