アイディアの磨き方〜現役経営者がアイディアを形にするために実際にやったこと〜
株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しています。
「アイディアを思いついたのですが、どう形にしていけばいいでしょうか」
アイディアを生み出した後の1歩目の踏み出し方について、よく質問をいただきます。そこで今回は #アイディアの磨き方 をテーマに私が起業した2019年前後、当時実際にやっていたこと、新規事業をスタートする際にやっていたことなど私自身のリアルな経験をお話ししていきます。
前段であるアイディアの出し方については別のnoteで解説しています。悩んでいる方は、まずこちらからご覧ください。
アイディアを形にするために最初にすべきこと
私は2019年にAnother worksを起業し、「複業クラウド」という複業したい個人と企業や自治体を繋ぐマッチングプラットフォームを生み出しました。
実はこのサービスのアイディア、最初は漠然としたものでした。
大手人材会社に入社し、日々目の前のお客様と向き合う中で、このような漠然としたアイディアがあったのです。しかし、漠然としたアイディアだけでは形にはなりません。そこで私は何をしたか。
「問いを立てること」
私は「問い」を立て続けました。これは前職のビジョナル(当時のビズリーチ)代表の南さんから教わったことです。実は、皆さんも日々多くの「問い」を立てています。なんで朝の電車は混んでるんだろう?なんで外は寒いんだろう?なんでこれは美味しいんだろう?無意識に「問い」を立てているのです。
すでにアイディアの種が出ている方は尚更です。社会課題は何だろう?身の回りの課題は何だろう?本当にその課題は解決すべきなのだろうか?とにかく頭の中では「?」がたくさん出てきたと思います。これが「問い」です。この過程が、私はアイディアを形にするために1番重要だと思っています。私は漠然としたアイディアを形にするために、自分に、社会にこんな「問い」を投げかけました。
企業は本当に人で困っているのか
困っているとしたらどんな企業が、どんな人が足りなくて困っているのか
なぜ人で困っている企業は課題を解決できないのか
どこがネックになっているのか
高額な手数料が払えず人を採用できないことに課題があるのではないか
そもそも募集をかけても人が採用できないことに課題があるのではないか
地方企業は移住が伴うため正社員採用の難易度が高いのではないか
知名度のないベンチャーはより正社員採用の難易度が高いのではないか
入社までにタイムラグがあることに課題があるのではないか
企業が本当に困っている真の課題とは何か
本当に正社員でなくてはならないのか
複業・業務委託では解決できないのか
これからも人で困る企業は増えて続けていくのか
他にやっている会社はいないのか
私自身が複業事業を心から必要だと思い、やりたいと思っているか
複業と心中する覚悟はあるか
この問いを通じて私は、企業は本当に人で困っており、人口減少に歯止めがかからない中でこれからさらに人手不足は深刻になっていく。しかし、企業の課題解決は必ずしも正社員でなくてもいい。だからこそ、雇用形態に拘らず「複業」で優秀な人が1人でも入ることで会社は前に進むことができると考えました。また、高額な手数料を払って1人の正社員を採用するよりも、優秀な人材を何人でも採用できれば企業の本質的な課題解決に繋がる、そう確信しました。
当時私が着想を得たのがNetflixです。Netflixは月額定額支払うだけで映画やドラマが何本でも見放題という画期的なサービスです。私はこれを人材採用に転換しました。複業したい個人が登録するプラットフォームを作り、企業は月額定額をお支払いいただくだけで何名でも採用できればいいのではないか。1名採用しても100名採用しても料金が同じであれば、お金を気にせず企業の力になれるのではないか。そうアイディアを徐々に、そして鮮明に、形にしていったのが「日本初、成約手数料無料。月額定額で即戦力複業人材を何名でも採用できるプラットフォーム 複業クラウド」です。人材採用するのに手数料を払うのが当たり前だという常識を180度ひっくり返したのが我々のサービスです。現在、リリースから5年強で複業したい個人の方が約9万名、複業を採用したい企業が累計2,000社以上登録いただいています。
私自身、「複業クラウド」はもちろんいくつか新規事業を立ち上げながら事業展開してきましたが、今でも常に問いを立て続けています。もう1つ私の実体験をお話しします。
2020年の4月、新型コロナウイルスの流行による最初の緊急事態宣言がありました。その時に、一度、世界全体の経済が止まりましたよね。街中は誰一人歩いておらず、企業もいかに会社を守れるか、今ある資金を守れるかを考えていたときです。私はここで「これからどんな世の中になるのか」「企業と人、働き方はどう変わっていくのだろうか」と問いを立て続けました。混沌を極める世の中では常々、新しい常識や価値観が生まれます。情勢に大きな変化があったときこそ、いかに早くポジティブに自社ビジネスドメインと社会の方向性の相関を捉え、新しいアイディアを生み出し形にできるかが勝負の分かれ目となります。
そこで生まれたアイディアの種が「人で困っているのは民間企業だけではない。行政も人で困っているのではないか」というものです。
オンライン化が急速に進むであろうという社会情勢から、このような漠然としたアイディアを生み出しました。そこから再びアイディアを形にするために「問い」を立て続けたのです。
自治体が本当に困っている真の課題とは何か
行政はどうやって人を採用しているのか
そもそも行政は外部人材を採用しているのか
複業人材を受け入れることに抵抗はないか
あるとしたらどんな抵抗があるのか
複業人材は役場にいき仕事をする必要があるのか
オンラインで参画することでどんな差分を生み出せるか
なぜAnother works社がやるのか
誰の何の課題を解決するのか
経済性をどのように生み出していくのか
代表が100%コミットすることができるケイパビリティはあるのか
自治体は本当に複業人材を求めているのか
他にやっている会社はいないのか
やっていればなぜ上手くいっていないのか
撤退ラインはどのように設計するか
ファウンダーとして本当に自治体事業を心からやりたいと思っているか
自治体事業と心中する覚悟はあるか
このように「問い」を立て、「Another worksがやる価値がある」「Another worksが本気で取り組めば自治体も複業人材も全員が幸せになる」と結論づけたのです。自治体は本当に困っているのか、複業人材を本当に求めているのか、自分勝手な思い込みではないのか、とにかく「問い」を立てるのです。実際、「複業クラウド for Public」という行政が複業人材を採用し、行政職員と共に行政課題を解決していく新規事業をスタートしたのは創業2期目、現在は47都道府県200自治体以上に導入いただき、全国の自治体の10%のシェア導入を実現することができました。
万有引力を発見をしたアイザック・ニュートンは、リンゴが目の前に落ちてきて「なんでリンゴは落ちるのに、月は落ちないんだろう」と考えたことがきっかけでした。ニュートンは「問い」を立てたのです。しかし、果たしてリンゴが目の前に落ちたのはニュートンが初めてだったのでしょうか。きっとそうではないはずです。ニュートンよりも先に、自分の目の前にリンゴが落ちた人はたくさんいるでしょう。でも「問い」を立て、形にしたのがニュートンでした。アイディアを形にすることはこれくらい誰にでも機会はあるのです。目の前のことに対して「問い」を立て続けること、これがイノベーションの私は始まりだと思っています。
「もし今日が人生最後の日なら自分は何をするだろうか」
私が漠然としたアイディアを、なぜ実際に形にし、起業を選んだのか。なぜ行動に移したのか。大切にしているのが「もし今日が人生最後の日なら自分は何をするだろうか」という言葉です。これはAppleの創業者スティーブ・ジョブズの言葉です。毎朝、鏡の前でジョブズは自分に問いかけていたそうです。朝起きて、もし今日が人生最後の日なら何をしますかと。当たり前のように歯磨きをして、顔を洗って、会社に行くような日々の中で、ジョブズはこう問いかけていたのです。
アイディアを思いついた後、アイディアを形にする選択肢もあれば、そのままにしておくという選択肢もあります。それは人それぞれです。しかし、現代は何でもできる世の中になってきているます。昔は起業するにも多くの資金が必要でした。しかし、今は起業することは難しいことではありません。数十万円を持って法務局に向かえば、簡単に起業することができます。本業を辞めずに複業的に起業することもできます。自分の考えを発信したければ無料で使えるSNSもあります。自由な時代だからこそ、自分で自分に制限をかけている人が多くいるのではないかと思っています。もし今日が最後の日だったら何をするか、後悔のないように生きようと自問自答して、私は26歳のときに起業を決意しました。もちろん、やらないことも選択です。一度でも、人生の時間を懸けてやる必要がないと思ったことは続きません。やらないことを英断することも必要です。しかし、できない理由ばかり見つけていては何も成し遂げられません。「もし今日が人生最後の日なら自分は何をするだろうか」今一度自分に問いかけ、できる理由から探しはじめましょう。
アイディアを磨き続けるために大切なこと
2019年に起業してから6年目になりますが、私は漠然としたアイディアを形にし、そこから事業を拡大し続けてきいました。ここで改めて気づいたことの1つが、アイディアを形にすることは正直そこまで難しくないということです。アイディアを形にすることよりも、アイディアを磨き続けること、市場の最前線に立ち続ける方が圧倒的に難しいのです。
起業すると様々な困難が降りかかります。事業を拡大するための資金が必要だったり、一人でできることには限界があるため仲間集めが必要だったり。挑戦していると批判もあります。これもほんの一部です。いろんな困難が待ってます。だから辞めたくなる人が多いのです。
しかし、私がアイディアを磨き続けられること、立ち続けられることには理由があります。
「この事業が好きだから」
今やっていることが本当に好きかどうかです。本当に心の底からやりたいと思っているかです。前回のnoteでは「覚悟」の重要性をお伝えしました。アイディアを磨き続けるには「覚悟」に加えて「好き」という感情も欠けてはならないものです。好きなことでなければ続けることができません。ジョブズがいうように「もし今日が人生最後の日なら」好きなことをやるべきだと心から思っています。だからこそ「問い」を立ててみてください。
今あなたがやろうと思っていることは、本当にやりたいことですか?
誰かがいっていた儲かるサービスや誰かがいっていたトレンドや流行だけが理由では、立ち続けることは難しいです。どれだけアイディアが実現された未来に、あなた自身がワクワクしているか、これがアイディアを磨き続ける上で本当に重要です。
アイディアは実現してこそ価値がある
「シャワーを浴びたことがあるなら
誰でもアイディアの1つぐらい浮かんだことがある」
ServiceNow創業者フレッド・ルディ氏の言葉ですアイディアがない、アイディアが浮かばないと思っている人もいるでしょう。しかし、シャワーを浴びれば、少し目を瞑って考えればアイディアは浮かぶんです。身の回りに課題はないか、使いづらい仕組みはどうしたら解消されるのか、5年後の世の中はどうなっているのか、「問い」を立てれば少なくとも1つは思いつくはずです。きっとアイディアに出会ってないのではありません。浮かんだアイディアを掴み、言語化していないだけなのです。
「おもしろいもののうち、実際につくり出されたものは
たった1%しかない。99%はまだつくられていない」
これは、Google副社長 セバスチャン・スラン氏の言葉です。おもしろいもののうち、1%しか実現されていないそうです。99%のワクワクするアイディアはまだ形になっていないのです。アイディアを思いつく人は多くいます。シャワーを浴びていたら1つは思いつくことができるのですから。だからこそ、アイデアは実現してこそ価値があります。思いついただけでは世の中は何も変わっていません。だからこそ、1歩行動に移すことが大切です。
ここまでアイディアの磨き方をテーマに私の経験をお話ししてきました。
私は起業して心からよかったと思っていますし、今もなお「複業の社会実装」が実現できる未来にワクワクしながら前に進み続けています。好きだから続けられる、好きだから発想が生まれる、好きだから突き詰めたくなるのです。そして1歩踏み出さなければ見えない世界があります。0と1の間には大きな差があります。
ぜひ皆さんもこれをきっかけに「問い」を立ててみてください。私も「問い」続けます。共に新しい価値創造へ、挑戦し続けましょう。
日本経済新聞 私見卓見で「アイデアの出し方」についてお話ししました▼
大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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