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3年後に必要なスキルとしての気候リテラシー:学習のための5つの情報源

気候変動、脱炭素、SDGs、カーボンニュートラル...。そもそもの概念・背景を学ぶための情報源とは? 

今回は日経COMEMOの企画「#3年後に必要なスキル はなんでしょうか? 日経電子版が意見募集します」に触発され、記事を書いてみたいと思います。

リスキリングという言葉を目にする機会が増えている方も多いと思いますが、3年後に必要なスキルというと、プログラミング、データサイエンスに代表されるようなデジタルスキル、或いは語学力等を想像する方が多いのではないでしょうか?

個人的には、こうしたIT・語学力等のスキルに関しては、その程度の差こそあれ、重要性は大前提として求められる社会になりつつあることを感じています。一方で、もう一つ大前提として重要性が高まると思われるスキルとして、今回は「気候リテラシー」を取り上げたいと思います。

「気候リテラシー」とは?
今回思いついた「気候リテラシー」という言葉を検索してみると、大学の研究テーマとして調査された論文をみつけることができました。そこでは以下のような文章で「気候リテラシー」について定義がされてます。

「気候とその変化及び気候と人間活動の相互作用について理解し,気候の変化に関わる意思決定をするために科学的・工学的知識と手法を利用し,課題を明確にし,根拠を明示して結論を導き,実行する能力」

桜美林大学坪田 幸政教授 『気候リテラシー育成のためのカリキュラム開発とその国際比較』より

1回読んだだけではすぐに理解することが難しいと(自分も含め)感じますが、一方で、最近では国内外で頻繁に報道されている熱波、豪雨、洪水、干ばつ、山火事等、異常気象についてのニュースが報道、或いは自分ごととして感じる機会が増えているように思います。

こうした気候変動を自分ごととして感じ始めた時、自分が所属している企業や団体の一員のビジネスパーソンとして、そして個人として、気候変動やその解決策を講ずる際のリテラシーの必要性がとても高まるのではないかと思われます。

二酸化炭素排出量を減らし、可視化するためのテクノロジー、そして効率的なエネルギー活用、関連する商品開発や新規事業開発の機会として、クライメートテックと呼ばれる新興企業から新しい解決策のアイディアや技術を学ぶ機会も増えることと思います。

私自身もちょうど1年前からこうしたテーマに強く興味を持ち始め、まさに自分も学びの途上なのですが、最初にこのテーマに興味を持った際には「どこから手をつけていいか分からない」というのが正直な気持ちでした。気候科学の難解さに頭を悩まされ、そしてカバーする領域があらゆる分野に広がること、そして新しい技術、国際情勢、データが毎月のように大きく変化する中で、全体像を捉えることの難しさを今でも感じています。時に地球温暖化の懐疑論・否定論に目にすることもあり、学習意欲が削がれることがあったのも事実です。

そこで、私が過去約1年の間に体験した「気候リテラシー」の学習を振り返りながら、5つの学習のための情報源を共有させていただきます。

気候リテラシースキル習得のための5つの情報源

【1】書籍

全体像を理解しようと思った際、特に学び始めに参照した資料としては書籍が多かったです。学術的なもの、参照目的の資料のような書籍もあるのですが、できるだけストーリー仕立てで分かりやすく、ビジュアル化しやすいものを好んで読んでみました。未邦訳の書籍もあるのですが印象的だったものは以下の三冊です。特に3番目の書籍はNHKスペシャル『脱炭素革命』等のプロデューサーを担当された方による書籍で、NHKオンデマンドや関連YouTube等で映像番組を見ながら読むことで、具体的に国内外の最前線で起きていることを学ぶことができました。

  1. 地球の未来のため僕が決断したこと』(ビル・ゲイツ著)2021/8/18

  2. グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす』(森川潤著)2021/9/17

  3. 脱炭素革命への挑戦 世界の潮流と日本の課題』(堅達 京子著)2021/9/7

【2】ドキュメンタリー映画、TEDトーク等の視聴

気候変動問題のような一見複雑で分かりにくいと思えるテーマについて学ぶ際、映像、ビジュアルによるコンテンツが豊富にあることでとても身近に感じることができました。Netflix等での配信サービスで視聴可能な映画、専門家によるTEDトーク等も参考になると思えるものが数多くあります。

▶以下の動画は『NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦』からのものです。関連動画・コンテンツは特設サイト「地球のミライ」で閲覧が可能です。

TEDトークやNetflixの動画は無尽蔵にあり自分の興味のあるもの、有益と思えるものを見つけるのは難しいかもしれませんが、友人、同僚、興味ある人からの紹介してもらったり、興味深いと思ったコンテンツを発信する等して、学習を深める機会にしてみてはいかがでしょうか。

TEDトーク(気候変動カテゴリー)

Netflixでは地球環境やサステナビリティをテーマにした映画「ドント・ルック・アップ」や優れたドキュメンタリー作品を視聴することができます。

Netflix 「ひとつの世界、無限の驚き」

【3】日々のニュースをチェックする際に気候リテラシーのレンズを通して眺めてみる

日経COMEMOの記事をご覧になる方ということでビジネスパーソン、そして日経新聞を購読の方も多いと思います。最近思いついて実践している記事の読み方を共有させてください。例えばですが以下のようなキーワードを登録してキーワード登録をしておくことでスマートフォンからでも簡単に該当記事を横串を指す形でチェックすることができます。

その上で自分なりに1週間毎の国内外のニュースをまとめてニュースレターとして配信するという試みを今年の春から取り組んでいます。改めて1週間を振り返り、俯瞰的に注目ニュースを振り返ることで体系的に理解を深める機会になっていることを感じます。

気候変動・クライメートテックに関してのニュースレター
・Climate Curation(日本語): https://socialcompany.substack.com/
・Japan Climate Curation(英語): https://bit.ly/JapanClimateCuration

【4】学習プログラム、関連イベント、コミュニティへの参加

一人で学習していると時に煮詰まったり、考えが独りよがりになってしまうこともあるかもしれません。そんな時には勉強会、オンラインやオフラインで開催されている関連イベントに出かけてみると新しい発見があることと思います。
私の場合は英語圏でのオンライン講座である(Terra.do)やアクセラレーションプログラム(On Deck Climate Tech)等に参加することで同じ目的を持つ人とともに学習する機会を得ることができました。また英語圏においては「Work on Climate」と呼ばれる1万人規模のSlackコミュニティ、或いは「MCJ - My Climate Journey」という名前でポッドキャストのリスナーを中心に運営されている2,000人以上が参加するSlackコミュニティ「MCJ Collective」等があり、情報交換やネットワークが日常的に行われています。いずれ国内でもこうしたコミュニティや学習の機会が生まれてくることと思いますが、「共に学ぶ」機会を見つける努力はとても大切、と感じます。

【5】クイズ、検定等を受けてみる

学習を目に見える形の資格や検定の合格として具体的な目標を掲げたいという方もいらっしゃることと思います。そんな方は東京商工会議所が2006年から実施している『eco検定(環境社会検定試験)®』を受験してみてはいかがでしょうか?

eco検定は、専門家に限らず、学生から社会人まで幅広い方が受験していて、これまでに約54万人が受験し、32万人を超える検定試験合格者が誕生しているそうです[2022年3月時点]。複雑・多様化する環境問題を幅広く体系的に身に付く「環境教育の入門編」として、公式テキストを読み込む形で全体像の理解を目指す機会になりそうです。私も8月に受験予定です:)。

その他、以前の記事でもご紹介した英フィナンシャル・タイムズが今年の4月にリリースした、楽しみながら気候変動を学ぶための無料オンラインゲーム、「クライメート・ゲーム(Climate Game)」を試してみてはいかがでしょうか? Google 翻訳やDeepLの全ページ翻訳機能を使いながらアクセスすることで日本語環境でも腕試しをすることができます。
なお、今後ニュースメディアでも以下のようなクイズ形式のコンテンツを充実させていく可能性もあると思われます。

以上、いかがでしたでしょうか?猛暑日や異常気象を体感し、報道でも日々気候変動に関する事象を目にする今の季節だからこそ、改めて気候変動問題に想いをはせる、そんなきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

【番外編】2021年夏以降気候変動・脱炭素・クライメートテックについてCOMEMO記事として公開した記事のリスト(2022年7月20日時点で17本)


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・Climate Curation(日本語): https://socialcompany.substack.com/
・Japan Climate Curation(英語): https://bit.ly/JapanClimateCuration

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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