コロナ禍で加速する「知らない人が知らない人を支援する」取り組み〜コロナウィルス・テック・ハンドブック
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が連休明けから更に1ヶ月の延長方針が固まりつつある中、多くの人が将来の生活不安や非日常の連続に直面していることと思います。
そんな中、私たち一人ひとりが自分のこと、家族のこと、職場のこと、地域や所属コミュニティを守るために取り組んでいることも、いろいろな形で輪が広がっているのではないかと感じます。
国内外の取り組みを見ていてとても勇気づけられることは「知らない人が知らない人」を支援する取り組みの広がりです。テーマや地域毎に支援のマッチングを行うフェイブック・グループ、オンラインでの寄付を可能にするクラウドファンディング・サイト、そして必要な情報がまとめられている公開グーグル・ドキュメントシートなどを目にしたり、実際に参加した人も多いのではないでしょうか?
そんな取り組みの一つとして1ヶ月半程以前に興味を持って紹介させていただいた「コロナウィルス・テック・ハンドブック」というプロジェクトがあります。新型コロナウィルスの感染拡大に対処する上で有益と思われる情報をオンラインの公開グーグルドキュメント上に掲載し、匿名で誰からでも情報を追記してもらい、それを整理、更新する、というシンプルなプロジェクトです。
3Dプリンターを使った防護器具の作成方法、メンタルヘルスの対処法、ボランティア運営の方法、テレワークの効果的な方法、フェイクニュースの対処法、手作りマスクの作り方など、時間の経過とともにあらゆる分野、テーマで必要な情報のテーマ、カテゴリーが生まれ、世界中から情報が寄せられていることが分かります。
開設から1ヶ月半が経ち、今も毎日その情報が更新され、多言語での翻訳プロジェクトも多く生まれ、進化している様子が伺えます。
中心になって運営をしているのは英国を拠点とする独立系大学ニューズピーク・ハウスの有志メンバーですが、4月上旬には英国政府系のイノベーションを支援するチャリティー団体NESTAから5万ポンド(約664万円)の援助を受け、現在はクラウドファンディングキャンペーンも展開しながら、更なるコンテンツの充実や検索性の向上に力を入れているようです。
アドバイザーにはウィキペディアを運営するウィキメディア財団のエグゼクティブ・ディレクターのキャサリン・マー氏やロンドン市初代チーフ・デジタル・オフィサーのテオ・ブラックウェル氏なども加わり、長期的に社会で求められる情報インフラに成長している様子で、「新型コロナウィルスの"ウィキペディア"」としてBBC、フィナンシャル・タイムズ、テッククランチなどでも紹介されています。
日々流れるニュースはツイッターやウェブメディアで話題になるものの、すぐ流れてしまったり、各地域や特定の業界、支援が必要なコミュニティに特化したメディアが十分に蓄積型コンテンツとして十分に機能出来ない場合、こうした昔ながらの「リンク集」の役割が今まで以上に必要とされるのではないかと感じます。
現状ハンドブックは英語版がメインで、日本語版はなかったこともあり、先日おそるおそるボランティアで協力出来ないか問い合わせをしてみました。
Twitterでの連絡後、数分ですぐ返信があり、すぐにチャットサービスのWhatsappグループに招待され、そこで編集ボランティアグループのメンバーが献身的に情報の見極めや配置場所についての毎日議論をする様子を伺うことが出来ました。お互い面識のないメンバー世界中から集まり、一つのプロジェクトに取り組む姿にはとても可能性を感じるものでした。ささやかながら自分も貢献してみたい気持ちに突き動かされて、先日日本語版を作成することにしました。
英語版のようなダイナミックなコミュニティが構築できるかはまだ分かりませんが、日々流れる情報を翻訳や新規追記しつつ、新しく作成したSlackコミュニティページの中で同じような興味を持つ人と情報交換をすることができればと思っています。新型コロナウィルスにより生じる問題の解決策は国境に関係なく、グローバルなチームワークが必要とされると同時に、地域やコミュニティ毎に適したローカルな対応もますます必要になっていくことと思います。
以下の記事の中でも、書かれているように、新型コロナを契機に、市民による、「自らのスキルを使って自分たちの住む社会に貢献する機運」がますます拡がることを願っています。
リリース後約1カ月でソースコードが修正された回数は1720回。単純計算で1日60回弱の修正が施されたことになる。東京都の許可を得たうえで、修正を加えていった。市民が「お上」の言いなりではなく、自らのスキルを使って自分たちの住む社会に貢献する機運が新型コロナを契機に高まっている。デジタル技術の進化がこの動きを後押しする。