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中国での自動運転タクシーVS人間ドライバーの争い。テクノロジーの進化で雇用が消失するリアルを体感させる百度アポロの凄さ

中国ウオッチャーの皆さんはご存知かと思いますが、中国では自動運転車や無人バス、無人タクシーがどんどん投入されていて、多くの都市でけっこう見慣れた光景になってきました。

そして最近ではHuaweiの運転アシスト車が急増しています。友人でも使い始めた人がいますし、SNSや動画サイトではたくさんの動画がアップされています。

(↑中国の道路のカオスさは日本の整然とした感じとはけっこう違いますが、それでも問題なく運転できている。ちなみにボクもtiktokにあげたらすごいネガコメントいただきましたが。。運転アシストはTeslaなどでもおなじみと思いますが、Huaweiの優位性についてたくさんのネット民が議論しています。)

自動運転についても新しい話題がたくさんあり、タクシー業界どころか、ドライバーの仕事がなくなるんじゃないかと煽る記事もたくさん目にするようになってきています。面白かったのは武漢の無人タクシーの投稿。

武漢で試運転中のタクシー「百度アポロ」の性能が驚くべきものだとSNSに投稿されたもの。アポロはBaiduの自動運転のサービスプラットフォームで、1ヶ月でトータル300万件の乗車を受注。今では1台当たり平均で1日100件も乗車オーダーがあります。乗車の様子の動画などはYoutubeにもたくさんあるので、見てみてください。

ちなみに、2022年5月から武漢経済技術開発区でアポロの無人自動運転の実証実験を開始したんですが、わずか2年でこの状況。公開されているデータでは、武漢でのサービス提供エリアは3000平方km超え、770万人の人口カバー。毎日1000台の無人運転車が武漢の街を行き交っているとのこと。

この状況に、武漢市タクシー会社が社会に助けを求める一文を公開し、この内容がバズった後にネット民の議論が進みました↓


(実際に公開したもの、画像:Toutiaoから)

これをざっくり要約すると、
いわゆる”伝統のタクシー”が以前からdidiなどの配車アプリの影響で経営が厳しくなっているのに、アポロの実用性の向上がきました。アポロの価格的な競争力があまりにも高くて、このままではタクシー経営がどんどん厳しくなり、失業が増えると社会的な安定に影響があるでしょう
との内容です。

また、訴求としては、白タクの運転台数制限(今は配車アプリ経由の白タクも許可制となります)、不公平競争の疑いのある低運賃の制限、無人車の運営範囲の制限、タクシー企業の税金免除などを求めました。

↑北京ではじまったのは2020年の夏。もうこのときとは全く違う状況。。

ここ最近で一気に普及した最大のポイントは低コストと高効率。アポロタクシーの料金は従来のタクシーやネット配車の半額以下。例えば、同じ距離なら、通常のタクシーが20元なら無人運転車は7元。最初はみんな怖くて敬遠してましたが、これだけ実績を積むと、安い無人タクシーの方を選ぶ人が増えることは納得できますね。

誰が考えても、長期的にはこの流れは止まらないし、利用者にとってはテクノロジーが進化して便利になり、安くなり、選択肢が増える、といいことだらけ。一方で、タクシー会社や配車サービス会社は危機感が高まっています。

ネット民の議論も盛んで、その内容はタクシー会社やタクシードライバーの仕事に関することから、労働者の未来への議論に発展。アポロの性能や便利さを身近な生活でまざまざと体感し、この技術の進歩は伝統産業の没落を加速させている、”底辺労働者”の将来はどうなるのかという観点です。

無人運転車の高効率運用は配車ドライバー、宅配業者、デリバリースタッフなど労働者への大きな脅威だとの意見もたくさん。アポロの自動運転タクシーはただの通過点で、無人運転タクシーの運用が軌道に乗れば、次は無人デリバリーの時代。中国ではデリバリーの仕事の人がたくさんいますので、恐ろしいインパクトになると想定されます。

ただ、自動運転タクシーが普及したとしても、既存のドライバーサービスとの共存の形になると予想されてもいます。10年ほど前に始まったライドシェア普及の過程で配車アプリのシェア争いを実際に経験したボクからすれば、このとき市場は確かに価格戦で一時的に激動しましたが、シェアが安定してからはタクシーと配車サービスとは単純な競争関係ではなくもっと複雑だと感じています。少なくとも消費者としての使い分けがすでに定着しています。

例えば、空港や高鉄の駅など、比較的タクシーが行きやすい場所であればタクシーを利用しがち、出張など経理上処理しやすい出かけはタクシーを利用しがち、一人で比較的短距離の移動では手頃な「快車」サービスを、ビジネス利用なら高級車やビジネス車、利用客の多い場所と時間帯にはシェア車…… といった感じです。これは周りの友達などもほぼ同様。

実際にタクシーの運ちゃんと話しても、配車アプリはタクシーも呼べるから競争よりも協力関係に当たると聞きますね。アポロは北京ではまだ限られた地域でしか走ってないのですが、たとえ拡大したとしても、少なくとも現状では荷物の手伝いや、状況と場合による柔軟な対応はできない(ボクも含め、中国のタクシー利用者はいろいろ無理な要望出しがちw)。

さらに個人的には、北京のタクシーの運転手と話すことは北京でのタクシー利用の醍醐味の一つなので、移動手段とはいえ人と人のコミュニケーションはまだ需要があるかと思ってます(それすらGPTになる未来もありそうですが)。

日本でも自動運転に取り組む会社があり、特定のエリアでは自動運転を認めようといった動きもあるようですが、中国から大きく遅れをとっていますね。そもそもライドシェアすら解禁されていないというのは、中国で生活してるボクから見ると信じられないですが、上記のように利用者には当然メリットだらけだし、タクシー運転手にとっても良いことがあります。

↑今ようやくこれでは、北京の5年前より遅れているような

現在の中国のように、タクシー運転手の雇用どころかライドシェアドライバーすら置き換わるかもしれない未来が議論されている状況を見て、参考になることがあればなと思います。今後も中国のリアルな情報をnoteで発信していきますので、ぜひハートとフォローで応援をお願いします!

(参考資料)

https://m.gelonghui.com/p/431703


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中国情報局@北京オフィス
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