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「圧倒的に独自性のあるアイデアがプロダクトの軸にあることで、価格戦略は成立する」 ー二極化する顧客の心をつかむ価格戦略

2021年7月6日(火)に開催したNIKKEI LIVE「二極化する顧客の心をつかむ価格戦略」では、加速する個人消費の二極化の中で、企業がどのように価格決定力を取り戻せばいいのかについて議論しました。

P&G、ロート製薬などで数々のヒット商品を手がけ、スマートニュースを大きく成長させた日本を代表するマーケターであるM-Force共同創業者兼Strategy Partners社長の西口一希さん、客単価を大幅に向上させることに成功したジュエリーチェーンのフェスタリアホールディングス社長の貞松隆弥さん、各企業の価格戦略などの専門領域でご活躍されているグロービス経営大学院経営研究科教授の嶋田毅さんをゲストにお招きしてお話を伺いました。聞き手は、大岩佐和子編集委員が務めました。

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参加者アンケートでわかったことは、値上げが許されるのは「商品価値が高いから」だと考えている方が多いということでした。

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ここで言われている「商品価値」について、登壇者の皆さんはさらに掘り下げて次のようなコメントをしていました。

−西口さん
プレミアム価格を成立させるための条件は、「アイデアがあるかどうか」だと僕は思っています。ここで、ビジネスで売れる売れないを左右する「アイデア」とは何かと考えると、顧客にとって何らかの「便益」があり、かつ、その商品サービスにしかない「独自性」があることだと思います。

実はこの「便益」と「独自性」が、プレミアム価格を正当化する成立条件になっています。便益があることは「継続的に使う・買うかどうか」ということの軸になります。便益性が高まるほど、継続的に使う・買うに値するものということです。そして、独自性があればあるほど代替するものがないので、それに対して価格プレミアムを払う顧客は増えます。

つまり、便益と独自性が強ければ強いほど、価格プレミアムが正当化できて、価格戦略が成立するということです。便益と独自性を見出してくれる顧客が本当にいるのかどうか、顧客と商品が提供する便益と独自性の関係性で、価格プレミアムは決まるということになります。

−嶋田さん
高価格を実現する方法論はいくつかありますが、もの単体で高価格を実現することはもうできないと思ったほうがいいと思います。サービス、経験・体験などによって価値をつけることで、提供価値をしっかりと構築していくことが高価格実現の1つの方法論だと思います。

ライザップの事例では、ライバルに先駆けて新しい価値提案をすることで、30万円近い価格を実現したことは業界的にはかなりの驚きでした。それまでのジムにはなかった「結果にコミット」というユニークなキャッチコピー、そして、マンツーマン指導で30万円という値決めも良かったと思います。人間には自分の意思決定を合理化したいという心理が働くので、30万円も払うと一生懸命に頑張りますから結果も出やすくなりますし、もし何かあったとしても「自分の判断は間違っていなかった」と思いたくなるものなので、そのあたりの心理をうまくついたと思います。

資生堂は「ブランドの価値を高める」という戦略で、低価格帯の商品事業をあえて売却しました。幅を広げるとブランドのコントロールが難しくなるので、あえて高価格帯に絞り込み、徹底的にその層の顧客に提供価値を実現していくことで、価格を維持する戦略に出ました。そのような取り組みがロイヤリティの高い顧客を維持し、差別化によって競合に強くなり、高マージンを実現できるなどの効果をもたらして、結果的に売上げや利益を上げることにつながったと思います。

−貞松さん
ジュエリー業界はグローバルなマーケットですが、半分がダイヤモンドマーケットです。残り半分がパール、ルビー、サファイアといったものになっています。世界のダイヤモンドのシェアの80%強は、ラウンドブリリアントカットというたった1つの形態です。これは100年前にできたカットで、100年前の理屈で「こんなふうに研磨するとダイヤが1番輝く」ということになっているわけです。ダイヤの価値は理想的なカットのプロポーションで決まります。人が研磨するので、その通りにできませんから、ずれた分だけ価値が落ちる。これが100年間のゲームのルールだったわけです。ところが、今は輝きをデジタルで測ることができます。それならば、今の世界基準でもっと輝くダイヤモンドを作れば勝ちだということですよね。

そしてもう1つ、今のお客様がダイヤを選ぶ理由、ニーズの変化があります。今は精神的な意味でダイヤモンドを買う人が増えています。世界中の人が共感する精神的価値を表現するモチーフは何だろうと考えたとき、「星」だと思いました。太古の昔からか人は星を見て様々なことを知り、決めてきました。結果、現在では国連加盟国の約半分が星のモチーフの国旗をもっています。世界中の人が星に願い事をしているわけです。それでダイヤモンドの中に星が浮かばないか、単純にそういう発想になりました。

100年前のルールでそれが正しくないとすれば、今のルールで一番輝きのあるものを作れば、そこにブルーオーシャンがあると思いました。そして、今の人たちが購入する選択肢のモチーフを押さえていれば、絶対に売れるはずだと考えました。すると、想像以上に世界中からオーダーが入ったというのが現状です。


さらに、参加者の方からの質問をきっかけに、積極的な議論も行われました。

参加者からの質問:価格戦略について、設定する場合どの程度までは妥当なのか、目安や考え方について聞きたいです。

−嶋田さん
まったく同じものを急に値上げするのは、さすがにあまりないかなと思います。ちょっとした便益でも、ちょっとした新規性でもいいので付け加えた上で、少し高い値段で売ってみたらどうなるかを見てみるところから始めればいいと思います。いろいろな工夫の仕方があるので、勘に頼るのはやめたほうがいいとは思います。

参加者からの質問:安かろう悪かろうというイメージを変えたい、もの自体はすごく良いのに良さが伝わらない、どうしたらいいでしょうか。

−西口さん
まず「良い」と思っているのは自分たちで、顧客も「良い」と認識する便益と独自性がそこにあるのかどうかを冷静に見たほうがいいと思います。もし、顧客が便益と独自性を見出せるものになっているのであれば、それがちゃんと伝えられていないということです。どちらに課題があるのかを最初に見極める必要があるので、商品に対する評価を顧客に聞くのがいいと思います。例えば、そこで初めて商品の良さを理解した顧客が「買いたい」となったならば、それはコミュニケーションの問題だったということです。訴求の方法を顧客が理解できる形に直せばいい、とわかると思います。

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西口一希さん
M-Force 共同創業者 / 
Strategy Partners 社長

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西口さんのプロフィール】
大学卒業後、P&Gジャパン、ロート製薬を経て、2015年ロクシタンジャポン社長、メルヴィータジャポン社長、アジア人初のグローバルエグゼクティブコミッティメンバー。スマートニュース執行役員マーケティング担当(日本・米国)を経て現職。


貞松隆弥さん

フェスタリアホールディングス社長

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貞松さんのプロフィール】
1961年生まれ、長崎県出身。成城大学卒業後、1986年、家業である株式会社サダマツに入社する。2008年代表取締役社長に就任。2018年3月にフェスタリアホールディングス株式会社へ商号変更。


嶋田毅さん

グロービス経営大学院経営研究科教授

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【嶋田さんのプロフィール】
東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファームに入社、業界・企業分析や戦略の立案、実行支援を行う。その後、外資系理化学機器メーカーを経てグロービスに入社し現職に至る。主に出版、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当。


大岩佐和子
日本経済新聞編集委員

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【大岩編集委員のプロフィール】
1996年入社し、流通業の取材を5年間した後、地方行政の担当に。2013年から再び流通業を取材。日経MJデスクを経て、2018年4月より現職

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