いつ「非正規」という言葉が一掃されるか
既に皆様ご認識のとおり、我が国における労働生産年齢人口は減少の一途を辿っており、現在のところこれから人口が増加する予測はありません。
「いつ人材難が解消されるか」というと、当面はそれはないわけであり、j今後減少していくしかないので、「いつか」と言われれば、「今が一番人材が獲得できる」という状況と言ってよいでしょう。
これは本気で深刻に受け止める必要があり、国としても多くの政策を打っております。
喧々諤々の議論がありますが、年収の壁対策も同様です。
「働き方改革」も人口減少対策の政策
また、働き方改革自体も「長時間労働是正」が「目的」ではなく、そうした労働慣行が様々な働き手の労働参加の可能性を削ぐため、これを是正することで多様な人材の労働参加を促すという目的の「手段」の一つでした。
そして、これまで何度か書いてきましたが、同一労働同一賃金もまた、人口減少対策の一つです(詳細は以下をご覧ください。)。
根強い「正規/非正規」という”価値観”
上記のような個別の政策ももちろん大事ですが、政策の中身が書いてある部分以外にも着目すると、政策の意図が良く分かります。
ここでは、働き方改革実行計画の以下の文言をご紹介したいと思います。
働き方改革実行計画が公表された当時は、この文言がフィーチャーされることも多かったように思います。
しかし、実際に働き方改革実行計画に基づく各種政策の施行が始まると、「こうすれば違法にならない」といった場当たり的な対応に終始している印象があります。
実際、私も弁護士業務としては、そういう回答をしてしまっているところがあります(クライアントの関係があるのでご理解いただきたいところですが…)。
典型的に思うところは、やはり同一労働同一賃金の対応についてです。
感覚的には、最高裁が賞与、退職金について有期雇用労働者に支給しないことを不合理でないとしたことから「賞与、退職金は非正規には不要」という理解がされていたり(実際には事例判断なので必ずそうではないのですが)、手当の待遇差が実際には不合理と判断される可能性が分かっていたとしても、わずかな手当程度で争ってくる可能性が低いとして、そのままにしているケースが多い印象を受けます。
こうした対応の考え方の根底にあるのは、「”非”正規だから正規と同じにする必要はない」という、法的な根拠とは異なる”価値観”が理由となっているように思われます。
実際、長期間有期雇用社員として働ていて、無期雇用社員よりも熟練した社員に対しても、「非正規だから」という理由で、無期雇用社員よりも低い待遇としていることもあります。
人手不足になっても「”非”正規」と言っていられるか
私は、働き方改革実行計画の「非正規という言葉を一掃していく」という言葉は非常に重たいメッセージのように思います。
特に、人材難がどんどん進行していくなかで、今「非正規雇用」と呼ばれている働き手の活躍は必要になってくるでしょう。
その時でも「あなたは”非”正規です」と呼んで「正規社員」と差別した呼び方ができるか、疑問に思います。
(法律の文言でいえば)「短時間・有期労働者」をゼロにして全員無期雇用とせよということではありません。
ただ、場当たり的に政策に対応し、違法性を回避するよりも、これらの人材を「”非”正規」と呼ぶ価値観を早期に転換してくことがよほど重要に思います。