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「BeReal」はなぜウケた?Z世代に人気のアプリから考える、“使われるSNS”の特徴

「あ、BeRealきた!」
「BeReal撮ろうよ」

最近、Z世代の間では「BeReal」という言葉が合言葉のように飛び交っています。

Z世代を中心に流行している「BeReal」。2020年にフランスでリリースされ、2022年ごろから全世界でダウンロード数が急増しているSNSアプリです。

24年6月に公開された『Z世代が選ぶ2024年上半期トレンドランキング』では「コト・モノ」部門で1位、「言葉」部門で2位にランクインしたことで話題となりました。

X、Instagram、Facebook、TikTokと、世界的なシェアを誇る4大SNSが台頭し、新たなSNSがシェアを伸ばすのが難しいといわれる現代。そんななかでBeRealが注目を浴びている理由には、アプリの名前にも込められた「リアルな自分を見せる」というコンセプトが関係していると言われています。

写真を撮影して投稿できるのは、アプリの通知からたったの2分間のみ。BeRealではフィルター、補正もなく、その瞬間だけの「本当の自分の姿」を見せる必要があります。

「いつも家にいるから天井の写真ばっかり」「本当に充実しているときほど通知が来ないから、見ていておもしろくない」というのは、もはやBeRealあるある。何も撮りたくない場合は、天井と床、壁などを撮っている人もいるようです。

しかし最近では、本来盛れないはずのBeRealで、盛れない制約を乗り越える裏技を使うZ世代が増えてきたというニュースも。

なぜZ世代はこのアプリに魅了され、利用を続けているのでしょうか。

今回はZ世代目線でBeRealがユーザー数を増やした理由を解説するとともに、今後人気を集めるSNSとはどのようなものなのかを考えてみます。

Z世代が求めるのは「違和感なく盛れる」SNS?BeRealに惹かれる理由

まずは、Z世代がBeRealに惹かれている理由から考えていきましょう。

インターネットで「BeReal 流行った理由」と検索してみると、やはり多くのメディアに「盛れない」「ありのままのリアル」が発信できることがZ世代から支持を集めている、といった記述があります。

しかし、Z世代の最近のBeRealの使い方からは「盛れないBeRealでもなんとか盛りたい」「ありのまますぎるのはなんとなく恥ずかしい」そんなインサイトが伺えます。

Z世代は、本当にBeRealの「盛らない」「盛れない」点に惹かれているのでしょうか?

この問題に関して、僕は「半分YESであり半分NO」であると考えています。というのも、今のZ世代は「盛らない」ことよりも「違和感がないように盛りたい」と考える人が多いのではないかと思うのです。

「SNSでの自分を盛る」という行為には、顔を加工する直接的な「盛り」と、私生活の充実ぶりを演出する間接的な「盛り」の2つのパターンがあります。

前者は「自然に盛る」ことの難易度が高い行為です。

TwitterやInstagramの普及率が上がってきた2016年〜2017年ごろは、頭に動物の耳が着くフィルターをかけられるカメラアプリや、カラフルで彩度の高い加工をする人がほとんどでした。それが、近年は加工疲れもあってか、リアルに近いハイクオリティな加工か、いっそのこと加工しない等身大な自分がいいという価値観が生まれています。

幼いころからSNSに触れてきたZ世代にとっては、SNS上でキラキラとした自分を演出するよりも、SNSと現実の顔が違うことのほうが違和感があるのです。

一方、後者の「盛り」はSNS上でもリアルでも盛っていることはバレにくく、たとえ盛っていたとしてもまわりの評価が下がることはほとんどありません。

記事にもあるように、友人と出かけているときやおいしそうな食事を食べに行ったとき、旅行先などだけでBeRealを撮影することで、自分の私生活が活動的で豊かであるかのように「盛る」ことが可能です。

人は誰しもカッコつけたかったり良くみられたかったりする生き物であり、それはZ世代も変わらないと僕は考えています。ありのままの姿を大切にしつつも、上手に私生活の良い部分を強調したい。それが今のZ世代の「盛る」への価値観なのではないでしょうか。

インカメラとアウトカメラで撮影。カメラアプリとしても優秀なBeReal

では、一体Z世代はBeRealのどのような点に惹かれ、アプリを使用しているのでしょうか。

BeRealが注目を集めた1つ目の理由は、その独自のコンテンツ性です。BeRealといえば、インカメラとアウトカメラの二画面でほぼ同時に撮影する特徴的な撮影方法が挙げられます。

この機能は、友だちと遊んだときや食事をしているときなど、日常のさまざまなシーンで使いやすく、既存のカメラアプリにはない新鮮さをユーザーに提供しています。

また、顔に加工が施されず、フィルターもかからないため、性別を問わず誰でも使いやすい点も魅力です。この撮影方法に魅力を感じる人も多く、InstagramのフィルターにもBeReal風の画像を撮影できるものが登場しています。

僕のまわりではBeRealをカメラアプリとして利用し、撮影した写真をInstagramやTwitterに転用するユーザーも見受けられ、BeRealがただのSNSではなくカメラアプリとしても人気なことが分かります。

SNSを利用する目的だけでなく、コンテンツそのものの面白さからBeRealを利用したいと思う人が多いことが、ユーザー数の増加につながっていったのではないでしょうか。

「みんな持ってる」がわかりやすい!マーケティング効果もある同時通知機能

2つ目の理由はBeRealが持つ、1日数回ランダムでユーザー全員に同時通知が送られる機能にあると考えています。

この機能はBeRealの核となるコンテンツであり、BeRealのマーケティングに大きく役立っています。全員が同時にアプリを使用することによって「それ何?」という会話が生まれたり、BeRealというアプリ自体の認知度が上がりやすくなったりするのです。

また、アプリを使用している人としていない人が明確にわかることで、アプリをダウンロードしていないと疎外感を覚えることがあります。「まわりが持っているなら自分も!」と思いやすくなるのも特徴なのではないでしょうか。

広まるSNSを作るカギは、コミュニティ活用にあり

では、今後もしSNSアプリが増えていくとしたらどのようなアプリが選ばれていくのか。僕は「いかにコミュニティを活用できるか」が今後のSNSを左右すると考えています。

近年のマーケティングはSNSバズや広告、プロモーションよりもコミュニティを活用して広がっていく手法が重視されています。

Z世代が商品を「いいな」と思うカギは、消費者によって制作されるコンテンツ「UGC(User Generated Content)」、すなわち口コミです。

Z世代は、特に友人からおすすめされたものを購入する傾向にあります。僕と私と株式会社ではこれを「友だちマーケティング」と呼んでいますが、企業からのどんなに上手な訴求よりも、家族や親友からの言葉のほうが購買意欲を高める効果が大きいのです。

しかし、SNSは使用していることが可視化されにくく、使用感を言葉で伝えるのも難しいため、コスメや食品のように使って良かったものをシェアするのが難しいプロダクトです。

そのため、BeRealで撮影した画像が他のSNSにも転用しやすかったり、コロナ禍で人気を集めたClubhouseが友だち招待制を導入したりしたように、いかに口コミやそのアプリに関する話題が共有されやすいシチュエーションを作るかが重要になるのではないでしょうか。

まずは質の高いコンテンツでアプリをダウンロードする理由を作り、熱狂的なファンを構築する。そして、それを利用した人がシェアしたくなる仕組みを作ることが、これからのSNSを作るカギになるのではないかと考えています。

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このnoteでは、Z世代経営者の僕がZ世代の最新事情や日常で感じたことを発信しています。経営者やZ世代の皆さんの役に立てる情報をお話したいと考えていますので、ぜひスキやコメントお願いいたします!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!

※このnoteは個人の見解です。

今瀧健登について

今瀧健登 / Imataki Kent(Twitter:@k_hanarida
僕と私と株式会社 代表取締役 
日経COMEMO キーオピニオンリーダー
一般社団法人Z世代 代表

1997年生まれ。SNSネイティブへのマーケティング・企画UXを専門とし、メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』、お酒とすごらくを掛け合わせた『ウェイウェイらんど!』などを企画。
Z世代代表として多数のメディアに出演し、"サウナ採用"や地方へのワーケーション制度など、ユニークな働き方を提案するZ世代のコメンテーター。

日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。

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