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今年こそは新型コロナとうまく付き合っていけるのか?(再)社会へのゆがみへの提言

 2020年初頭から流行が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、その流行も収束することなく4年目を迎えてしまいました。欧米諸国はすでにウィズコロナあるいはアフターコロナのような体制となり、COVID-19前と大きくかわらない日常に戻っているような印象です。最も厳しいゼロコロナ政策をとっていた中国でさえもその政策を一気に撤廃し、まさに現在民族大移動が起こり始めているところです。中国、ゼロコロナ政策終了 入境時隔離を撤廃: 日本経済新聞 (nikkei.com)
 
ところで日本はというと、年末からようやく本格的な感染症法の見直し議論が進みつつあるようですが、年末年始休暇が終り1週間が経過したところですが発熱外来の状況はどのようなのでしょうか?12月24日に投稿した時点では逼迫した状況ではありませんでした。同時流行は本当に発熱外来逼迫をもたらすのか?|水野泰孝 Global Healthcare Clinic (nikkei.com)正月3が日明けの1月4日は確かに問い合わせや受診者、その中でCOVID-19と診断した患者さんはそこそこだったと感じましたが、以降は問い合わせも多くはなく、夕方以降はかなり余裕がありました。報道などでは行列をなして受診する映像ばかりが流れていますが、地域によって全く状況は異なっているようです。以前取材を受けたときにも言われたのですが、映像的には混雑しているところが必要なようで、すいているところは好まれないようです。
 ただ最近の報道ではむしろ死者数の増加がトピックとなっているようです。国内コロナ死者累計6万人 1カ月余りで1万人増: 日本経済新聞 (nikkei.com) 死者数の増加についてですが、報道を鵜呑みにすると「重症化リスクのある人がかかると急変して亡くなるのでは?」と思われる方もおられるかもしれません。しかしオミクロン株に置き換わってから「重症者が減少している」のは明確であり、重症COVID-19で死亡している事例は以前より少ないはずです。すなわち「重症ではない方々の死亡」が増加していることになります。「高齢者や持病のある方がリスクが高い」と以前より注意喚起が促されてきましたが、リスクの高い方の多くはワクチン接種を済まされている方が多い印象です。少なくとも私の外来に歩いてこられるような高齢者や持病のある方で入院を必要とした方は一人もいませんし、重症化を回避するための治療薬を必要とした方(処方希望された方)も半数程度です。もちろん自宅療養中は私が毎日健康観察を行っていますが、全員の方が何の問題もなく回復されています(最高齢では94歳)。すなわち「高齢者=入院=重症化」とは限らないということです。但しあくまで「歩いて受診することができるリスクのある方」という意味であり、実際に高齢者で亡くなる方の背景は全く異なります。
 最近の死亡例の増加は「介護施設に入所している」「訪問診療を受けている」など、一人では歩くことや日常生活がままならない高齢者に多くみられるようです。私も非常勤ではありますが東北地方の訪問診療施設に勤務しており、ご自宅でお見取りをする事例の中には直近でCOVID-19に罹患した方が少なくありません。脳梗塞などの持病で寝たきりの方や末期がんで緩和ケアを受けているような方がCOVID-19に罹患してしまうと、ある程度安定していた病状が一気に悪くなり、そのまま最期を迎えるという場合が多いようです。特に介護施設では入所者の多くは認知症を患っており、感染対策の励行はほぼ不可能ですし、職員の方と常に接触している環境ですので1人でも陽性者がであればあっという間に拡がってしまいます。先日私が経験した事例では、昼食後に急に座ることができなくなった入所者がいるというので往診に行ったところ、発熱はなく呼びかけに対する反応も悪かったことから脳梗塞などを疑い救急要請をして総合病院に搬送したのですが、結果はCOVID-19でした。施設内でCOVID-19の発生もなく発熱や呼吸器症状もなかったので、私自身もマスクしかしておらず素手で診察をしてしまったので不意を突かれました。幸いにも処置後に手洗いなど標準予防策を徹底していたことで感染はしませんでしたが、介護施設ではこのようなことは日常茶飯事なのだと痛感しました。すなわち同じ高齢者でも「日常生活を不自由なく送れる方」と「介護が必要な方」ではCOVID-19感染後の状況が全く異なります。
 「発熱外来=逼迫」「高齢者=重症化=死亡増加」というような「すべてがそのようになっている」イメージを与えてしまう報道振りは今年もかわらない印象ですし、何よりも現場を見ていない机上だけで解説をする有識者にも大いに問題を感じます。注意喚起はもちろん必要ではありますが、「恐怖を抱かせるようなマイノリティ」だけをクローズアップするのではなく「安心感を与えるマジョリティ」も情報提供すべきであると思うのです。今年はCOVID-19とよりうまく付き合えるような社会を構築できるように、先月発刊させていただいた「新型コロナとの付き合い方」を是非ご一読いただければ幸いです。

#日経COMEMO #NIKKEI


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