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実践者に聞きました!多拠点生活で働き方はよくなる?(蓑口恵美さん×佐別当隆志さん)〜「日経COMEMO」×「日本経済新聞」連動企画〜

この記事は11月24日(火)に開催した、オンラインイベント「働き方innovation #06 ずっと都会で働きますか〜多拠点生活の可能性とは〜」の内容をもとに作成しています。

コロナ禍で急速に進んだ在宅勤務やテレワーク。それに伴い、私たちは働く場所や住む場所についても、幅広い選択肢をもてるようになりました。生活の拠点を複数もつことは、働き方や暮らしにどのような影響を与えるのでしょうか?

ガイアックスの社員として働きながら地元富山県でもフリーランスとして働く、2拠点生活の実践者蓑口恵美さんと、月4万円から日本各地の家に住み放題できるサービスを展開する株式会社アドレス代表取締役の佐別当隆志さんにお話を伺いました。聞き手は、働き方について30年以上取材を続ける日経の石塚編集委員です。


■はじめに

ー石塚編集委員
本日は「多拠点生活の可能性」について、実践者である蓑口恵美さんと、事業者としての視点から佐別当隆志さんにご参加いただき、お話をしていきたいと思います。同じ話題を、日本経済新聞朝刊に隔週火曜日で掲載している「働き方innovation」面でも取り上げています。

まずは、2拠点生活の実践者である蓑口さんに、地方と都市での生活についてお伺いしたいと思います。

蓑口さん
現在私は、都心で週4日正社員として働きながら、故郷である富山県で週1日働くという、2拠点生活をしています。この生活を始めてから、3年目になります。

佐別当さん
アドレスはちょうど創業2周年になるところで、月額4万円の定額制で住み放題のサービスもまだ1年ちょっとという新しいサービスです。今月で全国の物件数が100件になるところですが、コロナ以前から、特に若い人たちの間では「都会の仕事もやりながら地方で暮らしたい」という需要が増えてきていました。それがコロナ以降、あらゆる世代の人が多拠点生活を実践しやすくなって、ますます需要が増えてきているように思います。

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ー石塚編集委員
先に(イベント参加者の)皆さんの意識調査の結果から見ていきたいと思うのですが、この結果をご覧になってどう思われますか?

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蓑口さん
実践者が意外に多いことに驚いていますが、やはり、やりたいと思っても「複業規定」のところで引っかかっている人が多いのだなと思います。私も多拠点生活をするにあたって、複業規定という言葉をいつもセットで考えていたようなところがありました。ただ、複業することを前提にしなくても、多拠点生活は可能なのではないかと思います。

佐別当さん
前向きな方が多いことに驚きですね。「関心はあるけど」「いつかはやってみたいけど」という人はそれなりにいると思っていましたが、前向きに考えている人が半数近くいるというのは意外でした。

■コロナの影響で関心が高まる「多拠点生活」

ー石塚編集委員
現在はコロナの影響でなかなか難しいでしょうが、「多拠点生活」というのは日本と海外でもやろうと思えば可能ですよね。蓑口さんは今後、海外も含めた3拠点生活を考えているということですが?

蓑口さん
私は365日のうちの10%(36日)は、自分の故郷に使う時間として確保したいという思いがあります。今後、仕事や子育ての状況を見ながら、同じように1年のうち10%くらいをシドニーで過ごしたいと妄想しているところです。換気というか、外から日本を見てみたいと思っています。

イベント参加者からの質問:どのように環境整備をしたら2拠点生活ができるのか、成功させるためのポイントが知りたいです。

ー石塚編集委員
蓑口さんには現在の2拠点生活を始めたきっかけを、佐別当さんには現在のサービスを始めることになったきっかけを、それぞれお伺いしたいのですが。

蓑口さん
私は富山県の小さな農家で育ちましたので、子供の頃から稲刈りのシーズンなどは必ず家の手伝いをしていました。それは社会人になってからもずっと変わらず、気づけば毎年36日以上は実家で過ごしていました。

家を手伝うだけではなく、違う形で故郷の手助けをできないか? そう考えるようになって、富山で複業(お仕事)としてできることを探し始めたことが、現在の生活を始めるきっかけでした。

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佐別当さん
僕ももともと多拠点生活をしたいという思いがあって、東京でシェアハウスの運営を始めたことがきっかけでした。犬も猫もいてシェアメイトもいるという、都会ではなかなか味わえないような賑やかな生活をしています。

住宅ローンの負担や子育ての負担を自分たちだけで負わなくていい環境が、とてもいいなと感じました。そこで、最初はシェアハウスと民泊併設型の家を作りました。

そこから、次のライフスタイルを考えたとき、「東京+地方」のシェア生活をしたいと思いました。でも、いきなり地方に住み始めても「友達がいない」「家の管理をしなければならない」「使っていないときはコストになる」など、いざ実践しようとすると課題が多く、インターネットを使えばどこでも仕事ができる時代なのに、地域との関係性がないと個人で2拠点生活をやるのはハードルが高いと感じました。

そういう人たちのためのサービスがあれば、もっとたくさんの人が多拠点生活を実現できるのではないかと思い、サービスを提供する側に回ることになりました。

ー石塚編集委員
現在、佐別当さんのサービスを利用している人というのは、どのような人たちなのでしょうか?

佐別当さん
これは、コロナ前とコロナ後で傾向が変わりました。コロナ前は、自営業や経営者の方、フリーランスの方など、「仕事をどこにでももっていくことができて、自分で意思決定のできる人」が一番多い利用者でした。これがコロナ後になって、IT系の会社員の方が新規入会の45%を超えて、会社員比率が一番高い状況になっています。

都心で一人でこもってのテレワークがつらいのではないでしょうか。東京に近い場所で多拠点生活をして、ときどき自宅に戻るという生活をしている人が増えていると思います。20〜40代の首都圏近郊在住の方が、7割を超えている状況です。

ー石塚編集委員
拠点を変えることで、その人の仕事に何かプラスになることがあるのでしょうか?

佐別当さん
利用者の方からよくいただく声としては、年齢も職業も価値観も違う人たちと、毎日出会いがあるので、いろいろな考え方に触れられたり、こんな働き方があるのかと気付けたり、刺激を得られるということは言われます。

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■「多拠点生活」の実現と働き方の選択

イベント参加者からの質問:2拠点生活をすると住居費がかかるので、金銭面の負担が大きいのではないでしょうか?

ー石塚編集委員
リモートワークが可能である働き方ができて、さらに2拠点生活でかかるお金を稼ぐ、それをどのようにして実現すればいいか、という悩みがあってそのハードルをなかなか超えられない方も多いと思います。

蓑口さん
私は23〜28歳までの5年間は、リモートワークはできない仕事環境で働いていました。将来的に故郷に貢献するような仕事がしたいと思っていましたが、今の会社ではその選択肢は選べないと思いました。

どうすれば実現できるか考えながらいろいろと調べていくと、情報通信系の会社にはそれができる環境・しやすい環境がありそうだとわかって、キャリアチェンジに向けて動き出しました。

2拠点目をもつということは、そこに時間と予算を投下するということともイコールになると思います。自分の人生の中で、時間と予算を調整しなければなりません。私の場合で言うと、土日に映画を観に行ったりふらっとショッピングに出かけたりする時間がなくなったり、余計なものを買わなくなったり、その分を故郷に行くために使っています。

ー石塚編集委員
2拠点生活のための予算というのは、具体的にどのくらいかかるものでしょう?

蓑口さん
私の場合は、1年間の予算は36万円です。主に交通費ですが、月3万円です。佐別当さんが提供しているサービスも月4万円ですから、2拠点目をもつ予算はだいたいそれくらいを考えればいいのではないでしょうか。

佐別当さん
僕らのサービスの利用者はこれまで、「都会で暮らしながら+4万円を払える」という収入に余裕のある方が中心でした。それがコロナ以降、「実家+2拠点目」という形で利用する、大学生や新卒の社会人などの20代が非常に増えています。

普通だったら東京に引っ越して大学生活や新社会人生活をするところ、そのまま実家に残って、学校や会社とすぐに行き来できるような場所にときどき滞在できる2拠点目があればいい、という人も増えているのだと思います。

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ー石塚編集委員
2拠点と言っても、自由に場所を選べるわけではなく、いざというときは本業のある場所に駆けつけられる距離の場所ということになりますよね。

佐別当さん
最初のアンケートにもありましたが、会社員の場合は就業規則などで、自宅でのテレワークはOKになっているものの、自宅以外の場所でのテレワークは禁止されているケースがほとんどのようです。そのため、何かあればすぐに出社できたり、週末だけ移動して滞在できたりする、比較的近い場所での2拠点生活を選ぶ人が多いと思います。

一方で、自分で仕事をする場所を選べる人たち、経営者やフリーランス、自由なワークスタイルを推奨しているフルリモートOKの企業の人たちは、どこでも仕事ができる状況なので、かなり自由度高く移動して多拠点生活をしていると思います。

■日経COMEMOで開催された同テーマの【投稿募集企画】に寄せられた意見

ー石塚編集委員
先日まで日経COMEMOで開催されていた投稿募集企画「ずっと都会で働きますか?」に寄せられた投稿の中から、蓑口さんには気になる投稿を2本選んでいただきました。蓑口さんご本人による投稿もありますので、ぜひこちらも合わせてご覧ください。

蓑口さんは投稿の中に「変化する人こそ自分らしい生き方ができる時代」と書いていますが、そうは言っても2拠点・多拠点生活の実現はなかなか難しそうに思えます。どうすればお2人のように実現することができるのでしょうか?

蓑口さん
私も数年前には2拠点生活を実現できていませんでした。そのときの自分に言えることがあるとしたら、一番大切なことは「あなたの2拠点生活は具体的にどういうものか?」ということを、もう少ししっかりデザインすることですね。

私の場合、2つの拠点でそれぞれに得たいものがありました。都心では「刺激的な情報に触れて、同僚たちの中で自分自身が成長しながら、社会貢献をするビジネスに関わりたい」、故郷では「地域に恩返しをしながら、田舎ならではの景色の中で、そこでの社会課題をリアルに感じていきたい」。

そのために必要な予算である36万円を用意して、そのために必要な有給を全部取得して、1年間をレイアウトしていったということです。

これが「私にとっての2拠点生活」です。皆さんにとっての2拠点生活がどういうものかはそれぞれ違うと思うので、それが描けた人から実現していくのではないかと思います。

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佐別当さん
最初にも紹介した「仕事をどこにでももっていくことができて、自分で意思決定のできる人」という多拠点生活をしやすい条件がそろっている人のほうが、もちろんやりやすい面はあると思いますが、最近の私たちのサービスの利用者には、例えば主婦の方などもいらっしゃいます。

旦那さんもお子さんも家で仕事をしたり勉強したりするようになって、自分のスペースがなくなってきたので登録してくれたそうです。平日は私たちの物件を利用して、週末は自宅で過ごす。これまで「自分の生活では多拠点なんて……」と考えていた人でも、それくらいの気軽な気持ちから始めている人もいます。

家族旅行に行くことなどを考えれば、多拠点生活にかかる費用は金額的にもそれほど非現実的なものではないと思います。

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■まとめ

ー石塚編集委員
最後にお伺いしたいのですが、多拠点生活を視野に入れながら、今後私たちがよりよい働き方を選べるようにするためには、何をどのように変えていけばいいでしょうか?

蓑口さん
よく「会社がダメと言うので」「家族がダメと言うので」という声を聞きます。確かにその要因は大きな割合を占めると思いますが、今すぐには実現できなくても、その上で自分がどうしたいかを考える時間をもつことは大事だと思います。

簡単に諦めるのではなく、状況が変わったら「こうしたい!」と妄想しながら、1つの場所に縛られない生活をする考え方は、ぜひもってみていただきたいと思います。

佐別当さん
個人が変わること、会社が変わること、国の環境や仕組みが変わること、それぞれが同時に変わってくれれば一番いいですが、まずは個人でできることから考えればいいと思います。「自分が多拠点生活をする目的は何か?」から考えてみてはどうでしょうか。

そして、会社が変わることに関しては、今は変わろうとしている会社も多いので、個人で動くことが難しければ、同僚や上司と一緒に会社の働き方が変わるように声を上げてもいいと思います。

国の環境や仕組みに関しては、地方でワーケーションや移住・定住支援をしている自治体は多いので、補助金などを大いに活用したり、数年後には今以上に多拠点生活がしやすい環境が整っていると思うので、そのときのために自分のキャリアアップやライフデザインについて、今から準備を始めたりするのもよいと思います。

■プロフィール

蓑口恵美さん
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師
株式会社ガイアックス社員

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富山県南砺市生まれ。インディアナ州BallState大学への留学を経て、東京学芸大学を卒業。外資系の広報代理店に入社後、仕事にやりがいを持つも、大切な人のそばで暮らせない生き方に悩む。この経験から、ITを活用し幸せに働ける人・地域を創ることをライフテーマに掲げ、ランサーズ株式会社へ参画。3年間で22の自治体と新しい働き方の事業を実施し、地域で自走するコミュニティ作りを目指した結果、2017年北海道天塩町では24名の住民がわずか8ケ月で160万円の報酬を得られるようになる。地域の課題解決は日本やアジアの課題解決になると考え、2017年よりシェアリングエコノミー協会へ参画。ランサーズとガイアックスの両方の会社で正社員として働きながら公助から共助の世界を目指している。2019年からふるさと南砺市井波で、ジソウラボの(MA)Pへ参画。


佐別当隆志さん
株式会社アドレス 代表取締役
シェアリングエコノミー代表理事
株式会社ガイアックス社員

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2000年株式会社ガイアックスに入社。広報・事業開発を経て、2016年一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し事務局長に就任。 2017年内閣官房IT総合戦略室よりシェアリングエコノミー伝道師を拝命。総務省シェアリングエコノミータスクフォース委員就任。2018年、経済産業シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会委員。月額4万円で全国住み放題のCo-Livingサービスを展開する株式会社アドレスを設立し、代表取締役社長に就任。2019年シェアリングエコノミー協会常任理事に就任。2020年シェアリングシティ推進協議会代表に就任。


石塚由紀夫
日本経済新聞社 編集委員

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1988年日本経済新聞社入社。女性活躍推進やシニア雇用といったダイバーシティ(人材の多様化)、働き方改革など企業の人事戦略を 30年以上にわたり、取材・執筆。 2015年法政大学大学院MBA(経営学修士)取得。女性面編集長を経て現職。著書に「資生堂インパクト」「味の素『残業ゼロ』改革」(ともに日本経済新聞出版社)など。日経電子版有料会員向けにニューズレター「Workstyle2030」を毎週執筆中。


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