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『メタバース的』試論 〜3つのキーワードと"Reality is not only"

お疲れさまです。メタバースクリエイターズ若宮です。

突然ですが、メタバースクリエイターズは本日、シードラウンドの資金調達を発表いたしました!!!!!

今回の資金でさらにメタバースの可能性を広げていくとともに、日本のクリエイターの活躍機会をグローバルに増やす取り組みを加速していきます!

というわけで、今日はメタバースの未来に向け、『メタバース的』というテーマで書いてみたいと思います!チェケラ☆


糸井さんの『インターネット的』

『メタバース的』というテーマには元ネタがあります。

2001年に糸井重里さんが書かれた「インターネット的」という本です。

2001年というと、当時はまだインターネットが普及する前夜。そのタイミングで今の社会やインターネットが僕らの生活をどう変えたかを的確に表していて、「予言の書」とも言われる名著なので、読まれた方も多いかもしれません。


『インターネット的』にはインターネットの特徴として、3つのキーワード「リンク」「シェア」「フラット」が挙げられています。

まず「リンク」。
インターネットと言えばハイパーリンク。一方向的なつながりではなく、一つのページから複数のリンクの糸が出て、どのページが主か分からないような複雑な繋がり方の網=「ネット」です。この「無限につながりあうリンク」が1つ目の特徴です。

次に「シェア」。「おすそわけ」という古くからの概念でも説明されていますが、インターネットでは誰もが情報を分け合うことを楽しんでいます。今ではどんなアプリにもシェアボタンがありますが、「情報をわけあうシェア」によって、人と人、情報と情報がさらに繋がっていきます。

そして3つめは「フラット」。インターネット、特に匿名的なコミュニケーションでは現実世界の上下関係がある程度リセットされ、フラットになります。また、インターネットを通じて広い世界と繋がれることでopenなフラットさを獲得できます。インターネット以前では、たとえば狭いムラに生まれるとその中の固定的なヒエラルキーの中に生きるしかありませんでしたが、インターネットではそれを超えて、様々な関係を結ぶことができます。「上下の関係がこわれるフラット」が3つ目の特徴です。


糸井さんのキーワードはインターネットのライフスタイルや情報空間の特徴を、異なるアスペクトから的確に表現しています。なによりすごいのが「リンク」「シェア」「フラット」というシンプルさ。糸井さんのようにとはいきませんが僕なりに『インターネット的』の向こうを張って、『メタバース的』を考えてみます。


僕の考える『メタバース的』のキーワードは、①スポーン、②クリエイト、③パラレル

今回、僕なりに『メタバース的』のキーワードを3つ考えてみました。ただし、糸井さんの「リンク」「シェア」「フラット」に比べるとちょっと口幅ったいというかシンプルさにかけるのでまだ完全にしっくりきているわけないです…

なのでちょっとまた後で変わっていくかもしれませんが、いったん3つ、書いてみますね。

僕の考えた『メタバース的』の3つのキーワードは「スポーン」「クリエイト」「プルーラル」です。


①スポーン

メタバースの特徴を表す一つ目のキーワードとして、「スポーンspawn」を挙げたいと思います。これはメタバースで遊んでいる人には馴染みの概念ですが、まだあまり馴染みがない方も多いかもしれません。でも、これからみんながメタバースを使うようになれば、一般的になっていく気がしています。

「スポーン」は日本語に訳すのが難しいのですが、あえて訳すと「出現する」という感じでしょうか。物理世界で「出現する」というのを経験したことがある方はあまりいないと思いますが、メタバース空間では「出現する」ことができるんです。

アバターでワールド内に突然現れたり、瞬時に元の場所に戻ったりできます(「リスポーン」と言います)。「ポータル」という異世界の扉のようなものもあり、異世界転生のように別のワールドに一瞬で移動することもできます。それは「どこでもドア」や「ワープ」のよう。未来の夢の体験が、メタバースではもう実現しているわけです。

インターネット時代の「リンク」が情報のつながりであったのに対し、メタバースでは実際にその場所に「出現する」ことでより濃くつながれる。これによって一緒に体験することが可能になります。

SNSでもコミュニケーションはできますが、メタバースでのコミュニケーションのそれとのちがいは、「一緒に集まる」という感覚でしょう。(その意味では「ジョインJoin」もキーワードとしていいかもしれません)

例えば、友達と一緒にライブを見に行ったり、一緒にお避けを飲んだり。その思い出は「あの時隣にいた〇〇さん」という感じに正に「そこにいた」という感覚になります。

この「スポーン」という概念は、今までのインターネットやSNSにはなかったものです。メタバースに「出現」してみんなで一か所に集まり、一緒に体験する。これこそがメタバース的な特徴の一つではと思います。


②クリエイト

2つ目のキーワードは「クリエイトcreate」です。本当は別の言葉を使いたかったのですが、シンプルさを優先していったん「クリエイト」にしてみました。

「creatre」という言葉はそもそもは神にしか使えない言葉で、「無から有を生み出す」、「世界そのものを創造する」という意味です。


creatorとは「創造主」。全知全能の神にのみ許されていた「天地創造」をメタバースではすることができます。世界そのものも、自分自身も「創り出す」ことができる。そしてそれを体験し、その中で生きることができるのです。有史以来の人間の「創造」性ここに極まれり、ではないでしょうか。


ちなみに、最初に考えていたキーワードは「アルターAltar」というものです。「アルター」とは「変わる」「改変する」という意味です。メタバース空間はデジタルデータでできているので、どんどん変化させることができます。僕は元々建築をしていましたが、物理的ハードでは「変化する建築」というのは相当難しいですが、メタバースでは、同じワールドが訪問するたびに変わっていたり、ユーザーとのインタラクションで瞬時に空間全体が変化したりできます。

また、「アルター・エゴ」という言葉があります。哲学や芸能の文脈でも使われますが「別の自分」になる、ということです。メタバースではアバターで好きな自分になり、それを変えていくこともできます。

メタバースから物理世界に戻ると、「見た目を変えられなくて不便だな」とか、「人間はたまたま与えられた身体の属性になぜこんなに縛られているんだろう」と思うことがあります。だって誰ひとり、自分の身体を主体的に選んだ人はいないのです。メタバースに比べると物理世界って、変化しづらくて固定的でずいぶん不便です。

メタバースでは世界も自分も創り出せるし、変化もできる。この特徴を表して「クリエイト」を2つ目のキーワードとしたいと思います。


③パラレル

3つ目のキーワードは「パラレルparall」。最初は複数性とか多元性を表す「プルーラルprural」というのを置いていたのですが、さらにシンプルな言葉にしてみました。

メタバースの世界は「多元宇宙」や「マルチバース」と言われることもありますが、一つの世界が複数存在できるという特徴があるんです。

例えば、千人が集まるイベントがあったとします。物理世界なら一か所に千人が集まるわけですが、メタバースではその世界が複数コピーされ(正確にはオリジナルとコピーという序列はなく、どれも存在論的に同等なわけですが)、同時に複数存在できます。この分岐は「インスタンス」や「サーバ」という概念でよばれますが、いわば「並行世界」ができて、人々が分散して入ることができます。

これは物理世界とは全く違う空間概念ですよね。物理世界では「唯一性」があり、例えば不動産の一等地なんかがそうですが、それは基本的に一つしか無く、誰かが専有することで価値が高まります。でも、メタバースでは同じ場所が複数存在できてしまう。

アバターについても「パラレル」が言えます。アバターには二次創作的な文化がありますが、一つのアバターをみんなが自分のアイデンティティとして「改変(アルター)」して、分岐し多様なものが生まれていきます。

とにかく、こうした「並行性」「多元性」こそメタバースの特徴だと考えていて、NFTなど唯一性を担保する仕組みもあるわけですが、基本的には多元性を活かす方が『メタバース的』な体験になると思っています。

そしてこれは「モノポリー(占有)」を旨としてきた、従来の資本主義的価値観や商習慣を破壊します。(ちなみに、僕がメタバースの不動産的発想があんまりうまくいかないとおもっているのはここに理由があります)

旧来の価値観のままではメタバースの可能性を捉えきれない。価値の転換が必要です。だからこそ、「パラレル」や「プルーラル」という多元的な概念をメタバース的な3つ目のキーワードとして挙げたいと思います。

「Reality is not only」

糸井さんの『インターネット的』の「リンク」「シェア」「フラット」に対抗して、『メタバース的』のキーワードとして「スポーン」「クリエイト」「パラレル」を提案してみました。まだ糸井さんのシンプルさにはまだまだ及ばないのでもう少し考え続けていきたいですが、こうした概念は将来的にはメタバースの普及とともに一般的になってくるかもしれません。

また糸井さんは3つのキーワードを象徴する『インターネット的』の本質を「Only is not lonely」というこれまたとんでもなくシンプルな言葉で表現しています。それに倣って、メタバースの本質を表す言葉として

Reality is not only

というのを考えてみました。

メタバース時代になると、現実が一つだけという感覚が揺らいでくる、という意味です。いろんな場所に出現したり(スポーン)、空間や自分自身を創り出し(クリエイト)変えていくことができるようになるからです。そしてその世界は並行的・多元的に存在し、どれもが「現実」です。(パラレル)


「バーチャル」という言葉も、日本語では「仮想」と訳されるので現実に劣後する印象がありますが、本来は「実質的な」という意味合いが強く「現実」としての強度が変わらない、という意味です。

「アバター」というのも元々サンスクリット語の「アヴァターラ」から来ていて、「化身」や「権化」(肉体の現れ)という意味です。僕たちが物理世界で「人間」として生きているのも、一つの「アバター」でしかない。物理世界に存在していることと、メタバース世界のアバターでいることは、存在論的にはあまり変わらないのかもしれません。


メタバースは物理世界と優劣のない、リアリティの一つの形になる
のではないでしょうか。

とくにZ世代やアルファ世代のように、最初からアバターでのコミュニケーションに慣れ親しんだいわば「メタバース・ネイティブ」の世代にとってはリアリティの感覚はすでに変わっているでしょう。「リアリティ」とは物質性ではなく、人間関係やインタラクションによって生まれるものだからです。(その端緒が2.5次元アイドルやVTuberの人気にすでに表れています)。


自由自在に「スポーン」でき、変幻自在に「クリエイト」できる、「パラレル」な「リアリティ」。Reality is not Onlyな『メタバース的』世界の可能性を、メタバースクリエイターズはその最前線で切り開いていきたいと思います。

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