何も考えずぼーっと愚かでいてくれればいいの
一度きりの定額減税を4割も評価している人がいるのにも驚くが、子ども子育て支援金制度に期待している人が4割近くいることの方がもっと不可解。
消費活性化にならない定額減税、出生増にならない子育て支援のどこに評価、期待できる点があるのだろう?
こういう世論調査を見ると今更ながら「女王の教室」の天海祐希の台詞がしみじみ来る。
何も、これは政府やメディアの言う事をことごとく疑って「これは陰謀だ!」なんて言う人になれという話ではない。
陰謀論にハマる人もまた「自分が信じたい事だけを真実として認識してしまう」人だから。
何度も言うが、「事実と真実は違う」。
事実とは客観的に発生した事象そのものであり、誰が見ても同じものであるが、真実というのは人の数だけある。人にはひとそれぞれの真実があるが、それは決して事実と一致しない。
同じ事実を見ても、人間はそれぞれ認識が違うので、その認識を通した事実もまた違うものに見えてしまう。
これは仏教でいう「唯識論」であるが、この世の中は、すべて「一人一人の認識によってできている」のであり、逆にいえば、ある特定の個人が認識していないものはその人にとってはこの世にないものと同義である。
カエサルのいう「人は自分の見たいものしか見ない」というもの。
同じ絵を見ても人によって認識が違うのは、下記の絵を若い女性の後ろ姿か老婆かに見え方が違うのと一緒。
しかし、残念ながら、「見たいものしか見ない」方が個人にとっては快適だったりするわけで、気の合う仲間といつも一緒にいた方が楽しいわけで。
そうやって多分、人類(人類だけじゃないかもだが)は最初から「それぞれの見たいものだけを見て、不快なものは間違いだ、敵だ、排除すべきと歴史を刻んできている」。
敵を作った方が仲間を増やしやすいという面も人間にはあるので、歴史上人間は絶えず敵を作り出してきて、戦争を繰り返してきた。敵がいなければ、無理やりでも敵ではないものの中から敵を作り上げるのである。
こういうことは、一般の人たちの日常生活でもよくあることだし(戦争こそしないが)、特に政治の選挙戦とか見れば、いつでも誰かを非難しているばかりの人はいるし、メディアも同じことをしている。
特に、メディアは「何を言うか」は最初から決まっていて、その「自分たちが言いたいことをどう世論調査という数字を使って取り繕うか?」という流れで記事を書く。
だから、世論調査も各社によって数字が違う。
たとえば、時事通信のこれなんかだと、定額減税に対して65.3%が否定的となっているが、これは質問の仕方が「定額減税は物価高対策になるか?」という質問だからである。
冒頭のフジテレビのは、「定額減税を評価するか?」という質問だから「まあ、一回限りとはいえ減税なのだから評価するか」という人も出てくる。
聞き方次第なのである。
で、これは人間に対する好悪の印象もそうやって認識が作られる。
Aさんという人がいて、Aさんと付き合うことで利益を得ているBさんからすれば、「Aさんはいい人」になるわけだが、Aさんと競合関係にあるCさんからすれば「Aさんは気に食わない奴」になる。Aさんという人間は同じでも、BさんとCさんではAさんの認識(見えている部分)が違うからそうなる。
たとえば、Aさんを知らない人Dさんが、BさんからAさんの話を聞く場合とCさんからAさんの話を聞く場合とではAさんの印象も変わる。Cさんから聞いた場合、会ってもいないのに「Aさんは嫌な奴だ」という認識か刷り込まれる。
だからこそ、情報は一方向からではなく、多方向から仕入れるのが重要になる。誰かのフィルターを通したものは、「誰かの唯識による誰かにとってだけの真実」を刷り込まれただけであり、事実ではない場合が多い。
ずっとCさんの話を真に受けて「Aさん嫌な奴」と思っていたのに、何かの偶然でAさんと直接対面して話をしたら「Aさん、めちゃいい奴じゃん」ということだってあり得る。
最近では信用度が落ちているテレビ・新聞などのメディアだが、メディアも各社の唯識に従って「自分だけの真実」を伝えようとしていることは肝に銘じた方がいい。そして、それは彼ら自身が「嘘を言っている」つもりはなく「彼らの信じた真実(事実ではない)を真剣に伝えようとしている」のがまた悲劇なのである。
戦前のメディアがそういう状態になっていたわけだが、つい最近も同じ過ちを繰り返している(当人は過ちだと思ってないだろうけど)。
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