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【ご意見募集】ゲーム対戦競技「eスポーツ」は日本に根付くか

佐藤 慎(日本経済新聞社 編集局 企業報道部 シニア・エディター)
世界的に広がるゲーム対戦競技「eスポーツ」が、日本のゲーム業界でも主力になりつつあります。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)などゲーム関連企業はもちろん、eスポーツ向けの高性能パソコンを製造するパソコンメーカーや専用機器を作る周辺機器メーカー、ネット接続需要を取り込みたい通信事業者など、eスポーツを支える産業に属する企業も、盛り上がりを捉えようと様々な施策を打ち出しています。日本最大のゲーム展示会である「東京ゲームショウ」では、2017年・18年と2年連続でeスポーツがメーンテーマに取り上げられました。世界各地で開催される大きな競技会では賞金総額が20億円を超える例も。数億円の賞金を獲得するプロ選手も現れています。2024年のパリ五輪での正式採用も取り沙汰されています。
一方で、「スポーツは生身を介するものだ」というスポーツ界からの反発は少なくありません。特に日本では「非現実」のゲームでの対戦を「スポーツ」と定義することに抵抗を感じる向きが多いようです。また同じゲーム業界でも任天堂は、高額の賞金がかかることの多いeスポーツから距離を置いています。ゲームには依存症や中毒性といったマイナスイメージが付きまとうことを問題視する人もいます。
そこで、COMEMOのみなさまに、日本でeスポーツは定着するかどうかについて、ご意見をうかがいます。回答は以下の3つからお選びいただき、選んだ理由と併せてお教え頂きたく存じます。
1. eスポーツがスポーツの1ジャンルとして定着する
2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画す
3. eスポーツは日本では普及せず、マイナーな存在であり続ける

ゲームに全く興味をお持ちでない方も、例えば「オリンピックの正式競技としてゲームの対戦が世界に中継される」という状況を想像して頂いて、それについてコメントを頂ければとおもいます。様々な角度からのご意見をお待ちしております。

コメント 
■齋藤貴弘(弁護士 ニューポート法律事務所)
より日常的な遊びとしての普及のためには風営法によるゲーム機規制が、プロ競技としての普及のためには賞金に関する景表法の規制がネックになる。いずれにせよ産業として大きくしていくためには法整備が重要になってくると思います。
ご参考までに関連ポストです。
https://comemo.io/entries/11378?fbclid=IwAR3QRg5WZTeNUpsg4YseiVYSW1pj0yZtvXgKyZHqqCe-fHL-jDGnrXGOFOE

■たったか(事務)
2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画すに一票。
囲碁・将棋・チェスみたく協会が発足している現在、プロとアマチュアに分かれて浸透していくと思います。
競技に使用するパソコンはそこまで性能を要求するものでないし、競技人口は確実に増えます。
特に日本では自分も子供の頃からファミコン等で遊んでいる。
社会人になると、パソコンが必須技能になると共に、購入してゲームをするのは当たり前です。

■近藤 卓(Onefunc CEO)
2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画す

この質問は「定着の意味」「いつ?」という定義や期間によると思います。が大雑把に考えると②だと思います。

大きな流れとして、ゲームを売りたい企業側と市場のマッチングがある限りは、なんども定着化にトライすると思います。その定着が「いつか」というだけです。
もっと根底のところでは「人が求めている」限りは、何度もトライすると思います。柔道や剣道よりも人口が多いはずです。

ただし、現代の日本のいわゆるスポーツとは違い「芸能人」的なノリになる可能性があります。 eスポーツの塾みたいなものや、eスポーツの部活みたいなものは、出てこない。(東京は別。あり得るし、すでに専門学校もある)
なので、定着の意味は「誰もが楽しめるスポーツ」ではなく「一部だけ成り立つスポーツ」だと思います。
そして、親はそれをよくは思わない。何故なら芸能人、Youtuberと同じだからです。これは悪いという意味ではなく、そう考えるのがある意味で現実的です。
そして、それを踏まえると「定着の意味」も変わります。

eスポーツは一部では定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画して、ブラウン管の中(表現が古いw)の世界止まりだと思います。 野球やサッカーのように定着はしない。

ちなみに、ARのゲームは室内できるものが殆どだし、高齢者向けにも良いと思います。 要は賞金のあるいわゆる大きな大会のeスポーツとゲーム自体も切り分けて考える必要があると思います。
ねんりんピックが富山県で開催されていましたが、「ねんりんピック eスポーツ版」 なども企画すると面白いですね。

本来の定着という意味では、eスポーツは大きな賞金のある大会があるから成り立つわけでもない。そういう話もあるとは思います。

■毅 林(無職)
【1】となる可能性があると思います。条件としては、他国、特に米国での状況によると思います。先日起きた射殺事件のようなことが今後も起きると、eスポーツとしてのゲームは終息方向に向かうかもしれません。しかし、大会の運営がしっかりと行われ、定着していけば、その動きは、広がっていく事になるでしょう。
 選択肢では、「スポーツ」と「リアルスポーツ」という言葉が使われています。「リアルスポーツ」とは、体を動かすことを主体としたものという意味なのか、ルールが決まっていてそれによって勝敗が決まるもの、オリンピックの正式競技になるようなもの、という意味なのか、その定義が不明確です。
 eスポーツについて、気になっていることがあります。eスポーツが、コンピュータとネットワークを使った複雑なシステムを利用する事から、それらの性能や、セキュリティ、ソフトウェアバグ、といった、システムにつきものの問題の影響を受けるという事です。例えば、手許スイッチの反応速度には、ネットワーク構成によって㎳オーダーでの差異が生じると思いますが、それらがきちんと計測され公正が保たれるのかが問題視されるかもしれません。ゲーム中に外部からの不正な侵入を受け、いずれかのチームを不利にしようとすることがあるかもしれません。eスポーツが、他のスポーツで行われるゲームと同様に、公正な条件の下で行われるためには、技術的な規格やそれらを精査するための検証手続きがきちんと作られないと、成立しなくなるのではないでしょうか。

■比良沼紀伊(フリーライター)
2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画す

私はゲームをよくプレイし、愛着のある者です。
今回、2番を選びましたのは、まず第一に「日本に於いてゲームは子供の遊びである」という誤解に基づく偏見が抜けるのは容易ではないこと、第二に「プロスポーツと競技スポーツは同義ではない」という処を誤解している方がいらっしゃるということ、最後に「ゲームソフトハウスへの基準作りが容易ではない」という処でしょうか。
競技人口は着実に増えていますし若手からは当たり前のジャンルである、故にPCメーカーやゲームメーカーを中心に様々な業種業態からのスポンサーが付くことは容易に想像がつきます。金銭面では専業プロも多数輩出するでしょう。
しかし、「リアルスポーツ=最終的にオリンピック」と考えると、ゲームメーカーへの公平な基準作りや国際的なスポーツ団体の発足が足枷になると、私は推察しています。
ただ、逆に考えると、以上の問題が解決したならば、あるいは1になるのかもしれません。現在、業界団体が様々な働きかけを行っていると、聞き及んでいますので、ゲーム好きの私としては頑張って欲しいところです。
かつて「遊び」の延長と考えられていたスケートボードも、今や立派なオリンピック競技になりました。この例からも分かるとおり、今後の業界団体の動き如何によっては、eスポーツが一般に定着するかもしれませんね。

■正弥 清村(清村歯科医院院長)
3.普及しない
私は、eスポーツに興味もないし観戦したこともないので、eスポーツの現実の姿が全くわからないのですが、ニュースで見る限り、現状のeスポーツは武闘・戦闘系のものと思われます。このことが普及しない決定的原因(子供の健全な精神育成を阻害する懸念)であり、金銭的には、高額賞金のスポンサーになるメリットがない(株主が許さない)、あるいは、スポンサーになることによるデメリットが大きい(社会的批判を浴びる危険性)、と企業が判断しているもの、と考えます。そして、そもそもeスポーツは、身体運動が主体と考えられる従来型スポーツの範疇には含まれない、とする考えを打破することが一番の困難だと思われます。さらには、普及しているスポーツが持つ単純な故の面白さがないことも致命的。

■岡田好史(専修大学法学部教授)
「2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画す」のではないでしょうか。
「eスポーツ」というジャンルとしては、賞金の点が景表法を改正することで、日本でも国内プロが誕生することで定着していくのではないかと思います。
しかし、いわゆる「スポーツ」のジャンルに含まれるかは疑問です。
テレビゲームに対する偏見がいまだ根強くあるのも理由の一つです。また、スポーツというからには、ある程度誰もが共通して行えるルールが必要になりますが、ハードやタイトルに依存するeスポーツは、「スポーツ」には含まれないでしょう。VRによる体感シミュレーションのようなものでも出てくれば別かもしれませんが。

そもそも、eスポーツで流行のジャンル、利用端末の環境などが、日本と世界では異なります。また、eスポーツは、基本的にテレビゲームなので、タイトルを世界中に普及できる会社のゲームに偏るおそれがあります。日本発のテレビゲームで世界中で愛されているタイトルは多数ありますが、eスポーツで使われているタイトルはほとんどないことからすると、日本独自のeスポーツとして定着することはあっても、世界のeスポーツとはかなり違うものになる可能性はあるのではないかと思っています。

■西山律子(ライフスタイリスト)
「2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画す」コチラに1票です。
あえてこの日本社会で考えてみたのですが、現状では競技人口は増えていくでしょうが、まだ社会環境として
ゲーム=スポーツと言う概念が定着するのには時間がかかるかなと思います。
「アニメやゲームは子供のもの」「ゲームのし過ぎは悪い」と染み込んでいる
昭和のある一定の年代の方が退く、最新のテクノロジーの抵抗が減る、この辺りが進むと変わるかなと思います。
国や自治体がやる気になってポジティブな広報活動をすると多少は変わると思いますが。
個人的にはこういうものを通して、次の時代へ進んでいくとは思っているので楽しみにしているし、
世界に遅れてほしくないなとも思う。(流行って欲しい)
実際アニメにしてもゲームにしても気が付いたところは、取り入れていますからね。

■TAKE C(PR)
3. eスポーツは日本では普及せず、マイナーな存在であり続ける

賞金が出る出ない、つまりプロスポーツとして成立するか否かという議論ばかりが目につきます。
他のスポーツ競技がそうであるように、アマチュア、つまり趣味レベルで普及と認知が広まることがまず前提です。
また競技を行うために必要な設備が他のスポーツと比較してもコストが掛かり過ぎ。
ボールひとつと広い空き地さえあれば誰でも始められることでサッカーが世界的競技になったことを考えれば、eスポーツは一部のお金持ちだけが参加できるマイナー競技のままだと思います。

■Daisuke Inoue(広報)
「2. eスポーツは定着するが、あくまでリアルスポーツとは一線を画す」に一票です。eスポーツは定着していくと思います。競技人口は増えるでしょうし、経済規模も大きくなる可能性の方が高いと思います。ただ、リアルスポーツと同一視されるかというと・・・。競技として確立している囲碁や将棋などがマインドスポーツと呼ばれることがありますよね。でも、いわゆる運動・身体競技とは一線を画してますし、それで不都合・不満が出たというのは聞いたことがありません(私が浅学なだけかもしれませんが)。さらに、今eスポーツに参戦しているプレイヤーの皆さんが、スポーツと呼ばれる未来を思い描いているのかな?と。ゲームセンターに端を発したカルチャーである限り、みんながみんなスポーツと呼ばれてしっくりくるとは思えないのです。ただし!VRが発達してくると、話はまた変わってくるのかなと。バーチャルの世界で行う身体競技が可能になったとき、スポーツとeスポーツが一線を超えて一つになるのではないでしょうか。

■吟遊詩人(世捨て人)
【2】日本人は、パチンコなどの遊興娯楽にとても熱狂するタイプの国民なので、一定数の支持は得らると思うから。
但し、これがスポーツなのかと問われれば、到底認知できるシロモノではないので、よほどの発展がなければ、さきざきアンダーグランドなジャンルの一部となると考えます。既存のスポーツの世界で、鍛錬を積まれてる方たちに、ただの大ゲーム大会を自分たちと同じスポーツだと宣われては、甚だ失礼とも感じます。それから、えっと、。。。。
どんどん主題と離れて行きそうなので、やめますねw

■公明 沢(平社員)
いまだに「ゲーム=ファミコン=子供のオモチャ」という概念を抱いている昭和生まれのおじいさんおばあさんらが家庭や企業やメディアの上層に居座っている限り、eスポーツは日本では普及せずマイナーな存在のままになると思う。

一方でゲームのユーザーにしても、洋ゲーを嫌悪しあるいはPCすらもっていないスマホ世代が跋扈しているのを鑑みれば(もっとも最近はゲーミングPCが売れていると言うが、価格の高いそれを買うのは中高年では?)、日本でe-sportsをやろうとする人はPCゲーのシェアが大きい海外に比べるとかなり少ないはずなので、若い層からe-sports普及を後押しするマインドも薄い感じがしてならない。

そもそも車やエステやランチに比べて、ソシャゲに高いお金を払うことは「勿体ない」と批判される。これもまた「たかがゲームに」といったゲーム全般に対する偏見と、凝り固まった負のイメージが作用しているためではないか。
そんな国で、「みんなでわいわいがやがやと楽しみ、勝ったり負けたりを味わいながらストレスを解消して日常生活にまた戻るためのゲームを、訓練をして企業から協賛を受けてお金を賭けて争う道具に変える必要はあるのかどうか」と感じるユーザーも少なくないと思う。

そして大本のゲームについてだが、いくら戦略やチームワークという要素が存在していても、ゲームをよく知らない人からすれば反射神経だけで単純にやり合っている状況にしか見えず(格ゲーなど特に)、リアルスポーツのダイナミックさや寸分の狂いもないような神ワザに対する賞賛や驚きといった要素をe-sportsから受ける人はどこまでいるのかも疑問が残る。

またゲームで稼ぐプロの報道よりも、「ゲームに夢中=目が悪くなる、成績が落ちる、私生活に影響が出る」といったイメージ的報道ばかりがされてきた日本でe-sportsが一般に認められるのは相当難しいのではないか。ゲーム以外でも、たとえば手塚時代から主婦集団らに目の敵にされてきたマンガの一般的イメージや地位は、いまやどれほど改善しただろうか?

ただ、アニメなんてオタクが見るものだと思われていた昔に比べて、ジブリアニメは一般の「自称・良識ある大人たち」にもウケがいいように、e-sportsだってジブリ的な子供向けのゲームを扱い、報酬もお金ではなく別のファンシーなものにかえればマイナス印象も改善するかもしれないと思うし(といってもせっかくの世界的な子供向けゲームであるマリオは、”ファミコン、ぴこぴこ”というイメージがお年寄りの脳にこベリついているため無理だろうが)、浮世絵などに見られるように、海外でいい評価を受けると「あ、それはいいものなんだ」と判断してしまう傾向が強い日本なら、すこしは逆転するチャンスは残っているかもしれない。

■T.H(某財団法人事務職)
管見であることは当然のことながら、申し上げたい。
日本の場合eスポーツは「風俗営業等の適正化に関する法律」の影響を排除できず、主催者自らが結果に対して金品を提供できない、という部分に大きな影が落とされることはほぼ間違いない。
同様の課題はエレダーツ(現在解消に向かう方向の噂がある)やポーカー(欧米では立派なマインドスポーツ)にも存在し、実は興業としての浮沈はゲーム業界ではなく警察が握っているというのが日本の法構造であると考えざるを得ない。
つまり、主催者が参加者から参加費(参加費と名目を打たなくても実質的にそのようなものと警察が解釈するあらゆる手数料の類いを含む)を取れば、その結果に直接主催者から金品を出せないし、商品・賞金の提供はスポンサーからにしかならない、という大きな縛りが、様々な大会を運営していく上での大きな障壁である。
では、特定のゲームだけ検定を受けて、それを通過したものだけeスポーツ的な概念で除外しよう…ということについて、検定の費用を誰が負担するのか、そして検定する側の基準とその根拠はどこになるのかという要素を考えると、この部分の法制化が以下に難しいかというのがご理解いただけるのではないかと思う。

文化面では、「目に見えないもの(技術等)に金を払わない」日本人の性向が影を落とす。
現に全国規模の「スプラトゥーン甲子園」の勝者が大きく一般マスコミに取り上げられることはない(せいぜいゲームメディアまでだ)。
現に今でもeスポーツに関するまともな記事が東京の主要紙を大きく1面で飾ったか?と言われれば、答えは明確にNoである。

結果として、法的なしがらみを避けるとなると海外に出て行かざるを得ず、国内に置いては2になりかける3という位置に落ち着かざるを得ないのではないだろうか。少なくとも、そういうことに理解のない層が社会の制度を決める側である、ここ十年くらいは。