自宅の1階に酒屋を誘致したら、電通を辞めることになった。
今日、40歳になった。
そして1ヶ月後、17年間勤めた電通を退社することになった。
きっかけは3年前、自宅を建てる際に
「独身で3階建ては持て余すから、1階はテナントとして貸し出そう。でもせっかくだから、自分から入ってもらいたいお店にアプローチしよう」
と、「ある会社」に企画書を送ったことだ。
企画書の送付先は「株式会社 いまでや」
当時、首都圏で4店舗の酒屋を運営していた会社だ。
縁もゆかりもない会社だったが、運良く構想は実現した。
企画書送付から1年後、自宅の1階は「いまでや 清澄白河」となった。
その時の詳しい経緯は、当時の note を読んでもらいたい。
あれから2年。
自宅が竣工して2年。
お店がオープンして2年。
40歳になるタイミングで僕は、新卒から17年間勤めた電通を退社することにした。
次のキャリアは「株式会社 いまでや」
今日はその経緯を少しだけ。
■本当の自分を後押しするお酒
「退職することにしました。」
周囲にそう伝えても、あまり驚かれなかった。
「お前はいつか辞めると思っていたよ」
「次はコンサル?独立?」
リアクションは大抵そんな感じ。
ただ、次のキャリアを伝えると大いに驚かれた。
「え?」
「酒屋?」
「いまでやって何?」
驚かせた、と言うより「混乱させた」の方が正しいかもしれない。
なぜわざわざ電通を辞めて酒屋なのか。
家業でもないのに。
ただの大家さんだったのに。
その理由を簡潔に説明するのは、正直難しい。
難しいので、最近はこう答えている。
「お酒の勢いです」
大抵笑われるが、これがあながち冗談でもない。
思えば、いまでやの代表アドレスに企画書を送りつけた時も酔っていたし、いまでやの社長と転職の握手を交わした時も酔っていた。
お酒の勢いで行動して、お酒の勢いで決断した。
そして翌日になると
「さて、どうしよう…」
と、ドキドキしていた。
ただ、そのドキドキは後悔ではない。
「本当はそうしたかったから」だと思う。
「お酒の勢い」という言葉は、言い訳のように使われることが多いが、研究では自己の拡張とも言われている。
つまり、お酒を飲んで「いつもと違う自分」が現れることはない。
お酒の勢いで現れるのは「本当の自分」という研究結果だ。
この研究が正しいとすれば、僕は大家さんとして関わりはじめたこの会社に「本当は入りたかった」のかもしれない。
■わからないものは、おもしろい
「いまでや」は不思議な会社だ。
まず、ロゴが不思議だ。
酒屋のロゴとは到底思えない。
社名も不思議だ。
酒屋なのに「酒店」とか「酒販」入ってない。
経営も不思議だ。
実は僕の自宅1階へ出店を決めた裏で、大手デベロッパーからの誘いを断っていたらしい。どんな経営判断だ。
しかしそれでも創業から62年。
売上は69億。
約100名の社員が所属している。
この「なんだかよくわからない感じ」に僕は惹かれた。
その感覚は17年前と似ている。
電通という会社の「なんだかよくわからない感じ」に、惹かれて入社したのだから。
僕はたぶん、わからないものが好きなんだと思う。
「わからない」を「おもしろい」に脳内で変換して、おもしろいを起点に行動してしまうのだと思う(お酒が入ると特に)。
だからそんな、おもしろい(わからない)会社による「小島(テナントの大家さん)を役員として迎え入れる」というわからない(おもしろい)誘いに、乗らない手はなかった。
■迷ったらおもしろい方へ
正直、お酒の世界はむずかしい。
若者のお酒離れは進むし、「飲めるけど飲まない」という人も増えてきた。
お酒を飲むことが「当たり前」じゃなくなる世界で、酒屋の役割はなんだろう。いまでやの役割はなんだろう。
今はまだわからない。
はじめての領域。
はじめての経営。
これからたくさん、迷うこともあると思う。
だけど、17年勤めた電通にはこんな言葉がある。
WE CHOOSE EXCITEMENT
迷ったら、面白い方へ。
迷ってなくても、その方がいい。
これから起こることを、おもしろがる準備だけはできている。
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