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気候変動問題のオンラインスクール「Terra.do」を受講して学んだ5つのこと

最近は「気候変動」、或いは「脱炭素」という言葉を日々のニュースや会話で目にしたり、耳にする機会が増えたと感じる人も多いのではないでしょうか。少なくとも私にとっては昨年の夏以降、とても大きなテーマとして意識して調べたり、書いたり、話したりする機会が増えたキーワードとなっています。

そんな気候変動問題に特化した「Terra.do(テラ・ドゥ)」という、ブートキャンプ型のオンラインスクールに今年の1月から合計12週間の講座に参加し、先日無事終了することができました。とても学ぶことが多く、是非共有したいと思い、今回は「Terra.do」の講座を受講して学んだ5つのことをコンパクトにお伝えしたいと思います(簡単なオンライン開催の共有会を5/21に予定しています。詳細は文末をご覧ください。)


 Terra.do(テラ・ドゥ)とは

Terra.do(テラ・ドゥ)とは、2020年春にスタートした、気候変動を解決するためのオンラインスクール、そしてそのためのプラットフォームです。コアとなる講座は12週間のオンライン講座「Climate Change: Learning for Action」で、2、3ヶ月おきに継続開講されてます。現在はそれ以外にも水素、気候変動に対応した建物、気候変動に強い農業、気候変動に対応した投資を目指すベンチャー投資家向けのコースなどが続々と新規開講しています。Terra.doの目標は1億人の人々を気候変動対策に参加させること、そしてTerra.doの「.do」には行動する、アクションに移すという意味が込められているそうです。

Terra.doウェブサイトより(Google自動翻訳された画面)
新規開講が続くテーマごとの講座(Google自動翻訳された画面)

コアとなる講座「Climate Change: Learning for Action」には、世界中から様々なバックグラウンドを持つ約100人程度が選抜され、20人程度の少人数のチーム毎に別れ、毎週課題を読み、90分ののグループディスカッションに参加することが求められています。エッセイ、グループでのリサーチ等の課題に取り組んだり、ゲストレクチャー、テーマごとの補足的なオンライン講座等も週に複数回開催されたりして、任意参加することが可能です。

専用のSlackコミュニティ内では質問、コメントができ、受講者同志の交流も、これまでの受講修了者含む合計1,400人以上のコミュニティの中でネットワーキングをすることも可能です。テーマごとのチャンネルの中で気になったニュースを共有したり、求人情報が頻繁に共有されるなど、次のアクションにつながるサポートのしくみが充実しています。Terra.doの目標として今後1億人の気候変動に携わる人材を育成することを掲げていることもあり、こうした手厚いキャリア、起業の支援に力を入れていることにも納得です。


講座を受講して学んだ5つのこと

12週間の講座を通じて様々な気付き、学びがあったのですが、記憶が新鮮なうちに最も印象に残っている5つの点について記しておきたいと思います。

【1】気候変動に関する体系的な全体像の概観を学ぶことができたこと

2020年秋に日本でも国として「2050年脱炭素」の宣言がされ、以降国内でも関連するニュースが一気に増えつつあると感じている人は多いのではないでしょいうか?とはいえ、気候科学の根本的な理解がない中で、あらゆる事象、業界を超えたテーマを断片的に眺めていても十分に理解できてなかったことが今回の私の受講のきっかけでした。

以下の20のテーマについて独自に作成された資料を読んでいく形で講座が進められていきます。それぞれ50ページ程度の資料で、毎週2つずつ読んでいく構成です。12週間の講座を通じて受けたことで「専門家」になったわけでは全くありません。ただ、少なくとも大まかな全体像、重要なデータ、議論の論点、深く知りたい時に参照すべき情報源、ウェブサイト、専門家等の情報を知ることができ、以前よりは理解が深めることができたことは大きな収穫でした。

クラス1:気候科学1-基本
クラス2:気候科学2-気候科学の要素
クラス3:気候科学3-排出量、資源、循環
クラス4:気候変動の影響-パート1
クラス5:気候変動の影響-パート2
クラス6:気候変動と開発
クラス7:気候変動の経済学
クラス8:地球規模の気候政治と正義
クラス9:緩和策、En-ROADS
クラス10:エネルギーと気候変動1
クラス11:オプションのディープダイブ
クラス12:エネルギーと気候変動2
クラス13:食品と農業
クラス14:炭素除去
クラス15:カーボンオフセット
クラス16:気候ファイナンス1
クラス17:気候ファイナンス2
クラス18:気候適応と回復力
クラス19:企業の持続可能性
クラス20:気候変動コミ​​ュニケーション

Terra.doウェブサイトより

【2】それぞれの知見を持つ「気候変動」初心者同志の学びのコミュニティの重要さ〜コーホート・ベース・モデルの威力

こうした12週間の学習を1人で本を読んだり自習スタイルのみのオンライン講座で継続できたかというと、自分にとってはそれは難しかったと感じます。同じテーマに興味を強く持ち、それぞれが世界中から参加しているプロフェッショナルでありながらも気候変動に関しては「初心者」であることはとても前提条件でした。共通のバックグラウンドがあることで、安心・安全して学びを進めることができた点、とても感謝しています。

以前に「オンライン学習の新しい潮流としてのコーホート・ベース・モデルのオンライン講座」という記事でご紹介したことがありますが、期間限定で、コミットメントを持って参加している同級生同志のコミュニティの可能性を強く感じるきっかけにもなりました。就職する、起業する、社内で新しい取り組みを始める等、明確な目的を持っている仲間同志で、かつ金銭的、時間的な投資の元を取るぞ!という意識があるからかもしれません。そして、そもそも気候変動問題に自分なりの形で行動していきたいという思いがあるからこそ、実現している素晴らしい循環モデルであると感じました。

【3】アクションにつなげることの大切さ

講座の一番最初の課題は以下のテーマで3,000文字程度でエッセイを書く、というものでした。壮大なテーマではありますが、改めて自分が18年後にありたい姿を想像し、そこに至るまでに具体的に何をしたいかを考える貴重な機会でした。

2040年、私たちは気候変動を解決した
2040年、世界は気候変動の危機をほぼ解決し、あなたはTerra.doのオンラインコミュニティーに招待され、その実現に貢献した自分の役割について話すことになったと想像してください。2022年から2040年にかけてのあなたと世界の軌跡を、指示に従ってブログ記事または短いビデオにまとめてください。

Terra.doウェブサイトより

この時に思いついたのが「海外で起きている気候変動分野の動向、トレンド、解決策、成功事例等を、日本語で発行するニュースレターを通じて広く伝えたい。」そして「Terra.doの日本版のようなコミュニティ作りに貢献したい」という自分なりのアクション・プランでした。
そんな経緯もあり、日本語でのニュースレター、「Climate Curation」は講座受講中の4月1日にスタートすることができました。小さな一歩ではありますが、12週間の講座を通じてこうしたアクションプランをより具体的に文字化したり、同級生からのフィードバックを得るように促されるようなサポートのしくみがあることはとても励みになりました。講座後半にはメンターとの面談の機会も得ることができます。様々な分野の専門家から個別のアドバイスや励ましが得られることもとても手厚い取り組みと感じます。

【4】グローバルで拡がっている新しいツール・習慣

12週間もの期間を共に同級生と過ごす中で新しいツール等の発見がいくつかありました。一番頻繁に目にした新しいツールがCalendlyというスケジュール調整サービスです。
Calendly
Slackでのやり取りを通じて「ちょっと30分程度話してみませんか?」ということがよくありました。そんな時、今まであれば「どちらのタイムゾーンですか?」「候補日をいくつか挙げてください」「Googlemeet、Zoom等、どれを使いますか?どちらが発行しますか」という質問とともに、何回かのやり取りが必要な場面があったと思います。Calendlyがあれば事前に自分の都合のよい日程候補を登録したページのリンクを相手に送付するだけでワンクリックで日程調整が完了します。ちょっとした会話から翌日、翌週にはロンドン、ムンバイ、テキサス等に在住の同級生と会話ができるダイナミックな瞬間が何度もあり、とても革命的、と感じました。
intros
introsというツールを利用することで1対1の30分のミーティングをアレンジしてくれるというサービスが秀逸でした。属性(Linkedin情報)、勤務年数、タイムゾーン、キャリアプラン等の事前に登録した情報に基づいて、毎週、隔週等、自分が希望した頻度でランダムに自分の属性に合いそうなコミュニティ内の人とマッチングが自動的にAIを利用して行われます。もちろんTerraの講座受講経験者である、という共通の属性があればこそです。ただ、サービスのおかげでほぼ毎週、世界中の誰かと、受講中の講座について、将来のキャリアやビジョンについて、講座終了後もカジュアルに話すことができます。
⭐様々な便利ツール(summari、DeepL、Google翻訳、notion
その他にも長文の英文記事の要約をまとめてくれる「summari」、精度の高い翻訳ツール「DeepL」、レイアウトをそのままにしてページそのままを翻訳する際に利用するGoogle翻訳(右クリックして「日本語に翻訳」)、そして情報の格納・共有用に利用する日本でも話題の「notion」等、新しい便利なツールをより頻繁に利用するきっかけとなりました。

【5】海外において日本の存在感がとても限定的であること

このことは今に始まったことではなく今までも言わていることとは思います。気候変動に関して国内外で長年に渡って研究、活動している専門家の方が多くいらっしゃることを十分に認識した上で驚いたことは、現在1,400名を数えるTerra受講経験者の中に日本人参加者がほぼ数人しか存在しないことです。参加者の多くは北米、欧州、インド含むアジア地域のビジネスパーソンで、ソフトウェアエンジニアの人が3〜4割という印象です。

私が参加したコーホート(同期)の中では私は唯一の日本人参加者でした。
理由としては①言語の問題、②時差の問題(主要なイベントのスタート時刻は深夜が多い)、③一般的な認知度、また職業選択の候補として気候変動分野に対する注目が高くないのでは?、④ Terra.do の国内での知名度があまり(ほとんど)ないこと、などが挙げられると思います。

国内のメディアとしては、昨年7月の日本経済新聞のコラムにおいてBEENEXTのファウンダー・CEOである佐藤輝英氏がご自身のTerra.do 受講体験を踏まえコラムで紹介されている記事がありますが、その他はあまりTerraの国内での認知度は高くないようです。

英語圏での気候変動関連の報道量が増え、Terra.do コミュニティに参加する中で、英語圏での日本の存在感があまりにないのではないか、ということを日に日に強く感じるようになりました。

そんな経緯もあり、4月末の講座終了後、5月2日に日本国内での気候変動を巡る動向を英語で配信するニュースレターをLinkedin 上でスタートすることを思うに至りました。初めてからまだ2回しか配信してないのですが既に多くの方に登録いただき(海外の方が7割以上)、改めて英語圏における日本発の情報が求められているのでは、という気がしています。

メールニュースレターという本当に小さな一歩ではありますが、今後も継続して自分なりの学びを共有していけたら、と思ってます。

Japan Climate Curation ニュースレター(Linkedin)

「Terra.do(テラ・ドゥ)」受講体験共有会 [5/21(土)9:00-10:00] ご案内

Terra.doでは講座を終了した一人ひとりに、自分の学びを30分程度の時間でオンラインのセミナー形式で共有することを推奨しています。そこで本当に手作りの小さなイベントですがご興味を持っていただいた方を対象に1時間程の受講体験共有会を開催したいと思います。よろしければ以下のリンクからお申し込みください(締切 5/20 24:00)。

▶5月21日(土)9:00-10:00  *無料 オンライン開催(Zoom)

以下はTerra.do 共同創業者でCEOのアンシュマン・バプナ(Anshuman Bapna)氏によるTEDxのプレゼンテーション動画です。バプナ氏はインド工科大学とスタンフォード大学出身のシリアルアントレプレナーで、静かな語り口ながらも、深刻さが増す気候変動問題に取り組む1億人の気候変動に携わる人材を育成することに対する熱いメッセージが語られています(YouTubeの自動翻訳機能を使うことで日本語字幕付きで視聴いただけます)。

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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