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閉塞感なき世界 AI×IoT=妖怪の復権 新しい「環境知能」


モノの世話をする生活

モノの世話をすることに時間が奪われていませんか。

維持メンテナンス修理、関連デバイスの選択購入接続、その他あれこれ。それはそれで楽しいところもありますが、面倒なことも多いですよね。

IoTという言葉を耳にしなくなって久しいですが、技術の導入は、止まることなく、AI等の技術と結びついて、社会実装に向かってひた走っています。

現代の妖怪

様々なモノがネットワークに接続され、データが流通し、AIにより解析され、現実世界にフィードバックされる。

今から20年ちかく前の、情報処理学会創立45周年記念「50年後の情報科学技術を目指して」記念論文の優秀論文賞を受賞した『妖精・妖怪の復権ー新しい「環境知能」像の提案ー』(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 前田栄作, 南泰浩, 堂坂浩二)という興味深い論文があります。全文が読めるPDFがダウンロードできます。

私たちの身近にいつも寄り添い, 見守り, そっと支えてくれる存在. かつて私たちはそれを「妖精・妖怪」と呼んでいた. 物質的な利便性より精神的な安定と豊かさを追うべきこれからの時代に, 情報科学技術が取り組むべき課題はこの妖精・妖怪の復権である. 本論文では, それを新しい「環境知能」と呼ぶ.

『妖精・妖怪の復権ー新しい「環境知能」像の提案ー』
(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 前田栄作, 南泰浩, 堂坂浩二)

とあります。

モノが自律的活動する時代

このように、様々なモノにソフトウェアが組み込まれ、自律的に活動できるとしたら、もうモノを世話しなくてもよくなるかもしれません。

たとえば、僕がお気に入りのカメラがあるとします。
そのカメラを持って撮影に行くとします。
お気に入りの被写体を撮影することで、それがくり返されることで、その場面に最適なレンズを提示してくるかもしれません。

そこまでなら、従来通りのレコメンドかもしれません。
が、カメラが僕に対して、「このレンズで被写体を撮影したらもっとよく撮れるから買ってもいい?」と聞いてくるような対話が成立したら。
そこに、「いいよ」と承認することで、発注処理が走るとしたら。

モノが、自身のポテンシャルを最大限に発揮できるように、必要なものを提案してくれ、承認することで発注まで行ってくれる世界。予算枠を与えておけば、自動的に発注までかけてくれることも可能かもしれません。

そろそろメンテナンスが必要だから修理の予約をしますか? とか。
すでにサービス終了しているので修理よりも買い替えの方が安くすみます、とか。

人は、その道具を使って何をするかに集中できる。そんな世界。

もちろん、道具そのものをメンテナンスすること自体を楽しみたい場合は、その楽しみを奪うことなく、メンテナンスのための道具を整えてくれたり。

ぬるま湯の居心地悪さ

ここまで書いてみて、このぬるま湯のようなお膳立てされた世界は、どうなんだろう、とも思いました。なんかこう、むずむずします。

僕の価値基準である、「今日できないことが、できる明日がくる」という世界に対して、合致しているのか。

テクノロジカル・アニミズムの世界には、未来を感じるチカチカ感があります。ただ、その営みが、人の世話をしてくれることに向かい過ぎると、過保護な世界になりすぎ、失敗する自由を奪われ、敷かれたレールの上を走るだけになってしまい、面白みのない生活に陥りそうです。

壁と可能性

やはり、思い通りにならない壁、気づかなかった落とし穴、泣いたり悔しがったりしながら七転八倒することが、可能性を広げ、予想外の驚きや面白さにつながるのかもしれません。

やらなければならないことは任せたい、やりたいことは自分の手でチャレンジしたい。わがままですが、そういうことなのかもしれません。

いまさらですが「今日できないことが、できる明日がくる」とは、「今日できないこと」という壁があって初めて成立することに気づきました。

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