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ドイツの漫画イベントで表現規制強化=18禁/AI

Kataho@フランクフルト

アニメ、漫画ファンが集う欧州の主要イベントでドイツ最大の「Dokomi」(以下、ドコミ)は、ファンによる創作物の販売で大規模な自主規制を導入するようです。11月初めに来年のファンブースの受付が開始され、その利用規約の中で明らかになりました。

今回はその中でも、関心度の高いと思われる成人向けコンテンツの取り扱いと人工知能(AI)を使用した物品の販売について取り上げてみます。

なぜドイツのドコミに注目するのか?

ドコミは今年2022年6月の開催で、過去最高となる来場者7万5,000人(2日間のべ)を記録しました。アニメ・漫画ファンが集まる単独開催のイベントとしては、ドイツ最大です。ファンが創作物を販売するブース数は500を超え、欧州レベルでも最大クラスとなります。

その動向には、ドイツ(語圏)の他のイベントも注目しているようです。今年のドコミでは、『東京リベンジャーズ』のコスプレにみる「マンジ」が大きな議論を呼び、開催後に今後禁止する旨が発表されました。その後、「Connichi」(独カッセル)、「AniNite」(墺ウィーン)といった主要イベントも禁止措置を発表するなど追随する動きが見られました。(以下は参考記事、7月31日付け)

つまり、ドコミの表現規制は、2023年に開催される他のイベントにも波及するかもしれないと筆者は考えています。

成人向けコンテツの扱いについて

では、具体的に利用規約を読んでみましょう。英語とドイツ語で合わせて15ページあります。(公式サイトのブース受付ページから先に進むと閲覧できます

成人向けコンテンツの扱いは「18+/NSFWコンテンツ」として7項目のルールが記載されています。

だいたいこんな感じです。

1)青少年向けでない物品の販売は「18+エリア」のみ。それ以外のエリアでは、該当部分を見せないような自主規制をしても認められない。年齢も確認してはいけない。
2)直接的なセクシャルな文脈を含まない裸の画像、および例えばランジェリーやビキニなど、さらに挑発的なポーズの画像を含む物品は、「18+エリア」のみ。同様に「Ahegao」商品、およびフィギュア、漫画/同人誌、アートブック、アニメで、「Yaoi」、「Yuri」、「Hentai」、ホラー、スプラッター、ゴア、部分的には「Ecchi」(訳注:いわゆるファンサービスを含むソフトエロ)のジャンルが該当する。
3)通常のファンブースでも、売り場に占めるソフトエロ表現が半数を超える場合は、「18+エリア」のみ許可。
4)通常のファンブースで、販売物のごく一部がエロ表現を伴う場合は、そのページを完全に封をした状態であれば販売可。
5)ただし、出版社やライセンシーの出展エリアは、エロや暴力ジャンルの販売は継続する。未成年の目に触れないところで管理する必要あり。
6)通常のファンブースで参加するクリエーターは、「18+エリア」内の合同ブースに販売を委託することができる。
7)申し込み時には、可能な限り詳しく販売予定商品の一覧をリンクで送る、または計画を伝えることが推奨される。現地でルール違反が判明した場合は、該当商品の即時販売停止指示を受ける。複数回の違反ののちは、退場処分となる。

筆者抄訳

いかがでしょう?
基本的には、表現の自由を確保するために、広範囲かつ大規模にゾーニングを導入するというものです。

青少年保護の観点から実施される自主規制ルールですが、およそ疑わしいものはすべて18禁扱いにするという非常に踏み込んだルールだと思われます。一般ブースでの販売の余地は残していますが、18禁扱いの商品の割合を「ごく一部」と、あえて数字ではなく曖昧な表現にとどめているあたりを見るに、運営側と議論をする必要がありそうです。逆にいうと、議論する労力を節約するために、18禁エリアに誘導しているようにも思えます。

では、18禁エリアは、「望ましくないもの」として片隅に追いやられてしまうのでしょうか?筆者の考えはノーです。実際にこのルールを適用すれば、むしろ一般エリアの規模が縮小され、18禁エリアがメインになる可能性もあります。ただ、ドイツの絵師界隈がこういったルールを受け入れるのかどうか、まだ反応は少なく今後の動向が非常に気になるところです。

AIを使用した物品の販売について

こちらに関しては、短いながらも禁止する旨の記載を見つけました。

人工知能のみを使用または大部分で使用して制作された物品の販売は、ファンブースでは禁止とする。(5.1商品について)

つまり、部分的には可能です。ただ、こちらも「大部分」という表現を見るに、運営側と議論になる可能性があります。そうなると、場合によってはAIの使用は敬遠されるかもしれません。

AIによるイラスト生成プログラムに関しては、日本でも話題になっており、さまざまな議論が行われているようです。

例えば、米国の事情を紹介したこちらの記事を読んでみると、すでにイベントでAIによるイラストを提供するブースが現れ、議論を呼んでいることや、これから開催されるイベントがAIの禁止を発表したと紹介されています。

https://www.sportskeeda.com/anime/ai-generated-art-getting-lot-hate-anime-conventions-fandom

その他のルールについて

以上、ドイツの主要イベントにおける成人コンテツとAIの取り扱いについてざっくり紹介してみました。利用規約には、この他にもラッキーバッグ(いわゆる福袋)や飲食物の販売の禁止(事前に別途契約する必要あり)といった多岐にわたるルールが示されています。

なお、二次創作に関しては明確な記載はありませんでした。ただし、「ドイツの法律に違反しないこと」という大前提はあります。このあたりは微妙にグレーゾーン化してうまくやり過ごしているのかもしれません。

今回は、ドイツのアニメや漫画ファンたちによる創作活動における会場でのルールを取り上げてみました。このあたりは、日本やその他の国と比較すると面白いかもしれません。

いずれにせよ、来年のドコミの「風景」は今までとは少し変わったものになるかもしれません。こういった自主規制ルールについて、皆さんはどう思いますか?


タイトル画像:ドコミのファンブースが集まるホールの様子。今年2022年筆者撮影。



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