Z世代は「安くなったもの」を買わない?失われつつあるバーゲンセールの未来
こんな書き出しに、「たしかに…」とハッとしました。街はコロナ禍以前の活気を取り戻しましたが、年初めにセールで盛り上がる百貨店やショッピングモールを見かける機会は少なかったように感じます。
今年、松屋銀座は1月2日の営業を取りやめて24年ぶりの休業日としたそうです。目的自体は販売員の労働環境改善にあるものの、当日の売り上げ減はバーゲンセールではなく、正価(プロパー)販売の強化で補うとのこと。
こういった決断の背景には、年全体の売り上げに占めるセールの割合が減っていることが挙げられ、そこにはサステナビリティ(持続可能性)意識の高いZ世代を中心に「安いから買う」人が減りつつあることが関係しているとのことです。。
たしかに、僕も近年Z世代の消費傾向が、世の中の経済に影響し始めたと考えています。しかし、サステナビリティ意識のほかにも理由はあるのではないでしょうか。
今回は、これからの経済を担うZ世代の特徴や購買意識をもとに、なぜバーゲン市場が以前よりも縮小したのか、コスパを求めるはずのZ世代がなぜバーゲンを活用しないのかを考えてみました。
Z世代は、服やバッグをオンラインで購入する
まず考えられる要因として、Z世代の買い物圏の主流がオフラインからオンラインになったことが挙げられます。
近年は「Amazon」「楽天市場」「ZOZOTOWN」といった馴染みの深いショッピングサイトに加えて、「SHEIN」「GRL」などの激安通販サイトが普及してきました。
ある程度インターネットを使い慣れている方であれば、オンラインショッピングを一度は利用したことがあるかと思いますが、Z世代の特徴は服や推し活グッズなど、趣味のものをオンラインで購入していることにあります。
ショッピングサイト「Qoo10」を運営するeBay Japan合同会社が2023年に行った調査によると、ネットショッピングで購入している物ランキングにおいて、Y世代は「消耗品」「食品」など、日常的に消費する物を買っているのに対し、Z世代は「本・漫画」「コンテンツグッズ」など、趣味関連が上位に入りました。
バーゲンセールといえば、服やバッグなどの必需品ではないものを遠慮なく購入できるお得な機会ですが、Z世代はそれらをネットで購入するのがスタンダード。
全体的にオンラインで購入する人口が増えたことが、百貨店やショッピングモールのバーゲン市場に影響を与える1つの要因となったと考えています。
「前も値下げしていた」履歴が残るオンラインショッピング
では、オンラインサイト上のバーゲンセールはどうなのでしょうか? 百貨店やショッピングモールも、オンラインサイトでバーゲンをすれば盛り上がりは変わらないようにも思えます。
たしかに、オンラインのバーゲンセールは盛り上がる一方で、オフライン店舗に比べてそれ以外の時期の売り上げを大きく縮小させる要因となりやすいため、安易にバーゲンセールを行うのは危険だと、僕は考えています。
なぜなら、オンラインサイト上で行ったバーゲンセールは半永久的に記録が残り、どんな商品がいつ値下げされたのかがわかりやすいからです。
値下げ履歴が見える化されると、バーゲンセールに対する希少性が低くなります。
たとえば、街を歩いているときにフラッと入ったお店で「今日はバーゲンセールをやっているのでお得ですよ」と言われれば「いま買わなきゃ!」と衝動買いをしてしまう方は多いと思います。
ところが、それがオンラインの場合は「2ヶ月前にも同じセールをしていたな…」と、特別感を感じなくなるのです。
特に、デジタルネイティブは口コミを重視する傾向があるため、購入前にさまざまな方法で商品の情報を集めます。その過程でバーゲンの履歴を知った場合、より安くなる時期に購入したくなるのは明白でしょう。
安いものは嬉しいが、「安くなったもの」には疑り深いZ世代
また、Z世代は質が良く安いものに魅力を感じます。
僕と私と株式会社がZ世代を対象に、スタイルアリーナとともに行った「ファッションに関する意識調査」では、購入の決め手となるものの1位は「価格」で44.5%、次に「デザインの良さ」が44.0%と、この2点が圧倒的に多い結果となりました。
一方で、「安くなったもの」に惹かれることはあまりないと考えています。安ければ何でも魅力的に感じるわけではありませんし、場合によっては「値下げ」が買わない理由に繋がる場合もあります。
なぜなら、Z世代は「安さの透明性」を重要視するからです。
幼少期からインターネットに触れてきたZ世代は、インターネットに助けられる機会が多いながらも、その脆弱性や恐ろしさも理解しています。
たとえば先日、とある通販サイトにログインをした瞬間に、大量の割引クーポン配布の通知が来たことがありました。ここで真っ先に感じたのは「嬉しい」ではなく「何か裏があるのだろう」という疑念です。
端的に言えば疑り深いということなのですが、「明らかに安すぎるもの」「なぜ安いのかわからないもの」など、不審なほど消費者にメリットがある商品は、なぜ安くなっているのかを調べたり、他の人からの口コミが回ってくるまで買わない傾向があります。
安さの理由がもし、品質の悪さや配達システムの悪さだった場合、消費者が買うのを控える可能性が高いのは、言うまでもないでしょう。
また、Z世代においては「在庫処分セールを行っていること」もそのブランドの商品を買わない理由となります。
大量生産を行い、バーゲンセールによって在庫を減らすことを前提とした売り出し方を行っているブランドは、ニュースでも触れられている「サステナビリティ(持続可能性)」の観点で印象が良くないのです。
僕はアウトドアブランドの「THE NORTH FACE」が好きなのですが、思い返すと実店舗でバーゲンを行っているイメージがあまりありません。
バーゲンを行っていることが直接買わない理由になっているわけではありませんが、「頻繁にバーゲンをしているお店」はZ世代のブランドイメージに少なからず悪影響を与えると考えています。
特にZ世代は、「消費=応援」という意識も強い世代です。たとえ安かったとしても、社会や環境に悪影響を生み出してるところを応援するわけにはいきません。
これからのバーゲンセールはオンラインかつ、ブランドや通販サイトが正当な理由をもって行っているものに人が集まるのかもしれない。そんなことを考えています。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。他にもこんな記事を書いているので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!
※このnoteは個人の見解です。
今瀧健登について
1997年生まれ。SNSネイティブへのマーケティング・企画UXを専門とし、メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』、お酒とすごらくを掛け合わせた『ウェイウェイらんど!』などを企画。
Z世代代表として多数のメディアに出演し、"サウナ採用"や地方へのワーケーション制度など、ユニークな働き方を提案するZ世代のコメンテーター。
日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。
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