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集中力を高めるために、すぐにでも実践できる9つのこと。デジタル時代に欠かせない“引き算”の発想。

皆さん、こんにちは。今回は「集中力」について書かせていただきます。

仕事に限らず勉強やスポーツなどにおいて、集中力が高まった時に発揮できるパフォーマンスと、集中力が低い状態で発揮するパフォーマンスに大きな差が出ることは明らかですが、集中力を維持し続けることも、さらに高めていくことも、自分の特性や自分に合った方法が分からないまま日常生活を送っている人は、予想以上に多いかもしれません。

引用した記事の中には、

集中力において大切なのは「引き算」である。何かに没頭している時の脳活動を見ると、平時に比べて活性化している領域はむしろ絞られている。今取り組んでいる課題に関係する回路以外を抑制することで集中が実現するのだ。

とあります。日々多くの情報に接し、仕事に集中している時でもスマホの通知がある度に作業が中断し、集中力が途切れてしまうことも多い中、集中力を維持するために自分にルールを課したり、集中力を高めるためのトレーニングをしたりというような、何らかの工夫をしていかなければ、今のデジタル時代に人間が“集中”を維持することは難しくなっていく一方です。

私たちはこのような時代において、どのように集中力を高めていくべきなのでしょうか。また、企業が社員の集中力を効果的に引き出すためには、どのような環境を整備していくべきなのでしょうか。具体的に考えていきます。


■なぜ集中力を維持することが難しい時代なのか

スマホの普及によって、いつでもどこでもインターネットにアクセスし情報を取得できるようになりました。SNSを含めたエンタメコンテンツも充実し、常にスマホの情報が気になるようになり、電車に乗っていてもカフェにいても街を歩いていても、スマホを見ていない人の方が少ないくらいです。

日常生活の中にこれだけスマホが定着してくると、集中力が事あるごとに阻害されている感覚を持つ人も多いのではないでしょうか。

集中力を維持することが難しい時代になっていると感じる理由を挙げてみます。

1、情報取得の利便性が向上したことによって、作業を“中断”することが増えたから。
→前述した通り、明らかに情報過多な現代において、たとえばパソコンに向かって仕事をしていても、スマホのアプリの通知がきたりメールがきたりすると、一度作業を中断してメッセージをチェックすることが格段に増えていると思います。このように自らの意思で目の前の作業を“中断”するという行為そのものが、集中力を途切らす要因になっているのです。

2、生産性を追求し出したことで、常に集中し続けなければならないというプレッシャーを感じているから。
→テクノロジーの進化に伴い、あらゆるデジタルツールを活用しながら、時間生産性やアウトプットの生産性を高めることへの意識が強まっている中、集中して効率よく仕事をしなければ評価されないというような、プレッシャーを強く感じる文化がどんどん出来上がってきています。もし成果が出なければ、その分長い時間働いたり、“仕事をしている風”を演出したりと、逆に集中を遠ざける原因を作ってしまっていることさえあります。プレッシャーは他者からかけられることもありますが、無意識に自分でかけてしまっているケースも多く存在します。

3、タイパを意識する風潮もあり、いつも何かに気を取られている状態が続き、しっかりとした休息が取れていないから。
→無意識に「常に空いた時間で何かをしなければいけない」とか「ダラダラと何もしない時間が無駄」という考えに至ってしまうことがあると思います。何か行動をしたり考え続けることだけが問題解決につながったり、物事を前進させることにつながると思い込んでいる人も多いように思います。そのような義務感や責任感、または生産性意識を一度取っ払い、リラックスして「何もしない」ことを選択することも大事です。良質な“休息”ほど心身ともにリフレッシュさせる有効な手段はないからです。

4、やるべきことが多く、無意識のうちに身体的、または精神的な不調につながりやすいから。
→人手不足などの理由で過度に業務が集中し過ぎていたり、一人ひとりが対応すべき仕事量が多いと、極度の疲れから体調不良や寝不足によって、集中できる状態を維持できないというケースもあります。それらを放置してしまうと、頭痛や腹痛などのフィジカルな不調だけでなく、メンタルにも不調をきたし、当然集中力の低下にもつながります。こちらの記事にも書いた通り、心身ともに不調を訴える人が急増している今、目の前のことに集中したくても、悩み事を抱え注意散漫な状態では、集中力の維持が困難になっていることは明らかです。

5、働き方の変化・多様化に伴って、集中できない場面や環境が増えているから。
→リモートワークの普及や働く場所の変化により、全ての人が、自分で集中できる環境を確保する必要が出てきました。コロナ禍で、最初のうちは「自宅の椅子が仕事をするには快適ではない」「家族が家にいるから集中できるわけがない」といった声はよく聞かれていましたが、数年かけて徐々に“どこでも働ける”環境は整ってきたはずです。一方で、皆が常に同じ場所でタイミングを合わせてコミュニケーションを取りながら共同で作業を進めていくという環境ではなくなった分、コミュニケーションのロスが生まれたり、お互いの仕事の進捗が分からず重複作業が発生したりと、それらを補うために、これまでとは違う集中力を発揮しなければならなくなりました。働き方の変化や多様化は、「集中できないこと」への対応が避けて通れなくなったとも言えるのではないかと思います。ただその分、「集中できる環境を作らなければ」という強い意識が働き、余計集中力を切らすことへのイライラや罪悪感が増しているようにも思います。

このように、集中力を維持することが難しい時代だからこそ、集中力を高め、深い思考をすることの価値が高まっているのではないでしょうか。

■集中力を高めるために意識すべきこと

人間の集中力は、集中力を高めるトレーニングをしている人で約2時間、トレーニングをしていない人であれば長くても20分~30分しか持たないと言われています。もともと人間の脳が、長時間集中できる構造になっていないことは研究結果によっても明らかになっています。

周囲を見渡してもうまく仕事に集中できていそうな人ほど、集中を妨げる要因を取り除き、1日の中で短時間の集中を何度も繰り返すなどして仕事に打ち込んでいます

その他にも具体的にどのように集中力を高めていくかについて、意識すべきポイントを挙げてみます。

●ポイント①「休息により脳を活性化させる」
引用した記事の中には、

ジョン・フィッチ、マックス・フレンゼル著『TIME OFF』(クロスメディア・パブリッシング・23年、ローリングホフ育未訳)は、創造的な仕事をする人が思い切った休暇をとっていることを豊富な実例を挙げて論じる。ともすれば働き過ぎと言われる日本人。休息することで、発想を生み出す脳の回路が活性化し、「ドット」と「ドット」を結ぶひらめきも生まれる。休息は良質の集中、創造につながるのだ。

とありましたが、休息を取ることの重要性は認識している人が多いと思います。分かっていても休息を取ることが難しい場合もあるかもしれませんが、そのような場合は「休息=何もしない時間」と考えず、「一生懸命仕事に向き合わない時間を作る」くらいに捉えておいても良いかもしれません。休息こそが、仕事に集中するための土台となるため、この土台を正しく構築することに工夫を凝らす必要があります。

●ポイント②「自己肯定感を高め、自信を持てる経験を積む」
同じく記事には、

ところで、集中するために必要な条件として案外見落とされがちなのが自己肯定感である。自分は何をやっても駄目だと思っていたら、そもそも目の前の仕事にチャレンジしようとしなくなる。大切なのは、「根拠のない自信」とそれを裏付ける努力なのだ。

とありました。何か大きな結果が出ないと自信が持てないという人は少なくありませんが、自信が持てないままだとチャレンジすることも少なくなり、仕事のやりがいを見出せない分集中力も持続せず、ミスやトラブルにつながり、さらに自己肯定感が低くなるという悪循環に陥ります。まずは、小さなことでもクリアすべきことを定め、一つ一つ着実に対応して自信に変えていくステップが必要です。

●ポイント③「“飽きる”状態を回避する」
仕事が「単純でつまらない」と感じていると、どうしても仕事に“飽きる”という状況が発生します。そうなると集中力が途切れ、高いパフォーマンスが出せるわけがありません。ある意味、“飽きない”環境に身を置くことが大事で、意図的に予測不能な状態や、目標達成の難易度が高く必然的に考えなければならない状態を作るなど、いつもとは違う環境(仕事内容、仕事の進め方、周囲の人間関係)の中に身を置くように意識してみることも大事です。

●ポイント④「自分ではコントロールできないものに意識を奪われないようにする」
今自分ではどうしようもないことに気を取られて、本来集中すべきことから目を逸らしてしまうことはよく起こります。そうなった時に「今それを考えても仕方がない」と割り切り、自分次第でどうにかなることだけに意識を向けるようにすることが重要です。「何に意識を奪われないようにするか」を明確にすると良いはずです。

●ポイント⑤「自分の集中力がピークになる状態や時間帯を把握する」
自分にとって、集中力が最も発揮できる環境や状態はどういうものかを把握しておくことが大前提必要です。「朝、人よりも早く出社して、誰にも話しかけられない中で仕事をすると集中力が極めて高い状態を維持できる」とか、「日中は会議や人とのコミュニケーションに使う時間が多いから、夜にまとまった時間を確保する方が作業効率が良い」など、自分自身の集中できる状態や時間帯を理解した上で、集中力が必要な仕事をその状態の中で行うようにコントロールすることが重要です。

●ポイント⑥「仕事に取り掛かる前に全体像を捉えてから開始する」
→複数の案件を同時に対応する時や、難易度の高い案件を対応する時は、普段よりも集中しなければならない状態が続きます。ずっと重い作業を長時間継続することは難しく、対応する順番や所要時間などをうまく組み合わせながら、集中力に負荷をかけ過ぎないようにすることが大事です。そのためには、全体像を捉えてから仕事に取り掛かるようにすると良いと思います。

●ポイント⑦「集中力が続かない時は機械的な作業に没頭してみる」
集中力が思うように続かない時は、考えなくても成立するような作業に充てると良いと思います。または、思い切って仕事から一度離れて、たとえば簡単なスマホゲームやパズルのようなもの、お皿洗いや洗濯物をたたむ作業など、機械的な作業をすることで集中力を取り戻せることもあります。頭をリセットしてリラックスできるようなことを、作業の合間に取り入れることが有効です。

●ポイント⑧「余白を大事にする」
集中力が最大限発揮できるように、自分のペースを確立し、1日、1週間、1ヵ月のスケジュールや仕事の流れを適切にデザインすることが大切です。その中で、あまりにも時間的にも精神的にも余裕がないと、自分の時間の使い方や思考にゆとりが持てず、本来の実力を発揮できないことが往々にして起こります。「会議などの予定をビッチリと埋めずに空白の時間を意図的に作る」、または「気持ちを整えたり、何もしない時間をもともとの予定に組み込む」など、余白を意識したスケジュールを段取りすることは、集中力を維持するために欠かせません。

●ポイント⑨「常にゴールをイメージする」
「1日の中で、何を最低限達成したいか」「今の仕事が未来にどのような影響を与えていればいいか」などをまずは想像することが大事だと思います。そのような発想を持つことで、仮に途中で集中力が途切れたとしても、何時までにどの状態になっていれば目標達成かを改めて理解し、軌道修正することができるからです。また、想定通りに仕事が進んだ時に自分がどのような感情になるのかも理解できていると、「達成感を味わうためにも今集中して頑張ろう」というような行動へと影響・変化を与えることができます。集中力を維持するためには、今自分が何を目標にしているか、何に向かっているかを明確に定めておくことが極めて重要です。

いくつかポイントを挙げてきましたが、集中力を妨げる最大の敵は、「今やるべきことに関係のない雑念」です。できるだけ余計なことや無駄なことを排除し、雑念を取り除くことができれば自然と集中力は高まっていきます。一度集中力が途切れてしまうとまた集中を引き戻すまでに実は相当な労力がかかりますが、雑念を取り払い集中を維持しようとする意識が適切に作用すると、その労力を最小限に抑えることも期待できます。

■企業は、社員の集中力を引き出す環境をどのように作るのか

これまで個人が意識すべきポイントを挙げてきましたが、最後に、企業がどのように社員の集中力を引き出す環境を構築するかについて考えていきます。
 
1、何に集中すべきかを定義する
シンプルに考えると、「成果に結びつくことを集中してやる」、逆に「それ以外はやらなくていい(集中しなくていい)」という考えを会社全体にメッセージとして発信することも一つの手段かと思います。いくらやっても成果や業績に結び付かない無駄なことに時間を使うことほど不毛なことはありません。やらなくていいことに集中力を発揮しても意味がないのです。タスクやプロジェクトを定期的に棚卸しすることが、組織全体の生産性にも直結します。

2、社員が集中できる環境を複数パターン用意する
人によって集中できる環境は異なります。いくら豪華なオフィス環境(集中エリアやカフェスペースなど)を用意したからといって、全員が居心地が良く業務に集中できるとは限りません。社員が求めている職場環境をよくヒアリングして、オフィスの中のそれぞれの場所を「集中を生み出す場」なのか、「人とのコラボレーションを生み出す場」なのか「コミュニケーションをとる場」なのかなどを定義した上で、環境を構築すると良いと思います。また、働き方が多様化している今、オフィスだけが集中できる環境とも限らず、オフィス以外にもいかに集中スペースを確保するかを検討する必要もあります。実はオフィスは、周囲の“同僚”からの声掛けや、仕事に関する“スマホ”の通知などで、最も集中できない場所になっている(と感じる社員が増えている)かもしれません。
 
3、社員が集中力を高められるような取り組みや施策を会社全体で推進する
各チーム、各組織の中で、共通の「集中時間」を設けるとか、会議と会議の合間に必ずインターバルを設けるなどの工夫を奨励することも有効です。集中時間を設定したら、それを周囲のメンバーにも共有することで、「ちょっと今いいですか?」というような、集中を遮る場面を極力なくす効果も期待できます。また、1日の予定をぎっちりと埋めるのではなく、合間の10分、30分という時間を、緊急対応が必要なものや突発的な案件の対応に充てることで、予想外の出来事を吸収し、一日のスケジュールに狂いが生じにくくなります。また、社内のコミュニケーションのチャネルが複数ある企業も多いと思いますが、これも集中力を削ぐ原因です。それぞれの利用目的や使われ方を考慮した上で、できるだけ一つに絞る方がオススメです。
組織的に業務実態に合った集中環境の確保などの工夫をしていき、うまくいった事例を横展開していくなど、個人任せにし過ぎるのではなく、組織全体でのバックアップ体制が求められます。


これらはあくまで一例ですが、企業として、「社員一人ひとりに明確な目標を設定する」「社員同士の効果的なコミュニケーション方法を確立する」「働きやすい環境を構築する」「社員の健康管理やメンタルヘルスサポートを徹底する」「業務時間のコントロールや社員のタイムマネジメントをサポートするような体制を整える」「スキルアップにより生産性を高める」「働きがいやエンゲージメントを高める」など、一つ一つの取り組みの積み重ねが、組織全体の集中力を高め、生産性や業績の向上につながっていくことを理解しなければなりません。

これまで述べてきたように、現代のデジタル時代においては、今の時代に合わせた集中力の高め方やスケジュールの立て方、成果の出し方を考え、実践していく必要があります。まずは、自分の集中できる環境やリズム、方法、思考法を知ることが、有限な時間の中で成果を最大化させるための第一歩です。



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