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服を買うように、気軽に住まいを選ぶ時代は来るのでしょうか?【篠田真貴子さんが新世代の起業家に聞きました!】

この記事は1月26日(火)に開催した、オンラインイベント【マキコの部屋 #02 住むためのお金、そんなに必要ですか?】の内容をもとに作成しています。

日経COMEMOにキー・オピニオン・リーダー(KOL)として参加してくださっている篠田真貴子(マキコ)さんにホストを務めていただき、各界で活躍する新時代のリーダーをお迎えして話を聞くシリーズイベント「マキコの部屋」。

今回のゲストは、外泊するほど家賃が下がる「unito」というサービスを展開する近藤佑太朗さんをゲストにお招きしてお話を伺いました。


■はじめに

ーマキコさん(篠田さん)
今日お話をお伺いするのは「unito」という事業を運営している近藤佑太朗さんです。もし私の若い頃に「unito」のようなサービスがあったら、真剣に利用を検討しただろうなと、聞いた瞬間に思いました。

同時に、私もベンチャーの経営に携わっていますから、「これは事業にするのは大変そうだな」とも思いました。そのあたりも含めて、このサービスが広がっていった先にどんな世界が待っているのか、お話を伺おうと思います。

ー近藤さん
今日はよろしくお願いします。僕は今、外泊したら家賃が安くなる暮らしのプラットフォーム「unito」をローンチして、ちょうど10ヶ月くらいのところです。

ーマキコさん
まさに走り出したところで、注目度も高いサービスですよね。今までにない新しいタイプのサービスなので、最初にどんなものなのかを簡単にご説明いただけますか?

ー近藤さん
「unito」は「未来の暮らし方の追求」をミッションに掲げています。今は、様々なサービスが個人に最適化された形で提供されているのに、暮らしはまだまだ最適化されていないように思います。

そこで僕たちは、旅行・帰省・出張などで「家に帰らない日は家賃を払わなくていい」という、日本初の居住プラットフォームを作りました。

ーマキコさん
ここで、イベント参加者の皆さんに伺いたいのですが、世の中の変化と自分の暮らしの間に「ミスマッチが起こっている」と感じることはありますか?

【イベント参加者からのコメント】
・東京に住む必要性が薄れた
・自然の近くに住みたいけど会社から遠いのは不便
・動きやすさを考えると荷物は少なくしたいと思うのに実際には捨てられず
・家族がいるとオフラインのつながりが多くて移動がしにくい
・在宅が増えたから広くて居心地のいい部屋を借りればよかった
・4人だと賃貸物件が見つからない

先程、近藤さんがおっしゃったように、ITサービスはものすごい勢いでパーソナライズが進んでいるのに、家に象徴される「暮らし方」は画一的なままですよね。

ー近藤さん
僕は今26歳なので、社会人4、5年目という友達が多いのですが、「住みたい街に住んでいる人」はとても少ないと感じています。

例えば、渋谷にオフィスがあるから東横線沿いで渋谷から30分くらいのところに住む、など。その街に住みたいわけではなく、条件面でそこを選んでいるという人が多いと思います。

住む街は、自分の価値観や考え方にも影響するので、僕はとても大事だと思っています。

ーマキコさん
イベント参加者の皆さんにもう1つ伺いたいのですが、「住みたい街」はありますか?

【イベント参加者からのコメント】
・鎌倉
・逗子
・札幌
・宮古島
・西表島
・京都
 ……

やっぱり皆さん、ほんとは住みたい街があるのに、そこに住めていないということなんですね。

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■暮らし方のオプションを提案するビジネス

ーマキコさん
住む場所のオプションを広げたいと近藤さんが考えるようになったきっかけは、どんなことだったんですか?

ー近藤さん
このサービスを作ったきっかけは、僕が前職で出張が多く、月の半分くらいしか家に帰らない状況があったことです。出張だけではなく、友達の家に行ったり、実家に頻繁に帰ったり、半分くらいは家にいませんでした。

当時、賃貸アパートで1人暮らしをしていて、家賃は9万円。毎日家に帰ってきている隣の部屋の人も家賃9万円。僕は同じ家賃を払って半分しか家にいない。

あらゆるサービスが最適化されている現代社会において、こんなシステムもめずらしいなと思いました。

ーマキコさん
私もアメリカに留学していたとき、数ヶ月ある春休みや夏休みに、向こうの部屋を借りたままにして日本に帰ってきていたときに、同じことを感じたことがあります。本当に無駄だな、と。

アメリカは日本よりも賃貸物件の又貸しがOKな契約は多いと思うのですが、当時はそんな知識もなかったので、毎回解約してしまうのは大変だと思って借りたままにしていました。

だから、近藤さんが問題意識をもった気持ちはわかりますし、同じように感じている人は多いと思うのですが、それをビジネスにまでしようと思ったところには、大きな「ジャンプ」があったと思いますが?

ー近藤さん
例えば今の話で言えば、アメリカから東京に戻ってくるときに、又貸ししようと思えばできるのに、「知識がないから」「難しいから」という理由でできない。

「ほんとはできるのに知識がないせいでできない」ことを解消したいという気持ちが、このビジネスの根っこにあると思います。

僕たちのシステムを利用してもらえれば、入居者は何の知識がなくても、ボタン1つで家賃が安くなる、そういう仕組みを作りました。

ーマキコさん
それが実現できる仕組みについて、もう少し詳しく教えていただきたいのですが、入居者の外泊中は、その部屋はホテルになるということですか?

ー近藤さん
そうです。入居者に旅行・帰省・出張などの際に「外泊申請」をしてもらい、その間に部屋を「旅行者が利用するかもしれないし、しないかもしれない」という仕組みになっています。

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ーマキコさん
旅行者が部屋を利用しなくても、家賃は下がるんですか?

ー近藤さん
下がります。僕たちが提供している家は、基本的には「ホテル」か「民泊」の物件です。物件の事業者側が、入居者の不在中に旅行者の宿泊予約をとれるかどうか、そこは事業者側が負担を負う仕組みです。

事業者はもともと稼働率100%でホテルや民泊の運営をしているわけではありません。ある意味そのリスクをとることは、通常から当たり前のことです。

ただ、僕らのシステムでは、外泊時の割引額は4000円程度に設定していて、旅行者の通常の宿泊額(1泊8000〜10000円程度)よりも安く設定しています。

事業者は稼働率を50%くらいにすればペイできる仕組みになっていて、入居者に対しては外泊すれば必ず家賃が下がる代わりに、割引額は少しだけ安いということにしています。

ーマキコさん
このプラットフォームを事業者が利用するメリットは、全体の稼働率を上げられるということなんですね。

ー近藤さん
そうなんです。実は、入居者が外泊する日というのは、主に土日・年末年始・お盆・ゴールデンウィークなどで、これは宿泊施設の繁忙期に当たります。

ですから僕たちは「閑散期に宿泊施設にお客さんを入れますよ」「ちょっとだけ住んでいる状態にすることで稼働率を上げますよ」というサービスを提供しているということです。

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ーマキコさん
観光客が利用しやすくて、利用したいと思うような場所の宿泊施設だと、よりいいということになりますね。

ー近藤さん
それもあって、僕たちの物件は、基本的には超好立地にしかありません。多くの人が住みたいし泊まりたいと思うような場所にしかないんです。

■「住まい」への価値観はどう変わってきているのか?

ーマキコさん
実際に近藤さんたちのサービスを利用しているのは、どのようなライフスタイルの方ですか?

ー近藤さん
最初にお話ししたように、僕は当初「出張が多く家賃が無駄になる」という問題意識をもって、このサービスをスタートしました。ですから、経営者や営業マンなど、様々な場所を飛び回る人たちが利用するだろうと思っていたのですが、実際に10ヶ月運用してみると、そういう方は少ないです。

実際の利用者は、実家が首都近郊、例えば、西東京、埼玉の越谷、神奈川の戸塚、千葉の船橋などで、都心にちょっと頑張って高い家賃を払って住んでいた人たちです。実家に帰りつつ家賃を調節する、という感じで利用しているパターンです。

そしてもう1つのパターンが、首都近郊の実家に住んでいて、1時間半くらいの通勤時間を頑張って通っていた人たちです。実家に住みつつメインの住まいを都心に移したい人が、うちのサービスを利用してくれています。

ーマキコさん
近藤さんの想定していた人たちとは、利用者層が違ったということですね。「自分の家」と言える場所が複数あることを、こういう仕組みによってとても自然に考えられるようになるんですね。

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■投稿募集に寄せられた意見にマキコさんがコメント!

ーマキコさん
ここで、日経COMEMOで開催された投稿募集企画「それでも家を買いますか?」に寄せられた投稿を、いくつかご紹介したいと思います。

▼岩下尚紀義さんの投稿
岩下さんは、自分たちのこれからの暮らしについて「孤立しないこと」を軸に考えて、住む場所を選び、家の設計をし、自分たちのライフスタイルを作っていったと言います。

既存の「家とはこういうもの!」ということにまったくとらわれず、自分が「どういう時間の使い方をしたいか?」「どこに身を置きたいか?」から暮らしを設計しているんだなと感じました。

▼小島雄一郎さんの投稿
小島さんは、近藤さんと同じように家を使っていないのに家賃を払っている時間があることに問題意識をもちつつ、「それならば家に働いてもらおう!」と考えて、一軒家を購入し、1階に店舗に入ってもらうことを考えたそうです。

家賃収入を得るだけではなく、自分好みの店に入ってほしくて営業までしているところが、すごいなと思いました。

▼遠藤直紀さんの投稿
遠藤さんは、住まいを選ぶことは手続きも大変ですし、家族がいると動くのも大変なので、「より楽なほうを選びたい」という考えから結果的に賃貸を選んでいるということでした。

実は私も遠藤さんと同じです。家族の状況もどんどん変わっていく中で、今選ぶことができる選択肢が賃貸しかないから、という理由です。このような方は多いのではないでしょうか。

▼村上臣さんの投稿
村上さんは、世の中の賃貸と持ち家の比率が、労働人口における非正規対正規の比率に近いと紹介しています。このロジックの先にあるのは、正社員でないと住宅ローンが借りられないということ。

正社員でない働き方をする人が、特に若い世代で増えている中で、今の金融の仕組みでは家は買えないんですよね。

でも、近藤さんのようなビジネスは、そこを切り開こうとしています。住宅ローンを銀行が出してくれなくても、自分が住みたいところに住める、そんな未来がやってくると思いました。

■より多くの場所に帰るべき「地元」がある幸せ

ーマキコさん
近藤さんのご経歴の中に「学生時代にクロアチアに留学した」とありますが、どうしてクロアチアに行こうと思ったんですか?

私はクロアチアには行ったことがないのですが、思わずグーグルで検索したら、すごくきれいな国でびっくりしました。

ー近藤さん
クロアチアは海の美しさが有名で、観光業が世界一発展している国です。国が観光にとても力を入れていて、ロケツーリズムなども政府観光局がかなり頑張って営業しているそうです。

僕はクロアチアではビジネススクールに通っていました。専門は観光学です。

ーマキコさん
留学先での近藤さんの住まいは、どのような感じでしたか?

ー近藤さん
留学する前にフェイスブックの留学生グループに入れられて、そこでまず、一緒に住む人を探すように言われました。何人かで住んだほうが安くなりますから。

僕は、スペインとフランスの学生と一緒に、3人でシェアハウスに住んでいました。手続きもとても簡単で、クロアチアはその辺りは寛容ですね。

ーマキコさん
住まいを決める上で「手続きが楽」というのはとても大きいですよね。

ー近藤さん
だから僕たちのサービスも、入居は最短で翌日から、初期費用はデポジットの1ヶ月分だけにしています。更新も1ヶ月単位でできます。

それから、僕は退居の手続きが手軽であることがより大事だと思っていて、僕たちのサービスでは、アプリをワンタップして20日前までに申請してもらえれば、いつでも出られるようにしています。

そういう身軽さや手軽さは、サービス設計をする上で一番意識しています。

ーマキコさん
賃貸にしても持ち家にしても、「住まい」というのは手続きが大変で、大ごとであるという前提のもとに、みんな意思決定していると思います。近藤さんのサービスを利用すると、それがどんどんライトになっていく気がします。

私の世代やもっと上は、家を買うことが人生の目標のようなところがあったと思いますが、近藤さんのサービスを経験した人たちの「住まい方」というのは、どんなふうに変わっていくと思いますか?

ー近藤さん
2年前にサッカー選手の本田圭佑さんとお話しさせていただく機会があったのですが、本田さんはいろいろなクラブを渡り歩いて「多拠点居住」をされていて、それがとても楽しそうでした。

多拠点居住は最高だとご本人も言っていましたが、そんなことは一部の人たちにしかできないんじゃないか、セレブにしか無理なんじゃないかと、一般的には思われています。

僕はそれを大衆に広めたいと思っています。

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ーマキコさん
今日お話をずっと伺ってきて、近藤さんが切り開こうとしている「住まい方」の話は、ファッションの変遷と近いような気がします。

今はファストファッションが当たり前になりましたが、昔は服はもっと高かったです。男性のスーツは、今は3万円くらいで一式揃えられますが、昔は10万円が普通でした。もっと昔はもっと高かった。着物は一生着て、それを子供に渡したりしていました。

それほど頻繁に買い換えられませんし、服を買うことは大ごとで、もちろん長く大切に着ていましたよね。それが、価格が安くなることでファッションの幅は広がり、その人のスタイルに合わせて気軽に買って気軽に楽しむことができるようになりました。

服を着替えるように、そのときの気分にフィットする街や住まいを、選びやすくなってきているのだと感じました。

ー近藤さん
僕は、拠点は1つだけでなく、2箇所でも10箇所でも50箇所でも、たくさんもっていたほうがいいと思っています。これはいろいろな人に当てはまることだとも思います。

クロアチアに行くと、空港に降りた瞬間の匂いが違っていて、僕は空気の質感を感じると「わあ、懐かしい!」と幸せな気持ちになります。そういう場所を、1箇所ではなく、10箇所でも、100箇所でももっているほうが、人生は幸せなのではないかと思います。

ライフステージごとに様々な幸せの形や価値観の違いはあるものの、より多くの街に帰るべき「地元」のような場所をもてたらいいなと、僕は思います。

※イベント後、篠田真貴子さんご本人が今回の近藤さんとのトークセッションの感想を日経COMEMOに投稿してくださっています。ぜひこちらもご覧ください。

■プロフィール

篠田真貴子さん
株式会社YeLL 取締役

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1968年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月にほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社。取締役CFOを務める。2018年11月に退任し、1年3カ月のジョブレス期間を経て、2020年3月からベンチャーの「YeLL」取締役に。


近藤佑太朗さん
株式会社Unito CEO

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1994年11月生まれ。東京出身。東欧ルーマニア育ち。幼少期の3年間、父の仕事の都合上、東ヨーロッパのルーマニアで育つ。大学1年次、国際交流を軸に活動する“学生団体 NEIGHBOR”を設立。明治学院大学在学中にクロアチアのビジネススクールZSEMで観光学を勉強。帰国後、国内スタートアップ、Airbnb Japanで修行し、起業。創業1年半で、国内5拠点(伊豆大島・六本木・代々木上原・成田・雑色)、海外1拠点(Cambodia,SiemReap)で宿泊施設・Co-livingを展開。MakersUniversity3期生 / EO主催 GSEA2018 日本2位



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