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出社回帰か、リモートワークか。これからのオフィスの在り方を考える。

皆さん、こんにちは。今回は「これからのオフィスの在り方」について書かせていただきます。

いまや世界中の人がリモートワークを経験し、働き方の選択肢が増えたと同時に、リモートワークでも仕事が十分成立することに気がつきました。これまではオフィスで朝から夜までずっと仕事をするということに何ら疑いを持っていなかった私たちが、働き方に柔軟性が取り入れられ、ワークライフバランスが改善し、働くことに対する満足度もどんどん高まっていきました。「働く場所を選べる」ということが、企業を選ぶ上で譲れない条件にまでなってきています。

当社でも、オフィス出社を週3日、リモートワークの日(リモデイと呼んでいます)を週2日とし、ハイブリッド型の働き方を継続して導入しています。

一方で、リモートワークによるデメリットや弊害にも直面している中、「出社するように」と圧力をかける企業も間違いなく増え続けています。これにより、企業と従業員との間で、認識のズレや摩擦が起こり始めていることも事実です。

シェアオフィス大手の米ウィーワーク、リモートワークを普及させた米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ。どちらも新型コロナウイルス禍以降のオフィス離れの潮流によって、経営の重要な局面を迎えています。

オフィスが不要というわけではない。ほぼ同じころ、ビデオ会議システム大手で、リモートワークを普及させた米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが自社の一部従業員に週2日の出社を要請したことが明らかになった。
幅広く在宅勤務を認めてきたが、リモート頼みでは生産性の向上に限界があると方向転換した。オフィスでのチーム作業の重みを再確認したといえる。株価が上場基準を下回り、対策として株式併合を迫られたウィーワークほど悪くはないが、ズームもコロナ下で膨らんだ需要の反動減で株価はさえない。

どこでどのように働くか
世界中で、オフィスの在り方の模索が始まっています。

■働く場所としての「オフィス」の再定義が必要

冒頭で述べたZoomは、「Zoomの会議では信頼を築くこともイノベーションを生み出すこともできない」と従業員向けに声明を出しています。既に信頼関係もあり、よく知っている人たちだけでコミュニケーションを取る分にはオンラインで全く問題ないのでしょうが、新しい従業員との関係構築や共同作業においてはオンラインだけでは限界があるということだと思います。

働き方が変われば、オフィスの役割も当然変わっていきます。働く場所としての「オフィス」は、

●チームメンバーとコラボレーションをする場
→チームメンバーとアイディアを共有し合ったり、共同プロジェクトの進行をスムーズに機能させる。
●チームビルディングを行い、チームワークを高める場
→コミュニケーションを通して、チームワークや一体感を醸成させる。
●異なるバックグラウンドやスキルを持つ人と交流する場
→自分と異なる考えやスキル・経験を持つ人と交流することで、新しいアイディアやイノベーションを発生させる。
●創造性を発揮する場
→クリエイティビティを発揮し、創造性を高めながらアイディアを解放させる。
●集中して作業を進める場
→仕事に集中できる作業空間として、生産性を向上させる。
●社内人脈構築促進の場
→上司、同僚、先輩後輩など、社会的な接触を促進し、人間関係の構築を行う。
●職場の文化を維持・発展させる場
→社内コミュニケーションを活性化させ、職場の文化を維持・発展させる。
●新入社員への教育やトレーニングの場
→経験豊富なメンターや先輩社員から新入社員への、知識や経験などの学びをサポートする。
●仕事とプライベートの境界を明確にさせる場
→リモートワークでは曖昧になりがちな仕事とプライベートの境界を明確にし、効率良く切り替えをサポートする。

などという定義をするのが良いのでしょうか。

出社をせずにリモートワークを希望する人の声としては、

  • 通勤にかかる時間や体力がもったいない

  • 仕事と家庭のバランスが取りやすい

  • 職場の人と毎日顔を合わせるのがつらい

  • 他の人の仕事の状況は分からないが、自分のタスク処理に集中できる

などの声があります。チーム全体の生産性や業務効率の低下を認識しつつも、出社よりもリモートワークを希望する人が実際には圧倒的に多いのです。その傾向を全く無視してしまうと、優秀な人材の確保がしにくくなったり、企業の多様性やダイバーシティへの対応が遅れてしまうことは明らかです。

一方で、企業としては、一部の人の生産性が下がるだけでなく、放っておくと会社全体の業績が低下するのではないかと、コロナ禍での働き方を継続することにリスクを感じている企業が多いはずです。だからこそ、世界中の企業を見渡してみると、「脱リモートワーク」・「オフィス出社回帰」が進んでいるのではないかと思います。

今後も、

  • 働き方の多様化は維持される(リモートワークという働き方の選択肢は残る)

  • オフィスの機能は維持されて多くの人が職場に回帰する

  • 会社全体の平均出社率が上がってくると、それに引きずられて職場に人が集まる

  • 顧客などの取引先が出社スタイルになると、それに合わせて従来の「オフィスに訪問する」というスタイルに戻る

という見方が大半のはずです。

会社の方針として「出社」を強く要請していくのであれば、オフィスに出社する意味付けや再定義が必要です。オフィスに出社することへの「目的」や「意味」を「再定義」「再認識」させる必要が出てきたと同時に、社員が直接顔を合わせて仕事をすることに対して、投資対効果が得られるような工夫が求められる時代になってきたとも言えます。

■自社に合った働き方を見つけるには

引用した記事には、

東京駅そばのリクルート本社オフィス。工事に1年4カ月かけたリニューアルが7月に完了した。セミナー室、ラウンジ、イベントスペース、食堂、カフェ……。大小さまざまな単位で従業員が対話し、つながるための施設を21ある全階にちりばめた。オフィスは集まってコミュニケーションをする場所。そう明確に位置づけた。
力作だ。投資したからにはフル活用かと思いきや、会社は従業員に出社を強要しない。あくまで選択肢のひとつだからだ。自宅とサードプレイス(サテライトオフィスなど)を加えた3つから従業員が自律的に選んで職場にする。21年から採用する考え方だ。出社率(全国)は平均4割という。

とありました。

人間関係を築き、コミュニケーションを円滑に取りながら仕事を進める「出社スタイル」か。
効率良く働き、プライベートとの両立もしやすい「リモートワーク」か。

このように選択肢があってどちらが良いのかを決める際、多くの場合は、その人が見たい情報しか見ないことが多いです。自分が置かれている環境の中での最適解は、決して他の人にとっても同じというわけではありません

大事なのは、以下のようなポイントです。

●選択肢を最初から狭めないそれぞれの企業や組織、チームにとって、その時々の状況に合わせて、働き方を選べる状態にしておくこと。
→業界や職種、仕事内容によって、チームメンバーとのコミュニケーションの頻度や集中作業の必要性は異なります。業務の特性に合わせて出社とリモートワークの比率を検討することが重要です。業界のトレンドや競合他社の動向、セキュリティなどのリスクにも目を配る必要もあります。成果が上がる場所を自ら選び、目的に合わせてそれぞれの裁量で工夫できる状態にしておくことも大事です。

●チームの方針を明確にし、理解を求める個人の意思を尊重しつつも、チームの方針を丁寧に伝えた上で社員の理解を得られるように努力をしていくこと。
→社員一人ひとりの意向を確認し、意思を尊重することが大事ですが、全員の希望を全て叶えることは現実的には難しいですし、個別対応には限界があります。柔軟な働き方は、社員の満足度やロイヤリティを高めることにつながりますが、チームの方針を明確にした上で、その背景や意図を丁寧に説明していく責任もあると思います。

●組織の同質性を極端に高めない自分と同じ働き方を人に強要する、同じ働き方の人だけを評価するなど、同調圧力を生まない風土にしていくこと。
→チーム間のコミュニケーションやコラボレーションを強化していかなければならない局面では、オフィス出社を奨励する傾向にあることは間違いありませんが、一方で、リモートワークでも効果的なコミュニケーションツールやシステムはありますし、円滑に業務が進められる環境を整備することはできます。「出社しない人はやる気がない」などと自分の価値観を押し付ける人が出ないように、適切な風土をコントロールしながら構築していくことが重要です。

出社かリモートワークかは一長一短ですが、リモートワークは管理職に求められる能力も高く、コミュニケーションコストやマネジメントコストがかかります。その分、仕組みやツールを活用しながらマネジメントを機能させていかなければなりません。そこへの追求がどこまでできるかが肝要です。

社員の多様なニーズに対応しながら、変化に対する柔軟性を持ちつつ、定期的に働き方を見直す機会、評価する機会を作り、企業のカルチャーや目指す方向性に合った働き方を“最適化”し続けていく必要があると思います。

■テクノロジーの進化による職場作り

記事の中には、

職場づくりの方程式では、テクノロジーの進化も変数となる。
アップルが24年に売り出す拡張現実(AR)ゴーグルは、かぶった場所が「オフィス」になる。ビデオ会議とは違う臨場感が、働く人を刺激するかもしれない。その名も「オフィス」という業務ソフトを手がけてきた米マイクロソフトは生成AI(人工知能)がまるで同僚になる働き方を唱える。

とありました。テクノロジーの進化は、働き方やオフィス環境に大きな影響を与えていきます。


 <働き方>

  • 業務の自動化や効率化が進み、社員がルーティンワークではなく、より価値のある業務に集中できるようになる。

  • 地理的な制約がさらに薄れ、世界中の人材を活用できるようになる。(グローバルなチームや外部の専門家との連携が増える)

    <オフィス環境>

  • 単なる作業スペースから、社員の創造性を発揮しやすい環境、イノベーションをサポートするような環境になる。

  • 社員の健康やエンゲージメントを重視するオフィス環境が増える。(心身のコンディションを整えたり、ストレス軽減のための空間構築など)

  • 地域に根差したサテライトオフィスが増える。

  • バーチャルリアリティや拡張現実(AR)を活用したツールが進化し、遠隔でも臨場感のあるコミュニケーションが取れるようになる。

  • 環境への配慮が増す中、持続可能なデザインやエネルギー効率の良い施設が増える。(再生可能エネルギーの活用など)


これらの影響を考慮しながら、企業や組織、個人は、テクノロジーの進化とともに、効果的なワークスタイルや働く場所を模索し続けていかなければなりません。こちらにも書かせていただきましたが、デジタル化が急速に進む中で、生産性や創造性を高めていくことが、企業の競争力に直結します。

何も多額の予算をかけて、最先端のオフィスを創ることだけが正解ではないはずです。それぞれの企業のカルチャーや、そこで働く従業員のニーズや働きやすさを考慮しながら、一人ひとりが能力を発揮しやすい環境とは何かを探求し続けることが大事で、そこに向き合い続けた企業が得られる競争優位性は予想以上に大きいのではないかと思います。


最後に改めてですが、オフィスには、「一体感や連帯感を醸成し、個人や組織のやりがいを向上させる機能」「アイディアを共有し合いイノベーションを生み出すきっかけを創出する機能」「企業のカルチャーや大事にしている価値観を共有し合う機能」「同じ空間でのコミュニケーションを通じて組織貢献を実感させる機能」などが存在します。

これからのオフィス設計、オフィス戦略に求められるポイントは、社員がオフィスに出社する意味を再認識し、通いたくなるような満足度の高い場所にしていくことではないかと思います。

オフィスの在り方は、人材の獲得や定着に直接影響を与えます。人的資本経営と同じように、オフィスも「コスト」ではなく「投資」対象であると捉え、その投資の仕方に工夫を凝らしていく必要があるのではないでしょうか。



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