そんなに簡単ではない在宅と出社のハイブリッド型勤務。二者択一の先を目指す理由
皆さん、こんにちは。
今回ピックアップさせていただくのは、「在宅と出社の混成勤務体制」についてです。
「リモート勤務責任者」という役職があるのを聞いたことがあるだろうか。多くの人が3月から在宅勤務を続けていて、幹部らは恒久的に「ハイブリッドな勤務体制」に移行しようかと話し合っている最中かもしれない。つまり勤務場所として在宅かオフィスのどちらかに軸足を置きつつ、ほとんどの人が両方を取り混ぜて働く方法のことだ。だが座り心地の良い椅子からもっと便利な社員同士の連絡手段まで、幅広い職場のニーズをすべてチェックする仕事は、一般的にパンデミック前からその役職にいた同じ幹部らが通常業務に加えて担ってきた。リモート勤務を統括する役職を設けた会社は数えるほどしかなく、そのほとんどはIT系の企業だ。
オフィス勤務の再開は一筋縄ではいかない。とはいえ在宅勤務の継続にも問題が多い。多くの経営者がハイブリッド勤務を導入したがるのも当然だ。では、それがうまくいく可能性はどれくらいだろうか?
記事には「ハイブリッド勤務」はうまくいかないという意見とその理由が明示されています。
以前、「会社のカルチャーを犠牲にしない働き方制度設計のヒント。」というnoteを投稿しましたが、この中で、まさに当社は在宅勤務、かつジョブ型に振り切りすぎず、オフィス出社とリモートワークの良いところ取りをしていく「ハイブリッド型」を考えているというお話をさせていただきました。
同じようにハイブリット型を選択している企業の中には、どちらにもメリットデメリットがあって決めきれないという理由で折衷案としてハイブリット型を選択しているところもあるかもしれません。または、現段階ではまだ様子見で最終的な意思決定を持ち越しているだけ、というところもあると思います。当然、明確な意志を持ってハイブリット型こそがこれからの新しい働き方だと断言している企業もあります。
どういう理由であれ、「ハイブリッド型勤務」を考えている会社が、ぶつかる壁を予想してみました。
①意図しない強制感
→2つの勤務形態が混在することで、たとえば上司がオフィスで勤務している場合には、部下が在宅勤務を望んでいたとしても出社しなければいけないと思ってしまいがちです。また、上司の目が行き届くオフィス勤務の社員と比べて評価が下がるのでは?と考え、出社というスタイルを余儀なくされる人が出てきてしまいます。逆に、リモートワークをする人が増えれば増えるほど、職種や業務内容によって出社せざるを得ない人が不満を抱きやすくなってしまい、チームの中に働き方が異なる人がいる場合に、どちらかに意図せず逆の働き方への強制感を与えてしまうことになります。
②信頼関係の低下
→若い世代では在宅勤務を望む声の方が多い一方、50代以上はオフィス勤務を望むなど、世代間ギャップが生まれています。これは世代や性別だけのギャップではなく、職種や管理職か非管理職か、その他の個別事情によっても働き方に対するニーズの違いが発生し、そのギャップが大きくなるにつれて最終的には信頼関係にも影響を及ぼしてしまいます。
③価値観のズレ
→現在、転職先選びにリモートワークや在宅勤務、副業が認められているかを重視する人が増えていますが、在宅勤務制度の有無だけで会社を選んでしまった場合、入社後にミスマッチが多発する可能性が出てきてしまいます。しかもキャリア採用においては、ただでさえオンライン面接のみに切り替えている企業が多いことで、対面での面接の時と比較してミスマッチの確率が高まっている状況もあります。さらには、柔軟な働き方は社員の当然の権利であるという権利主張をする人が増えている傾向もあり、「在宅勤務を行わない会社は“悪”」、「オフィスに出社する人がおかしい」と捉える人が出てきている状況がハイブリット型勤務を阻害する要因の一つになってきます。
このように、オフィス勤務者とリモート勤務者が混合する勤務体系は、どちらにとっても“働きにくさ”が出てくる可能性があります。
下図の通り、いくつかの項目に対して、オフィス勤務の場合とリモート勤務の場合の特徴や意識すべきことを簡単に書き出してみました。
シンプルに言うと、『「オフィス」と「リモート」の役割の違いを理解し、それぞれの利点を組み合わせた使い方をする』という工夫が必要なのではないかと思います。
たとえば、対面でのコミュニケーションの方がより成立しやすい「雑談などから得られる新しい情報や新しい人間関係」、「緊密な人間関係の構築」、「新しいアイディアの創造やイノベーション」、「ニュアンスなども含めた直接的な指導」などはオフィスに出社した時に行い、逆にリモートワークに向いている「効率的かつ生産性の高い業務報告や相談」、「集中的なタスク処理」、「社員の自律性を促す育成やスキルアップ」などはリモートで行うというような使い分けができると理想です。リモートワークでうまくいっていない点を出社スタイルで補完し、うまくいっている点はそのまま継続して残す、という考え方でも良いと思います。
アフターコロナの働き方においては、コロナ前の働き方に完全に戻すことはもはや難しく、次の時代のスタンダードな働き方を創っていくことが求められています。社員一人ひとりの「働くとは?」「仕事のやりがいとは?」に向き合い、改めてニューノーマルな働き方を個人単位で、かつ会社単位でデザインしていかなければいけません。
その中で、「将来を見据えてもっとスキルアップしたい」「働き方だけでなく、キャリア設計も見直したい」「柔軟な働き方とセットでワークライフバランスの割合を変えたい」というような声にも向き合い、経営視点とセットでハイブリット型の働き方がもたらす未来を見定めていく必要があると思います。
最後に、当社では10月より、月曜日と木曜日を「リモデイ」として原則リモートワークとし、それ以外の曜日はオフィスに出社をしても良いとするハイブリット型の勤務体系に戻します。(※リモデイの日でも出社希望の人は出社可。時差出勤も可。曜日に関わらずリモートワーク希望の人は申請制で継続可。)
今は、オフィス勤務とリモート勤務の混合を「ハイブリット型」と呼んでいますが、働く場所は“会社”か“家”かの二者択一ではなく、サテライトオフィスやワーケーションなど、もっと選択肢が広がっていくことが予想されています。ハイブリット型勤務の形はどんどん変化していきますが、それによって出てくる障壁は、これまで想定されていないものも含めてまだまだ出てくるはずです。
働き方の変化とともに一つ一つの課題に真摯に向き合い、新しい価値観のもと、社員一人ひとりのニーズやビジョンに寄り添いながら新しい働き方を定義し、実現に向けて改善を繰り返していくことこそが、結果的にこれからの時代に合った働き方につながると信じています。