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利用者を欺く「ダークパターン」を抑制するための対策

UXを向上するための設計技法を悪用して、ユーザを意図しない行動に誘導するデザインをダークパターンと呼びます。

前回は、ダークパターンに制裁金が課されるようになってきている動向に着目しました。

今回は、ダークパターンの利用先やその発生を防ぐ方法について考察をします。

ダークパターンの用途

ダークパターンの命名者であるハリー・ブリグナル氏によると、状況はますます悪化してきており、もしユーザが問題に直面したら世に訴えかけていく必要があると力説しています。

著書の中では、ダークパターンにはどんなものがあるのか詳細に分類されて説明されているので、興味がある方はぜひご一読ください。

ダークパターンのやり方は様々ありますが、その適用先は主に3つあります。

① 購入の促進

  • 定期購入と1回だけの購入を誤認させる

  • 手数料や送料、悪いレビューなど購入にとって不利な情報を目立たなくし、効果の大きさや格安であることなどの魅力だけを際立たせる

  • 期限や希少性、他者の検討状況などをリアルタイムに見せ、今しかないと焦らせる

  • 付属品やオプションサービスを目立たないように追加し、知らないうちにセット購入させる

② 意図せぬ登録

  • 購入時などに意図してないメルマガが登録されている

  • 商品の情報を見たいだけのユーザに会員登録の強要する

  • 同意した個人情報の用途規約が広く、自分の情報が勝手に利用される

解約の抑制

  • 解約に必要な情報を探しづらくする

  • 解約情報をわかりづらく書き、解約方法を理解できなくさせる

  • デジタル上だけでは解約できず電話や人に合わないと進められないなど解約手順を複雑かつ煩雑にする

皆さんも、上記のような状況に何度も困らされたことがあるのではないでしょうか。

ダークパターンが発生する原因

多くの企業では、お客さまを大切にして価値を提供することを目的とし、その結果として事業成長を実現することが経営の基本に据えられています。

しかし、売上や利益などの事業結果を数値目標化し、その数字ばかりを追いかけた活動に終始しているといつしか目的を見失ってしまいます。

組織が大きくなり各チーム単位で分解した指標だけを追うようになると、お客さまと企業の関係性は乖離していき利用者の実態は一層つかめなくなるため、ユーザが喜んでいるのか、悲しんでいるのかもわからなくなります。

そんな中で目標数値の達成が難しくなると、見えないし知らない相手に対して、手段を選ばなくなっていくのも自然な流れです。

また、目標達成に対するアイデアが枯渇してくると、競合他社や先端サービスの事例を模倣するものです。日本の主要サイトの6割でダークパターンが用いられているという調査結果があるように、大多数のデジタルサービスにダークパターンが埋め込まれているため、今後もユーザにとって不幸なデザインが増え続けることが容易に想像できますし、ユーザに不利益のあるデザインが盲目的に取り入れられることが常態化しているのではないかと危惧しています。

日々のデジタルサービスに関する業務が、サイロ化されたチームによって、ユーザ獲得数の向上やユーザ離脱率の減少といった単なる利益創出のために細分化された個別指標のみを追求し続けているものであれば、ダークパターンが発生するのは当前だと断じざるをえません。

ダークパターンを抑え込む対策

事業において成果指標を分解し、各チームが追求する行為自体が悪いわけではありません。

誰に何の価値を提供するために運営されているサービスなのかといった、本来の目的そのものが見失われてしまうことが問題なのです。サービスの目的を明文化し、その目的に照らした組織運営がなされる必要性が高まっています。

また、世界中でダークパターンに対する罰則が強化される方向へと規制が進んでいるため、企業側では事業運営を健全化することを目指す流れにあります。ガイドラインなどを使って自社サービスからダークパターンを締め出す活動が推進されるのも、対策の一手にはなります。

ただし、どんなにガイドラインが徹底されていたとしても、またそれが意図したものでなかったとしても、それでもユーザが「何かおかしい。自分は騙された」と感じる事象が発生したら、それはダークパターンと判断せざるをえません。

本来ダークパターンの発生を抑制するためには、常にユーザからのフィードバックを重視し、クレームなどの負の問い合わせに関して組織内で共有して対応する必要があります。また、問題が発生した場合には、サイロを超えたタスクフォースを立ち上げていくことも必要でしょう。

これから人口減少が続く市場環境の中では、事業成長の観点でも既存のお客さまに嫌われ、評判を悪くしていくことは致命的なダメージとなりえます。

企業全体でお客さまに喜んでもらうための体制を作り上げていく効果は、ダークパターンに対する罰金を回避するだけに留まらず、長期的に見れば事業の発展へと繋がっていくはずです。

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