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“一目で義理とわかるチョコ”ブラックサンダーのバレンタイン広告がシンプルにすごい2つの理由

「ブラックサンダーのバレンタインの広告がシンプルにすごいwwww」

今年、ブラックサンダーの駅貼り広告「一目で義理とわかるチョコ」がXで話題になりました。

▼僕も思わずリポストしてしまいました

実はこの広告は、2013年に新宿駅で掲載されたもの。

10年経っても話題になっていることからもこの広告の素晴らしさは伺えますが、その理由と、愛されるプロモーション施策や広告に必要なことを考えてみました。

ブラックサンダーの広告がすごい理由

すごいと感じる理由は主に2つ。

1つ目は、「ブラックサンダー=義理チョコ」というインサイトをそのまま広告にしたこと。

消費者の口コミをそのままプロモーションにするというのは、特に大企業では難しくリスクもあるものなのですが、これをきちんとバレンタイン目前に大型広告として出したということは、この施策に並々ならぬ想いを注いだということ。1個30円というプチプラ感を逆手に取り、「義理チョコと言えば、ブラックサンダー」というイメージを定着させにいったのです。

時代背景もありますが、あえてWeb広告ではなく人の目に留まりやすい場所に設置する決断には脱帽です。

2つ目は「義理チョコ」というポジショニングに着目したこと。

なぜなら「感謝の気持ちを込めてチョコレートを贈りたいけど、勘違いはされたくない」と考える層は、確実にいるから。ひとりにしか渡さない本命チョコと比べて、義理チョコは圧倒的に購入する人の数が多いのです。

こちらの記事では広告を出した背景として「義1チョコとしてのポジショニング」への想いも語られていたのですが、1個30円ほどのブラックサンダーが「本命にはなれない」と言い切っているあたりからも、商品や自社に集まる印象をよく理解していることを感じました。

バレンタインにどうにか自社のチョコを売りたい。主力商品を推すしかない。ただ、ブラックサンダーは1個30円くらい。ひいき目に見ても、本命にはなれない。本命として渡されても、誰も納得してくれません。ならば、義理チョコではどうか、と。

広告やプロモーションは「消費者の声」から作るべき

僕は愛される広告やプロモーション施策を作るなら「消費者の声」から作っていくことが重要だと考えているのですが、ブラックサンダーの広告には、まさに「消費者の声」やインサイトを日頃からよく捉えていることが表れています。

ちなみに、有楽製菓(ブラックサンダーの販売・製造元)が商品や自社に集まる印象をよく理解していると思った理由はもう1つあります。

広告が今でも話題になっている一方、実はブラックサンダーは「『義理チョコ』が浸透しすぎたことにより、バレンタインには義務的に義理チョコを渡さなければいけない風潮ができてしまった」という考えから「義理チョコ煽りを謝罪したい」というメッセージとともに、2021年頃から施策の方針を転換しました。

あれだけ大きく「義理チョコ」プロモーションを展開していたにもかかわらず、時代とともに施策を調整していくことができるのは、世間の考えや商品への口コミに注目し続けている証拠だといえるでしょう。

▼ブラックサンダーの施策に関しては、こちらの記事を読むのがおすすめです

自社からかけ離れた施策は、違和感がある

消費者が自社や商品に抱くイメージをあまり深く考えずに打った施策は、違和感があります。

例えば、海鮮をウリにしている居酒屋さんが「バレンタインキャンペーンです!」と商品の値下げを行ったとしても多くの方は「なぜ?」「ああ、乗っかっただけか」と思いますよね。

トレンド系の施策は特に乗っかりたくなるところですが、自社のサービスがトレンドにあまり関係ないときは、無理に絡まず無視したほうが良いと個人的には思っています。

とはいえ、上手なやり方はあります。

例えば、本の買取サービスを展開する株式会社ブックサプライが公開した、バレンタインに絶対観るべき映画の調査は、バレンタインの夜におうちデートをする需要や「恋愛」への関心が高まる世間の動向を抑えています。

“マッチョ×介護士“障害者介護施設を運営するビジョナリーが企画したバレンタインデー限定の「マッチョコ便」は斬新なものの、語呂もよく、焦げた肌とチョコレートカラーの共通点を持つため、それほど違和感がありません。

ちなみに、僕がCMOを努めるクライナーでは、自分へのご褒美チョコの需要を鑑みてイラストレーターのなおにゃんさんと一緒にPR施策を行わせていただきました。

多くの企業でSNSマーケティングやインフルエンサーを起用したキャンペーンを実施するようになった昨今ですが「意味があるのかな?」と思う施策も増えたと僕は考えています。

より広くたくさんの人に見てもらうために、いいねやリポストを集めるキャンペーンをしたり、商品とはあまり関係がないけれどフォロワー数の多いインフルエンサーに依頼をかけたり。

こうして拡散されたものは逆に「PRで話題になってる商品でしょ」「本当に良いのかな?」と好感度が下がってしまったり、不信感が募ったりします。

愛される商品やサービスを作りたいなら、きちんと自社のイメージや商品のことを分析したうえで、本当に自分たちに似合う広告のキャッチコピーやプロモーション施策を行いましょう!

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

今瀧健登 / Imataki Kent(X:@k_hanarida)
Z世代の企画・エモマーケティング会社僕と私と株式会社」 CEO
クライナーを扱う「株式会社シトラム」CMO
日経COMEMO キーオピニオンリーダー
ESG特化型VC ICJ顧問
株式会社MoreChoice 顧問


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今瀧健登 / Z世代の企画屋
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