見出し画像

人材育成が経営戦略の中心に。 注目の集まる人的資本経営

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

働き方改革、ジョブ型雇用、リスキリングなど、日経新聞などの経済紙においても人材に関わるニュースをよく見るようになりました。特に長引くコロナ禍で働き方に大きな変化が生まれたことで、これまでにない課題に直面したり、抜本的にやり方を考え直す契機になったのだと思います。

また、2021年4月に行われた東証のガバナンスコードの改訂をきっかけとして、上場企業を中心に「人的資本」への注目が集まっています。企業によっては長らく社長をやってこられた方(創業者など)からどう次世代にバトンを渡すか、いわゆるサクセッションプラン(後継者育成計画)を実施していることもあるでしょう(そういえば、これも2015年のガバナンスコード改訂をきっかけですね)。

ここで挙げられているのは、人的資本に関する適切な情報開示のことです。その中には「中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」も求められています。この件に関しては、以下の記事で話題にしました。

経営の三大資源、つまりヒト・モノ・カネは、B/SやP/Lなどの財務諸表に表現されています。大きなモノの投資をすれば資産化して減価償却ということになりますし、無形資産と呼ばれるソフトウエアについても大規模なものは資産化されて載ってきます。しかし、人材に関してはざっくり「人件費」ということになりますが、販売費及び一般管理費の中では一番のウエイトを占めます。しかも固定費ですので、経営に与えるインパクトも大きいものです。

ヒト、モノ、カネは経営の三大資源といわれます。中でも今、ヒト(人材)への注目が急速に高まっています。人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、企業価値向上につなげる人的資本経営を表明する企業が国内外で増加しています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や、新型コロナウイルスの感染拡大などで経営環境は大きく変化しています。先が読めない時代だからこそ、競争力の源泉である人材に注目が集まっているようです。女性管理職比率や離職率など、人材の活躍・育成状況の情報開示を求める動きが広がっていることも理由のようです。

上記の記事では産業構造の変化にも触れられています。2次産業が主流だった時代はいかに早く安く作るかが競争力の源泉でしたが、今は「何を」つくるかという創造力と革新性が求められます。これらは人間のクリエイティビティから生み出されるものであり、米国S&P500社の市場価値を分析すると、その約9割は人材などの無形資産が生み出しているとのことです。

このような背景から、働きやすさを測るために離職率をみたり、人材の育成状況や戦略を開示する動きが広がっています。人事戦略が経営戦略のど真ん中にきたとも言えるでしょう。だからこそ最近では、大企業を中心にCHRO(最高人材責任者、Chief Human Resouce Officer)やCPO(Chief People Officer)などの役員を設置するようになりました。

人材の活躍を願っているのは会社だけではなく、働く人々もです。むしろ実際の当事者は社員ですので、より真剣に興味を持つべきでしょう。開示がされれば自社のデータをよく見てみることをおすすめしますし、同業他社はもちろんのこと他業種についても見てみると発見があると思います。今後は転職をする際には必ずこれらのデータをチェックするという動きになることでしょう。

経済産業省は人的資本経営の実現に向けた企業向けガイドラインを年度内にまとめます。どの指標をどのように測定して開示するのかの基準ができることは、投資家のみならずすべての働く人にとって良いことです。一方で数字の読み解き方については、しばらくは様々なケースをみて学習する必要がありそうです。

例えば離職率ないしは平均勤続年数をみるとしましょう。当然のことながら、終身雇用の伝統的日本企業のほうが低く、長いものとなるでしょう。急成長している話題のスタートアップなどは、平均勤続年数は2年弱、離職率も高めに出ます。そもそも創業して数年だったりするわけですから、当たり前の話です。さて、どちらが今後大きく成長するかを考えてみれば、単純に数字だけをみるのはミスリードになる可能性があることがわかるでしょう。

いずれにしても企業が人材に投資をするきっかけとなることは間違いないです。自身のキャリアと企業が求める人材を比較して学び直すいい機会にもなると思います。

---------
みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!

タイトル画像提供:metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?