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日本のDX三大疾病「カルチャー病・ROI病・事例病」

こんにちは!グローバルでDXの調査・支援をしている柿崎です!
前回は、「日本と海外のDXのリーダーの違い」について書きました。今回は、DXのそもそも論について書きます。
念のためですが、日本のDXが総じて遅れている、と言うつもりはありません。もちろん進んでいる企業や行政もあります。今回も私が実際に日本と海外のDXやテック系のイベントに参加したり、企業に訪問して体験したことを書きます。

・カルチャー病

日本のDXやテック系のイベントに参加すると、リーダーの方々から、
「うちの会社はカルチャーが古いからDXが難しい。」
「デジタル企業のようなフラットなカルチャーなんてうちの会社では無理。」
と、カルチャーに関する議論で盛り上がります。
不毛な議論からは何も生まれない、と頭では分かっているのに、社内での日頃の鬱憤を晴らせるからでしょうか。

・ROI病

また、日本のイベントではこんな議論で盛り上がります。
「うちのトップはITリテラシーが低いからDXのROI(投資対効果)の判断ができない。」
「うちの会社ではDXのROIの正当性が求められて一向に進まない。」
そして、DXが進まない理由として、「ROIがやり玉にあがります。

・事例病

私の肩書の一つに「CDO Club Japan 事務局マネージャー」があります。よく企業の方々から「DXについて教えてほしい」ということでお呼びいただくことがあります。
(CDO Clubについては、前回記事「誰がDXをリードするか。海外のDXのリーダーに女性が多い理由。 」をご参照ください。)
企業を訪問すると、
「他社はどのようにDXしていますか?」
「他社がDXで成功している記事を見ました。詳細を知っていますか?」
と、ひらすら「事例」を求める人たちがいます。
また、私はイベントでよくDXに関する講演をしています。アンケート結果を見ると、「もっと事例を聞きたかった」というコメントをよく見ます。DXで事例収集には意味がない、と私が講演中に伝えても、とにかく事例を聞きたがります。

・海外のリーダーから聞いたDXとは・・・

私は海外のDXのリーダーが集まるイベントにも参加しています。日本とは対照的に、カルチャーやROIに関する議論がほとんどなく、「もっと事例を聞かせろ!」という声があがることもありません。
このことについて、実際に海外で複数のDXのリーダーに質問しました。
「日本ではカルチャーやROIに関する議論で盛り上がります。またすぐに事例を求める人たちがいます。なぜ海外では状況が異なるのでしょうか?」
とあるアメリカのDXのリーダーの回答が忘れられません。
DXは、最初に組織のミッション・ビジョンを見直すはず。ミッション・ビジョンを再考しているのに、そのような議論になるのは変ですね・・・

・要するにDXとは?

DXとは、今の時代(今がデジタル時代ということですね)・顧客に対してふさわしくない組織が、過去の組織と決別し、今の時代・顧客にふさわしい組織に生まれ変わることです。過去のミッション・ビジョンを達成していようがいまいが、古くなったミッション・ビジョンをそのままにしてDXに取り組んでも、真のDXとは言えません。DXがバズワードになり、せっかく組織のミッション・ビジョンを再考する機会が到来しているにもかかわらず、それを怠っているということです。

日本でもDXが進んでいる組織は、ミッション・ビジョンを再考した後に、カルチャーを含む組織の在り方、ROIを含む評価について検討し、他社から学びます。
私が所属している組織の一つであるSansanはデジタル企業です。デジタル企業ですのでDXは必要ありません。ただ、創業以来、何度か全社員による議論を経てミッション・ビジョンを変更しています。デジタル企業として有名なGAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoft)、BATH(Baidu・Alibaba・Tencent・Huawei)が、ミッション・ビジョンを大切にしているという話をよく聞きます。日本含めデジタル企業のほうがミッション・ビジョンを大切にしている傾向があるように思います。

「DX」「カルチャー」「ROI」「事例」と叫ぶ人たちがいる組織は、まずミッション・ビジョンの再考に着手する必要がありそうです。そして、DXのリーダーには、ミッション・ビジョンを描く能力が求められることが自ずと分かることでしょう。「そもそも何をしたいのか?」「どのような市場を創出したいのか?」「顧客や社会に対して何を提供したいのか?」などの問いに答える必要があります。こればかりは、他社からコピーできず、またコンサルやITベンダーなどに頼ることができず、自分達で考えるしかありません。

・念のため・・・

「カルチャー・ROI・事例」が一律に悪いとは言いません。例えば、既存の業務プロセスの生産性を向上するため、ITツールを導入する場合は事例を収集すべきでしょう。また、ROIも必要になるでしょう。ただ、導入するITツールがクラウドサービスであれば、ROIを議論するより、まず導入してみて効果がなければ解約するほうが早いと思います。クラウドツールのメリットは、導入しやすく、解約しやすいことですので。

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