答えは必ず社内にある!V字回復の根幹は「人」との対話 倒れない会社〜V字回復企業にみる強さ
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答えは必ず社内にある!V字回復の根幹は「人」との対話 倒れない会社〜V字回復企業にみる強さ

日経COMEMO公式

2021年11月30日(火)に開催したNIKKEI LIVE「倒れない会社〜V字回復企業にみる強さ」では、新型コロナを始めとした外部環境の変化や戦略の失敗で窮地に立たされた企業経営の立て直しにおいて、復活のカギを握るもの、V字回復に必要な条件は何か、様々なケーススタディを通して議論しました。イベント内容の一部をご紹介します。

神戸大学大学院経営学研究科修了後、みさき投資を経て現在はウェブエンジニアとしても活躍中の社史研究家の杉浦泰さん、アトラス、ボディショップ、スターバックスコーヒーの3社のV字回復を達成し安定成長へと導いたプロ経営者、リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄さんをゲストにお招きしてお話を伺いました。聞き手は、日本経済新聞社DXエディター杜師康佑が務めました。

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ー杜師エディター
V字回復のパターンにはどのようなものがあるのでしょうか。

ー杉浦さん
私が考えるV字回復に必要な3つの要点を紹介すると、「過去との決別・時代の追い風・思い切った投資」だと思います。V字回復を考える上で一番大事なことは、そもそも「なぜダメになったのか?」もしくは「なぜ厳しい状況に陥ったのか?」を現場がしっかり認識することです。それがないと次に進めません。

経営危機に陥ったり低迷したりする理由は様々あると思います。例えば、台風や震災などの災害、昨今のコロナ事情のような不可抗力が経営危機の要因になることがあります。さらに、思い切った投資が失敗に終わるような戦略ミス、組織が大企業病と呼ばれる状態になって思う通りに動かなくなる機能不全などの企業の内部要因によるものもありますし、競合他社により業界ルールがガラッと変わってしまうような外部要因への対処ができずに経営危機に陥ってしまうケースもあると思います。

そして、市場崩壊や顧客喪失などが要因になることもありえます。時代が変わり世の中がいつの間にか変わってしまい、市場がなくなる、顧客がいなくなるというパターンです。身近なところでは商店街などです。40年くらい前は活気に満ちていましたが、現在はそのほとんどがシャッター街で、ここでビジネスをすることは厳しい状況です。最近の企業事例で言えば、フィルムカメラがデジタルカメラに変わったことで、富士フイルムはうまく乗り切りましたが、フィルムに固執したKodakは厳しい状況に陥りました。

ー杜師エディター
ここで参加者の皆さんに投票を募りたいと思います。「事業を運営するにあたって不安に感じていることはなんですか?」この結果について杉浦さんはいかがでしょうか。

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ー杉浦さん
コロナで変わったことがいろいろあると思いますが、ここで気をつけなければいけないのが、この変化が不可逆的なものなのかどうかです。要するに、一度変化したらもう元に戻らないのか、それともまた元に戻るのか、どちらなのかをしっかり峻別する必要があると思います。

例えばオフィスに出社しないと様々なデジタルツールを使うことになるなど、変化が起こります。コロナの後も変えていくべき必要があるものなのかどうか、ここに関しては一人一人が洞察して区切りをつけることが大事だと思います。

ー杜師エディター
コロナがこの先どうなるのか、まだまだわからない状況ですが、業績が落ち込んでいる企業が多数あると思います。環境が思わしくないところでどのように成長軌道に乗せていけばいいのか、V字回復に向けた具体的な課題を教えてもらえますか。

ー杉浦さん
今後の成長を考える上では、「ソフトウェアを大事にする」という1点に尽きると私は思っています。現に、コロナ後業績が好調な会社は、ほぼ例外なくソフトウェアを使っている会社です。Netflixもそうですし、ECサイトのShopify、メルカリなども株価を上げています。ですから今後、ソフトウェアが波に乗れるかどうかのキーワードになると思います。

ただし、この波に乗るのは相当難しいことだとも思っています。というのも、デジタルについてわからない人がこの分野に入ると、必ず火傷をするからです。

一般的にDXと聞くと、デジタル化すれば非常に便利になるのだろうと想像すると思いますが、それは表層的な部分でしかありません。デジタル化が進行すると、内部のシステムの複雑性は上がります。便利な機能をいくつも追加していくことは、それだけコードを多く書かなければならないということです。この複雑さをコントロールできる人でなければ、ソフトウェアの成長はかなり難しいということです。

そしてもう1つ、デジタルの勘所に詳しい人材を探すことも難しくなってきていますし、こういうものに詳しい人には若い人が多いので、大事な仕事を若い人に任せられるかどうかもポイントになると思います。このような価値観に染まっていないと、ソフトウェアを伸ばそうと思っても本流には入っていけないと思います。

ー杜師エディター
今、非常に勢いがありGAFAと並び称されるNetflixですが、Netflixのすごさはどこにあるのでしょうか。

ー杉浦さん
Netflixは、歴史を振り返ると、最初は郵便配達でDVDを取り扱っていたような会社なんです。それがある時からエンジニアを大量に雇い始めて、いわゆるレコメンド機能を充実させていきます。レコメンド機能を作ることは、実は非常に大変で、この最難関の部分をいち早く突破したところがすごいところだと思います。

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ー杜師エディター
岩田さんはデジタル化の部分も含めて、今の杉浦さんの話についてはいかがでしょうか。

ー岩田さん
杉浦さんはソフトウェアを作っているとおっしゃいましたが、ソフトウェアを作っているのは人ですよね。つまり、「人」なのだと思います。

V字回復のVの下の部分にいるとき、会社の業績が一番悪いとき、一番やってはいけないことが、一律の早期退職です。これをやると、転職できて優秀な人が辞めていくわけです。もちろん人の入れ替えは必要だと思いますが、間違っても希望退職を募ることはやってはダメだと思います。

「人」が次のV字回復の牽引になるのですから、まずは優秀な人材の確保が最低限の話です。あとは、自分に勘所があるところは口を出せばいいけれども、ないなら任せることです。そのためにも、任せる相手を選ばなければいけません。

基本的には、特に社内のコアコンピタンスにかかる部分は内部から人を入れていくことが大事ですが、どうしても社内にスキルやノウハウがないことは、外部のアライアンスを利用すればいいと思います。アライアンスは下請けではなくあくまでもパートナーという形で、たとえ相手の会社が自分の会社の100分の1の規模だったとしても、リスペクトをもって一緒にやる、教えてもらう、という気持ちで自分たちに足りないものを補っていくことだと思います。そこの使い分けをうまくやることです。

ー杜師エディター
岩田さんは、「外部からきた人」という立場で、従業員とのコミュニケーションが課題になることもあったと思いますが。

ー岩田さん
僕自身、コミュニケーションがすごく大事だと思っていたので、朝礼をしっかりやっていました。今はzoomなどを使えばできると思いますが、当時は店舗の人たちは朝礼には出られなかったので、マネジメントレター、つまり「社長からのお手紙」をずっと出し続けていました。ボディショップでは200通以上、スターバックスでも月に2回くらいは出していました。

社長の思いや会社がどの方向に向かっているのか、自分たちはどこに立っているのかなど、「もしも自分がお店のスタッフだったら絶対に知りたいと思うこと」を書いていました。自分が言いたいことも言いましたが、それ以上に、お店の人たちが何を聞きたいかを常に自分に問いかけて、それに答えるように内容を考えていました。

想定読者はお店の人たちなので、言葉の使い方も相手に合わせるようにしていました。例えば、「キャッシュフロー」ではなく「お金の流れ」でいいわけですよね。どうしても、経営レベルで話す内容は難しい言葉も多いので、きちんと相手のわかるような言葉を使ってメッセージを届けようとしていました。それがすごく良かったのではないかと思います。

ー杉浦さん
改革をするとなると、当然それまでのやり方と変わるわけですから現場からの反対もあったと思いますが、それはどのように説得したんですか。

ー岩田さん
どの会社でも最初にやったことは、フォーカスインタビューです。課長さんや部長さんクラスの30〜40人くらいだったと思いますが、一対一でその人たちと面談しました。まずは自分の自己紹介をして、相手が何を考えているのか、どんな人たちなのか、いろいろ聞いていきます。30〜40人くらい話を聞くと、その会社の問題点などがいろいろとわかってきます。

それからもう1つは人の評価です。これは外資系でも日本企業でもそうですが、役職と能力が合っていない場合があります。若くてもよく考えている人もいれば、重要な職位でも何も考えていない人もいます。人事権を行使して、徐々にですが、自分と考えが同じでかつ能力のある人はできるだけ中央に、つまり経営企画室や社長室などの重要なポストにきてもらい、そうじゃない人は少し横にいってもらうということをしました。

戦略仮説を3ヶ月で作って、次の3ヶ月で手を打って、6ヶ月目くらいから実績を上げるということでやりましたが、これは偶然だと思っていますが、ボディショップもスターバックスもちょうど6ヶ月目以降、売上げが伸びていきました。

僕がよく言っていたのは、岩田松雄という社長に忠誠を尽くす必要はまったくないけれども、会社のミッションには忠誠を尽くしてほしいということです。場合によっては、僕自身がそのミッションに合わないことを言ったりやったりしていれば、それは言ってほしい、と。社長の上にあるものがミッションだと思っています。

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ー杜師エディター
大きな組織では、メッセンジャーのようになってしまっている管理職も少なくない気がしますが。

ー岩田さん
ネットが発達していますから、そういう人はもういらないですよね。直接、社長から全員に指示ができますから。

僕が一番嫌いな上司は、「上が言ってるからやってくれ」「俺もおかしいと思うけどやってくれ」と言う人です。それなら、中間管理職の意味はまったくありません。もし自分が納得していないのなら、上に食ってかかって、それはおかしいと言うべきです。そこで戦って自分が納得したなら、実は自分も最初はそう思ったけどこういう理由でこう思ったから、ぜひこれをやってほしいと説明できるようにしておかなければダメです。逆に、それができない上司はもういらないと思います。

ー杜師エディター
最後にお2人からひと言ずついただきたいと思います。

ー杉浦さん
私は、10年後を見据えて今を決めることが大事だと思っています。というのも、10年に1度は必ず不況がくるからです。今はコロナですが、おそらく10年後にも何かがくると思います。その「何か」がきたときにジタバタしても遅いので、今から対策を打つことだと思います。

そのような視野で動いていくことが非常に大事で、しかしこれは、言うのは簡単でも実際にやるのは難しいことだと思っています。だからこそ、やれればかなりの付加価値になると思います。

ー岩田さん
僕は、コロナは決して特殊なことではなく、本来10年で起こることが2年で起こっただけの話だと思っています。いずれ、このデジタル化の流れはきていたと思いますし、今のネットやオンラインの状況は10年後の姿で、それが単に早まっただけだと思います。

変わるものと変わらないものがありますが、それらを見据えて次の手を打つことです。下を向くのではなく上を向いて、この難局を乗り切って、もし余裕があるなら次の手を考えてもらえばと思います。

そしてその根幹となるのは、やっぱり「人」だと思います。ほとんどの場合、答えは社内にあります。よくオーナー系の会社だと、外部からコンサルタントを連れてきたり、誰か物知りの人がいるとすぐに聞いたりしてしまいますが、自分自らがしっかり勉強して、かつ答えは会社の中にあるという信念で、社員としっかり対話をしていただければいいと思います。

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杉浦泰さん
社史研究家

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1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、現在は社史研究家兼webエンジニアとして活動。



岩田松雄さん
リーダーシップコンサルティング代表

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スターバックスコーヒージャパンCEO(最高経営責任者)を経てリーダーシップコンサルティングを起業。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車に入社し業務を経験。カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソンマネジメントスクールでMBAを取得。ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラなどを経て、コカ・コーラビバレッジサービス常務執行役員、ゲーム会社アトラス社長、タカラ取締役常務執行役員、イオンフォレスト(THE BODY SHOP JAPAN)社長などを歴任。その後、スターバックスコーヒージャパンでCEOを務めた。


杜師康佑さん
日本経済新聞社 DXエディター

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2010年入社、新潟支局を経て自動車や化学、エレクトロニクス分野を取材。2019年から大阪本社でエネルギーや機械、スタートアップなどを担当。日本の組織に合ったデジタルトランスフォーメーションのあり方を模索。


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