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本気で顧客満足を高めたいのなら、取り組むべきはこの3つの環境整備

顧客ニーズが多様化し、企業間競争の激化する中で、新規顧客獲得の難易度は日々上がっています。その結果、既存のお客さまとの関係性を強化する重要性は高まっています

関係性の強化には、弛まぬ努力による価値提供量の向上が求められます。一例ですが、保険会社各社では、顧客満足を高めるために付加価値のための追加サービスの充実に取り組んでいるようです。

しかしどんなに努力を重ねても、実際にお客さまに価値を感じてもらえているのかはわかりませんし、企業側は実態を把握しづらいものです。

そこで顧客満足度指数やネットプロモータースコアなど、顧客評価を点数化して管理する企業が増えています。現状を可視化して目標を持つことは活動の強化につながりますが、この評価指標を直接的に従業員の評価や報酬と結びつけることで問題が発生することもあります。数値向上にのみ関心が集中して、顧客価値を下げる本末転倒な結果が生まれるのです。

それでは、どうすれば良いのでしょうか。

最も悩ましいのは、お客さまに対して何をすれば満足してもらえるのかが簡単にはわからないことです。責任者が計画を立案して、それに従い全員が動けば成果が上がるのならば、単に命令をすれば良いだけなのかもしれませんが、現実はそう簡単ではありません。

多様なお客さまに向き合いながら、沢山の挑戦を、みんなで協力して継続しなければなりません。

そこでの問いは『どうやって従業員に点数を上げさせられるか?』ではなく『どんな環境を作れば、全員がやる気を継続しながら自発的に動きたくなるだろう?』であるべきです。

① 評価制度と価値提供の矛盾をなくす

まず、従業員の評価報酬制度が顧客への価値提供の邪魔をしないことが求められます。

2017年、ウェルズ・ファーゴのブランドは地に堕ちた。
・リテールバンキングのお客様の一部に、依頼されていない、場合によってはお客様自身が知らない口座を開設し、信頼を損なった
・お客さまの同意なしに開設された可能性が否定できない約13万口座に対し、320万ドル以上の請求額や手数料を返金した

一因は「攻め」の営業文化に転換し、それと同時に社員にコアバリューに反する行動を促すインセンティブ制度を取り入れたことだ。独立取締役がまとめた報告書は複数の原因を挙げつつ、根本原因を次のように指摘している。
・地域銀行であったウェルズ・ファーゴの営業文化と業績管理システムが歪められ、厳しい営業管理が行われるようになった
・この結果、社員に顧客の望まない、不要なプロダクトを販売し、ときには顧客が承認していない口座を開くような圧力がかかるようになった

問題を解決するため、ウェルズ・ファーゴは経営陣を交代させ、インセンティブと報酬制度を改革した。

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あらゆる組織には存在目的があり、共感して参画した社員がいます。そして存在目的の先には必ずお客さまがいます。お客さまに喜んでもらいたい気持ちに蓋をしてはいけません。

制度設計において、自分たちが何者であるかを明確にした上で「評価項目」が「組織目的」と合致していることに細心の注意を払うべきです。

② 実験と学習を推進する文化を確立する

お客さまにとって何が価値なのかは不確実性の塊です。成熟した市場において顕在化された課題はすでに解かれています。言葉にされるのは取るに足らないことが多く、要求は常に変化し複雑なものばかりで、本当に何が欲しいかをお客さま自身も気づいていないことがままあります。

そこで優れた価値を提供する最善の方法は、実験すること、試してみることです。結果的にたくさんの失敗を経験し、ボツになるアイデアはたくさん出てきます。それも業務の一環です。

効率だけを重んじる組織文化ではミスは許されません。継続的に実験と学習を繰り返すためには、これまで以上に自由裁量のある文化を醸成しなければなりません。

■ 自由裁量のある組織の特徴

  • 失敗を責めず、挑戦と学習が奨励されている

  • 問題があれば自ら解決することが促されている

  • 各自の仕事のやり方に自由度と決定権が与えられている

  • 情報が十分に提供され、好奇心は刺激され、実験が後押しされている

  • 実験や学びのための時間と資源が提供されている

  • チーム内で協力して知識を増やし、スキルを磨き、責任領域を広げる自由がある

③ 顧客価値に直結する行動目標の設定する

もう一つ、優れた価値を提供する上で重要な観点は、各自が自分たちのお客さまをよく知っているかです。お客さまはなぜ自社と関わっていて、何に困っていて、どんな状況にいるのかといったことをひしひしと感じられる程度まで肌感を持つことです。

そのために最適な方法はお客さまに会うことです。そうすれば、どうすればもっと喜んでもらえるのか思いつけるはずです。

目標設定は「どれくらいお客さまを理解する機会を持てるか?」や「喜んでもらうためのアイデアをどれだけ出せるか?」といった行動やアイデアの数にすれば、評価結果の数値を目標にするよりも、全員の活動の方向性を一致させられます。

上記3つの環境整備には労力も時間も要しますが、変化する環境に対応し、さらなる事業の発展を目指す上では欠かすことのできない必須の活動になるはずです。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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