最適なイベント形式の選び方 - 変化するオフライン・オンライン・ハイブリッドの活用方法
これまで2年強、世の中のコミュニティ活動、イベント開催は大きくオンラインにシフトし、会場を利用するオフラインのイベントは開催しづらい状況が続いていました。ようやくここ最近、オフラインのイベントに関する様々な制限が緩和され、オフラインイベントも開催する主催者も増えてきました。コミュニティ活動に関しても実際に集まれるケースが増えてきています。
今回はイベント・コミュニティの活動がここ最近どのように変化し、これからどのようになっていくのかを考えていきたいと思います。
コロナ禍のコミュニティ活動の変化
ここでコロナ禍におけるコミュニティ活動の変化について振り返ってみたいと思います。
こちらはPeatixにて昨年実施した調査で、「主催者と参加者、あるいは参加者同士の交流・つながりについて、もっとも当てはまるものを選んでください」という問いに対しての回答結果です。
オンライン化が進んだことにより、本来コミュニティ活動やイベントを開催することにより生まれていた交流・つながりはこれまでよりも"減っている"あるいは"変わらない"と回答している人が7割近くいる状況となりました。
以前、日経COMEMOの記事でも書きましたが、オンラインでの活動はアクセスのしやすさなどから気軽さが増え、コミュニティ活動、イベントへの参加頻度を増やしやすい状況になっています。最初の起点となるイベントへの参加はしやすい一方で、オンライン疲れや、つながりの希薄化など課題も明確になってきたのです。
オンライン・オフライン活用はどうなる?
では、今後イベントにおけるオンライン・オフラインの活用はどのようになっていくでしょうか。
私個人としてはコミュニティの属性によって活用の仕方は変わっていくと考えています。
オンラインをメインにしたイベント
オンラインイベントは会場が必要ないためコストを抑えて開催できるという主催者メリットがあります。開催に掛かる人的リソースも抑えられるためオフラインイベントよりも多い頻度で開催が可能となります。
また参加者としても会場まで移動する必要がないため、どのような場所にいても気軽に参加出来るというメリットがあります。
一方で、先に述べましたが、オンラインイベントはつながりを感じにくく、出会いを生み出す上ではまだまだ課題が多くなっています。
こうした特徴を持つオンラインイベントですが、特にビジネス系のオンラインセミナーでは引き続き積極的に開催されていくと考えています。ビジネスに関連したトピックを扱う学び系のイベントは、開催頻度を上げより多くのビジネスパーソンに参加してもらいたい主催者の企業側の意向があることからオンラインでの配信が最適となります。また、参加者側もつながりよりも知識の習得を目的にしていることが多く、参加のハードルの低さからもオンラインでの開催がフィットします。
オフラインをメインにしたイベント
会場で集まることのメリットはなんでしょうか?
目の前だからこそ感じる臨場感、オフラインで集まることによって生まれる偶然の出会い、つながりの深まりやすさなど、オフラインだからこその熱量があります。
そのような熱量の高い、会場に参加者を集め実施されるイベントはどのようなイベントになるでしょうか。
まず、ファンを集めてパフォーマンスをする音楽ライブイベントはオフラインならではの高揚感を生み、参加者も時間をかけて会場まで足を運ぶメリットがあります。
また、ビジネス系でも会場に参加者が集まることで出会い・つながりを生みたいミートアップ系イベント・懇親会を伴うイベントの場合はオフラインでの実施が最適となります。
ハイブリッドイベントのメリット
オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドイベントの活用を検討しているイベント主催者からの相談も増えています。
ハイブリッド型のイベントは、既にエンターテインメントのジャンルなどで開催されており、4月には吉本興業が110周年特別公演として「伝説の一日」というイベントを開催したそうです。
このイベントではオンラインでも配信したことで、約900席ある「なんばグランド花月」(オフラインの会場) の収容能力を大幅に超えたファンにチケットを販売することができ、2億円を超える興行収入をあげることに成功したそうです。
このように、オフラインの会場でイベントを実施しながら、オンラインでも生配信することでより多くの人に参加してもらうことが可能になるのがハイブリッドイベントのメリットです。
ハイブリッドイベントの課題
オフラインの熱量も持ちながらより多くの参加者を集めるという点で注目されるハイブリッドイベントですが、一方で課題も出てきています。
オンライン参加 > 会場参加
会場での参加者を募りながら、オンラインでの生配信も実施する場合、イベントのジャンルによってはどうしてもオンラインでの参加者が多くなってしまい、会場に人が集まらないケースが増えてきています。
音楽系のイベントはファンがアーティストを直接見たいという思いが強く、会場で参加することで得られる高揚感があるので会場での参加ニーズは高いのですが、ビジネス系のイベントでは知識を得ることが目的であることも多く、その場合はオンラインでの参加を選ぶ人が多くなる傾向があるのです。
配信のオペレーションの負荷大
ハイブリッドイベントを生配信で実施する場合、会場に参加者や登壇者がいるので、しっかりとフォローする必要があります。通常の会場でのイベント運営も簡単ではない中、さらに配信用のスタッフを配置し、インターネットの回線状況などにも気を配りながらイベントを実施するのはかなりの負荷となります。
また、会場の参加者とオンラインでの参加者の温度差が生まれないようにファシリテーションするのも技術が必要となります。
このようにハイブリッドイベントは全体の集客の面でメリットもある一方で、会場への送客や、配信オペレーション、ファシリテーションなどの面で課題があるのです。
ハイブリッドイベントのこれからの活用方法
オフラインイベントの開催が戻ってきている現在、ハイブリッドイベントはどのように活用されていくでしょうか。
生配信型ハイブリッドイベント
先に書いた通り、エンターテインメント、音楽イベントの領域では生配信型のハイブリッドイベントが開催されていくでしょう。
参加者(ファン)が会場でアーティストのパフォーマンスを体感したい、臨場感を楽しみたいタイプのイベントの場合、会場参加のニーズは高く、会場チケットが手に入らなかった人、スケジュール上会場まで行けない人などがオンライン参加する流れとなるため、結果としてより多くのファンに参加してもらえる可能性が高まります。
収録・後日配信型ハイブリッドイベント
学び・知識収集を目的にした参加者が多いビジネス系イベントでは、オンライン生配信と会場の2つの選択肢があると、そもそもオンラインを選択しやすいということに加え、会場参加を選んでいても当日の天気や仕事の状況でオンライン参加に切り替えるケースが多く出ます。結果として会場の参加者が少なくなってしまう課題が生まれています。
そのような課題が見えてきた現在、ビジネス領域のイベント・カンファレンスに関しては、オンライン配信は収録・後日配信型のイベントが増えていると聞きます。
イベント当日は会場のみでしか参加出来ず、オンラインでは配信されません。イベントの内容は録画され、後日配信されるという流れです。
オンライン配信を後日配信にすることで、イベント当日のネットワーク状況のトラブルのリスクもなく、内容の編集も可能になります。そして参加者にとっては、最新の情報を早く手に入れるには会場に行こうというモチベーションが生まれます。また会場参加すれば、スピーカーに質問が出来るなどのメリットも生まれます。(オンライン生配信の場合、オンライン参加者の質問をファシリテーターがピックアップしてスピーカーに聞くケースがあります。)
よって、イベントの規模にもよりますが、会場参加者が少ないことがリスクになるイベントの場合は、当日会場参加のメリットを増やす、配信のオペレーションの負荷を下げるなどの理由から収録・後日配信型ハイブリッドイベントが増えていく傾向があるのです。
まとめ
コロナ禍の状況が変化し、オフラインイベントが戻りつつある現在、オンライン、オフライン、ハイブリッドイベントをどのように活用していくかは、企業・コミュニティにとって一度立ち止まって考えてみるのが良いでしょう。それぞれのコミュニティやイベントに合った選択をすることで、目的に沿った素敵なイベント・コミュニティ活動が増えていくことを願っています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?