「長期インターンシップ」化する令和就活、1年生講義の現場から('24法政ライフキャリア論)
法政キャリアデザイン学部の大教室講義では、4月から豪華ゲストさんたちが「おもしろい話を受け身で聞いてるだけのお客さん」にはしない、巻き込みまくる講義を続けていただいている。隣で見れる僕はVIP席を通り越してステージ側で贅沢すぎ。
今の日本、とく地方高校生にとって「お金かけて東京に出るべきか問題」があり、ネガティブ化=地元残留傾向が進んでいるが、出る価値は十分ある、と僕は思っている。①東京都心キャンパスほど刺激の多い講義が成立しやすく、②刺激を受けた後、実地で試す場もより多くあるから。もちろん地方でも同じ工夫は可能で、実際がんばっている大学も多い。ただ東京は、高コストを(はるかに)上回る高いパフォーマンスが出やすく、つまりコスパが平均的に高い。
講義終盤となった先日は、趣向をガラリと変え、就活生むけゲームを「ジョブトラ」さんにお願い ↓ 講義終了後、希望者むけ長期インターンシップなど中心とした就活の話をしていただいた。以下まとめよう。
令和就活の基軸:インターンシップとは
令和就活、とくにコロナ明けは明確に「長期インターンシップ」が就活の基軸になっていきそうだ。人手不足の中、「新卒初任給を大幅に上げたい、ただし優秀な学生限定で」というニーズが高まっているから。パナソニックも富士通も新卒に月6−7万円の加算=ボーナス込みで100万超え、さらに配属先=成長機会も変わるわけで、差は大きい。
では、優秀さをどう見抜くのか? そのオーディション会場として、仕事の疑似体験ができるインターンシップが登場する。これは世界的な傾向で、米ノースイースタン大(ボストン)の学長も6月のインタビューで言っている。
日本の就活では、現状、就活直結のインターンシップは3年生の夏休み+冬休み、数日間の短期のものが普及している。1日だけの単なる広報イベントも多かったが、25年卒の就活(=学部4年生)から「5日間以上、その半分以上を就業体験、フィードバックなどを行う」ものだけをインターンシップと呼ぶ、と文科厚労経産の3省合意により決まっている。参加学生の情報は選考に利用できる点もクリアになった。
なおリクルート就職みらい研究所による23年6月での26卒(=今3年、調査時点では2年)対象の調査では、この基準を満たしたプログラムに参加したのは1割程度。このタイミングではスタートアップ系が中心だろう。2年の夏休み→春休み、と参加率は高くなってゆく。なお法政キャリアデザインだと参加率はもっと高い印象(これも東京の有利の1つ、都心市ヶ谷のキャンパスから30分以内圏内で多くの機会があるから)
使い方
基本は、
となる。世間では、後者のものだけが認知されていることも多い。逆にいえば、1−2年生からスタートアップ系に参加している、という流れを知らない人も多い。
こちらの長期インターンシップの1つのメリットは、甘やかされない環境である(ことがおおい)ので、失敗経験を積める、とジョブトラ主催社の鶴野さんは言う。
スタートアップでは、そのまま正社員として残る場合も見聞きする。とくに「あえて大企業でなくスタートアップ」という選択をする場合は、少なくともインターンで参加しておくべきだろう。やや特殊さのある業界(スポーツとか芸能とか)もそう。
その応用編として、
「サードドア」を探れ
公募されていなければ、自分から営業して提案して、道を作ってしまえ、という話だ。土井英司さんが20代向けにすすめる15冊の1つ:
実例は大量にあり、ハイスペ会社員の王、藤井清孝さんがマッキンゼーの第一号新卒社員として採用されたのもこれ経由だ。とはいえ普通の道ではなく、難易度はあるが、少なくとも「明確にやりたいことがある学生」なら探る価値がある。
この会社のこの商品で、こんなアイデアがある、みたいな企画を持ち込んでみてもいい。そこまで具体化されてなくても、「私は将来・・・を目指しており、そのために今御社で・・・。なお私は・・・が得意なのでこの点を活かして貢献できることは何でもやるので」等々、ざっくりした提案を持ち込んでみてもいい。会社の代表電話からでも、入口はなにかしら開かれているものだ。
前のnoteで書いたのも、応募しろ(ファーストドア)、なければ提案してみろ(サードドア)、という共通する話だ:
ブラックインターンには注意
詳しくは各自検索してくださいな。たとえば、というイメージを1つあげてみると、稚拙なSNSメッセージなどで突撃営業してくるスパム勢:
学生インターンもまあまあいるのでは?という気もしている。
普通に時給が払われてるのならまだしもだが、ろくな教育もせずに、成果報酬だけで釣って、あとは任せた、と放り出されると、こういうことしそうな印象だ。(正社員がやってるなら会社としてダメすぎ)(なおリクルートのサービスの営業は、基本、本体ではなく専用の営業会社がほとんどだと思う、学生起業とかでもありそう)
こうしたブラックインターンは、学生がゼロから見極めるのはほぼ不可能、と割り切った方がいい。
そこで、2−3社を行ってみる、というのが現実的対策になると思う。2社いけば比較ができる。より客観的に比べるには3社あればたいていなんとかなる。これは読書も同じで、1冊の本には偏りがあるが、同じテーマで3冊よめば、それぞれの特徴が俯瞰できるだろう。
体育会などは?
今、有名大の体育会でも、「◯◯大でラグビーやってました!!」だけで就活できる時代ではない。本当に行きたい会社の採用リンク型のインターンイベントには最優先で参加している:
有名大の有名体育会、というブランドは、そのインターンシップ選考を通るためには使える可能性は高い。(シナリオ次第)
そもそも、実業団リーグだと、ラグビーなどプロ契約も多いが、兼業で仕事の合間に練習してる両立組は、ラグビー、アメフト、などで多いわけだ。バスケ日本代表監督として女子で東京五輪銀メダル、男子でもパリ出場させたトム・ホーバスも、トヨタのバスケ選手のトライアウト通過後に交渉して(ということはプロ契約なのに)、日中は水道橋の海外マーケティング部で仕事してから、夜に練習していた。かれらが毎日やってることだから、数日間くらい、できるでしょう。
ただ、「1−2年生からスタートアップで長期インターンシップ」という参加形態はしずらい。ぼんやりとスポーツしてるだけでは勝てない時代だが、たとえば上記のような体育会向けの情報を自分なりに分析し、勉強会でも組みながら、体育会ならではの経験を積んでいけばいい。(この点は地方大学でも一部共通するはず)
と書きながら思うのだが、今の体育会系学生はすごい進化している。もちろん差は大きいが、成長してる層はすごい成長できている。スポーツとはそういう場だ。
結論
日本人に多いのは、マイナスのカバー=たとえば自分の欠点弱点を気にしすぎる、大企業のブランド名を過剰にほしがる(「外見的なマイナス」が少ないのが大企業)、ということ。
本来必要なのは、自分自身のフィット感。大企業も、その仕事内容のリアルと、自分自身の強み、個性とがフィットしたときに、はじめて良い働き場となる。
それを実体験として試せるインターンシップが、人手不足=採用困難化する日本社会で、拡がるのは当然のこと。
「学業が疎かに〜」という声もあるだろうが、そこは器用な今の若者、なんとかするでしょう。
それらを含めての、「東京の大学の価値」だと思う。
参考ニュース
トップ画像は汐留、都心への風も留めてるらしい汐留風留ビル😁
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7/15追記:日経電子版「オピニオン」COMEMO注目の投稿に選出いただきましたー たぶん16朝まで1日限定