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続・リブラとマクロ経済~リブラと金利~

リブラと金利
リブラへの私見について、連投させて頂きます。以下の投稿でエコノミストとしての自分の問題意識は一通り示したつもりではありますが、敢えて言えばもう1つ、指摘したい論点がございます。それは「金利」についてです。現時点で明らかになっている情報を元にするとリブラには金利が付かないそうです。しかし、今のように既存通貨への金利がゼロかほぼマイナスの局面ならばそれで良いでしょうが、既存通貨に金利が付き始めたらどうするのでしょうか?今度はリブラを選ばず既存通貨に資金が流出するのではないでしょうか?しつこいようですがリブラリザーブの運用先はレガシーなアセット(例えば米国債)なので、選ばれるかどうかはレガシーなアセットの金利との比較考量によるはずです。「FBのリブラだから特別」という狂信的な層もいる雰囲気ですが、それはビットコインの時とあまり変わらない雰囲気がします。

リブラとマクロ経済~「派手な議論」より「正しい理解」を~
https://comemo.nikkei.com/n/n67dc785a3c50

GAFAは銀行になりたいのか?
もっとも決済機能として儲からなくてもそこで得られる取引データこそが狙いなのだという見方はあります。しかし、それは既存権力が最も警戒するところであり、それゆえに非常に厳格な規制を受ける可能性が高いと思います。トランプ大統領は銀行免許を要求する発言をしています。仮に銀行業となるとデータの活用に応じた高収益事業はそもそも制限されるでしょう。というよりも、わざわざ超が付くほど厳格化傾向にある規制を強いられる銀行業にGAFAの一角が入りたいと思っているのでしょうか。皮肉な話ですがGAFAによる銀行部門の代替可能性が論じられるのは銀行業(に伴う規制)の埒外ゆえ、裁量があるからというのが実態なのではないでしょうか?
 なお、以下の記事ではリブラが実現したらという未来のシミュレーションを描いています。記事の趣旨としては面白いと思いますし、マスに理解を浸透させるにあたってはこのアプローチしかないというのも理解できます。


もしもリブラが実現したら 銀行のリストラを加速? シミュレーション・もしもリブラが実現したら(中)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48328620X00C19A8I00000/?fbclid=IwAR3RDBuI2jQoEcdd2yxDx2Dw70d_ZgaqPnQwefuLe8j4JKOmEpqY0LU1vto

リブラプロジェクトの稼ぐ「金利」とは? 

その上でどうしても気になった箇所として「集まったお金に金利を払わないのに、それを国債や銀行口座で運用して、金利収入をリブラ協会のメンバー企業で山分けする。規制に縛られながら苦労して預金者と貸出先をさがして、やっと利ざやを稼いでいる身からすると、うらやましい限りだ」という銀行部門の所見があります。これは金融市場の参加者であれば多くが違和感を覚えたのではないでしょうか。「金利収入をリブラ協会のメンバー企業で山分けする」とありますが、そもそもリブラリザーブが稼ぎ出すことの予定される主要国の安全資産の金利は概ね消滅しており、日欧に至っては水没が常態化(マイナス化)しています。メンバー企業で山分けするだけの金利収入をどうやって稼ぐのか?という基本的な論点が置き去りにされてはいないでしょうか。厳密には、新興国にはまだ金利が残っています。しかし、ステーブルコイン(?というらしい)を目指すリブラの裏付けが高金利の新興国通貨建て資産というのはやはり不味いでしょう。もちろん、将来的に主要国にも金利が戻ってくるかもしれません。しかし、上述したように、その時は「金利の付かないリブラ」がそもそも選ばれるのでしょうか・・・という至極当然の疑問が浮上するはずです。こうした金利差を軸とする資産の取捨選択は債券や為替を中心とする金融市場の参加者にとっては当たり前のもののはずですが、何故かリブラ界隈では見てみぬふり(?)をされているような印象を受けます。まだ筆者も勉強中ではありますが、少なからぬ疑問を覚える箇所であります。

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