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「USPの教科書」 For フリーランス / 選ばれる存在になるための唯一の考え方

「USP」とはなにか。

皆さんは「USP」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。USPという言葉は もうすでに「マーケティング用語」として扱われているスタンダードなビジネス用語ですが、SEOのように名詞化されているマーケティング用語でもあります。

SEOも「S(サーチ)E(エンジン)O(オプティマイゼーション)」の頭文字をとってSEOですし、そのような用語というのは結構あるのですね。 そしてこういうマーケティング用語は一度「名詞化」されると その意味も抽象化されて広まるようになるので、「なんとなくこういうことだと思うけど...」というニュアンスで受け取りがちです。すごく意味が"あいまい"になって広がってしまうのですね。

そのように「曖昧に言葉だけが広がってしまう」と「なかなか自分では作れないもの」とか「専門家に高額な費用を支払って作ってもらうもの」というようなイメージになりやすくなります。

しかし本来USPは、その「USPそのものの意味」を知ることで、そしてUSPが「どんなビジネスにも必要である理由」を理解できれば、自分で自分のUSPを作っていけるものだと、私は思っているのです。

そしてそのように自分のビジネスのUSPを考えて、すでに明確なUSPを持っている企業やフリーランスがどうなっているかというと、そのジャンルにおいてオンリーワンポジションに成長したり、少なくとも「お客様に選ばれる存在」になり得ています。それだけUSPには「選ばれるべき力」があるということだし、価値が高いものだと思うのです。

その理由は つまり、USPによって 結果として”競合と比べられにくいブランド力”を持つということになるのでしょう。それはある意味においてはブランドとも言えるのかもしれませんが、わかりやすく言い換えると「自分だけの価値が顧客に伝わる」という状況を手に入れるということなのでしょう。

↑   ※サービスのUSPを事前に理解してもらえるように改変してリブランディングを成功させた「やる気スイッチグループ」の例。

USPが伝わっていない日本のビジネス

今ほとんどの中小・零細企業はUSPを持っていません。 日本の企業のほとんどが中小・零細企業ですから、つまりはフリーランスを含む日本の事業体のほとんどがUSPを打ち出していない。と言うことになります。

この現状はフリーランサーにとってはチャンスでしかない。マーケティング先進国のアメリカでは USPはもう当たり前の戦略です。でも日本はUSPよりも、どちらかというとスローガンのような内向き(社内向き)な発信が好きな傾向があります。それはそれで素晴らしいことだし、社内協和を考えると特に大きな組織においてスローガンはとても重要でしょう。

そういう意味でいうと「USP」は外部向き(顧客向き)です。まだ出会ってない人に向けて「自分の会社や商品を選択していただけるように」発するもの。それがUSPということになります。

それではここで、簡単にUSPの意味をお伝えしようと思います。USPの言葉の意味を知ることに大きな意味はないのですが、その本質的な部分に触れるための言葉レクチャーだと思ってください。

USPの意味はこうなります。

U ユニーク S  セリング P プロポジション。 これらの頭文字をとって 「USP」というのですが、訳を日本の文法に合わせると、ちょっと順番が違ってきます。
これは私の我流思考ですが、私の優先順位としては P -U -S の順です。だから「プス」という順番になるんですけど、ちょっと間抜けな感じになります。(笑)せっかくなので今回はこの「PUSの順番」で説明していくとしましょう。


P プロポジション 

これは「提案」ということです。 ビジネスというのは みんな「消費者」に対して何らかの「提案」をして成り立つわけです。提案するか商品を棚に陳列するか。商いというのはその2つでしか動機付けができないのです。 そしてどんな提案をするかということにより、それを買うか買わないかが 顧客の判断によって決められてしまいます。

つまり、ビジネスに「提案」というのは 絶対に必要なものだということです。だからどんな提案をするのかということが一番最初にくるべきなのですね。

USPというのはある意味「提案そのもの」です。
その提案をどんなものにするのかというのが、その次の UとSになっていくと、そういうことになるのですね。


U ユニーク 

これは「独自のものである」ということです。 言葉の意味としては「個性的」とも捉えられますが、ここでは「独自」とか「他にないもの」と考えてください。

「提案」がビジネスにおいて一番重要だと先ほど書きましたが、 その提案が、競争相手(競合)が示せないもの、または理由あって示さないものでなければならないということです。

それが「ユニーク」の定義です。他ができないことを自分が打ち出すことで、その提案は力を発揮するという考え方ですね。


S セリング 

これは「強みによって売る力」のことです。セルのing形ですね。
この言葉をネットなどで調べると「売り込む手段」という表現がでてきますが、どちらかというと「売り込む」ことではなくて「買いたいと思わせること」だと私は考えています。

”その人が買うか買わないか”と、こちらがコントロールできないことを考えるのではなくて、「絶対に買うべきものだ」という相手の感情を動かす力をつくり出すというスタンスで考えるべきですね。


それらが それぞれ U・S・P の意味を分解した説明になりますが、皆さんのビジネスの「提案」が、他にはない独自性であり、それを知った人の感情が「あ、これ欲しい」となる。

それがUSPであり、その状況を生みだすことこそが「USPの目的」なのです。

USPはなぜフリーランスに必要なのか。

今、日本に会社は約380万社あります。そしてその中の99.7%が中小企業と零細企業です。そして会社ではないフリーランスの数はというと、1,577万人だと言われています。これはランサーズ株式会社さんが発表した数字ですね。しかも1年平均で おおよそ毎年100万人近く増えています。

中小企業は別にして、フリーランスがこれほど多くなってくるとフリーランサー同士の競争が激化していくことは必然です。そしてその必然はすでにそうなっているといえるでしょう。

しかもフリーランスは基本的に「スキルを売る仕事」である場合が多い。だからビジネスを費用対効果で考えるというよりも、できるだけ費用を使わずに 自分のスキルや知識をもとに安定した収入を得たいという考えが多いのも特徴です。

だから当然ながら「同じことを仕事にしている他のフリーランス」がたくさんいるのです。しかしそれは仕方がないのです。フリーランスには入社試験がないのです。誰でもなりやすく、その意味では最初のハードルを低くしていますから同じように低いハードルから入ってくる人がいっぱいいるのはある意味仕方がない。

だから 同じようなサービス、同じような商品が混在する市場。それがフリーランス市場だと言えるし、少なくともフリーランスの人はそう思った方がいいのです。 そしてそのサービスを買ってくれる側の人は、このインターネットの時代によって「そのたくさんある”同じようなサービス”」を比較して、そして検討していく条件を持っている。そういったことが当たり前の環境が現代なのですね。
皆さんもネットで何かを購入するときはそうでしょう。それがもう当たり前の時代。それがインターネット時代。つまり現代なのです。

フリーランスの3大難儀。

インターネットがフリーランスに与える影響は他にもあります。 それが「膨大な超情報社会」というもの。毎日毎日スマホを見ると膨大な情報が目に入ってくる時代。SNSやニュースサイトを通じて、とんでもない量の情報を現代人は毎日処理しているのです。

そしてその情報の中で「これは好き」「これはいらん」と無意識に脳が情報処理をしています。その情報処理の行動は、SNSを見ながら”興味のない人”や”興味のない商品”の情報をスルーするという行動になっていきます。
興味のある人や興味のある商品については 一瞬止まって「いいね」したり、「サイトクリック」したりするでしょう。でも興味のないものはスルーする。またはスクロールするという除外行動をとるのです。

一説では「興味のないものをスルーする時間」は0.4秒だという専門家もいます。 例えばSNSを見ながらスクロールしていく中で、興味がないものは0.4秒でそのままスクロールされてしまう。それって結構厳しい現実でもありますよね。でも今はそんな時代なのです。

もう目から入る情報が多すぎるのです。その多すぎる情報を現代人は毎日処理しているのだから仕方ないのかもしれません。

今の話の中で私は3つのことを書いたのですが、それがこれです。


[フリーランスの3大難儀]

1.「同じようなサービスを提供している競合がどんどん増えていく」

2.「インターネットによって 消費者が 比較検討ができる」
3.「興味のない情報はスクロールされる」

この3つが、フリーランスビジネスの「3大難儀」です。 フリーランスビジネスの難しさ(難儀な点)ですね。

それではこの3大難儀をどうすればいいのかと言ったら、それを解決してくれるのが USPです。

膨大な数いる「同じようなサービスをしている人」と「自分は同じじゃない」と知ってもらうことです。「他のみんなとの違い」を打ち出すこと。そしてそれを「USP」として表現することです。

自分だけのUSPをつくることで「たくさんいるうちのひとつ」から脱却して、そのジャンルのオンリーワンだと思っていただく。これは「自分が思うだけ」ではなく「思ってもらう」ということが重要なのです。

まとめますと、それが「USPが必要な理由」だと言えます。 そしてそれと同時に、あなたがUSPを「つくるべく必要性」とも言えるのかもしれません。


USPとスローガンは違う。

そうは言っても、USPの目的は 基本的には「宣言」ではなく「提案」です。そのニュアンスの違いを知っていないと、一生懸命考えてUSPをつくっても、それがUSPではないものになってしまうケースがあります。

私の経験でいうと「実際にUSPを作ったので見てほしい」と言ってくる人の中で、だいたい半数くらいはUSPになっていないと言えます。

先ほど私は「USPは宣言ではな提案だ」と言いました。 宣言というのは基本的に主語が「ジブン」です。それか、自分のマインドや心意気などを言葉にして発信するケースもあります。

例えば、”私は「なになに」をします!”とか、僕はこうですこうでいたいです。という感じ。つまり「宣言」ですね。どうしてもスローガン気質の人の多い日本人は、傾向的にスローガン化してしまいがちなのでしょう。そしてそのスローガンを表現することが上手でもあります。

それではここで有名企業のスローガンとUSPを見てみましょう。

まずは図の「スローガン」の方(左側)をみてほしいのですが、例えば マクドナルドの I’m lovin’ it。もうこれなんかは最初に「I am」と言っていますからね。主語はそれを言っている側、つまりマック側ということ。主語が自社ということはこれは「宣言」であり「提案」ではありませんね。

ナイキは JUST DO IT!  これは日本語にすると「さあ、やってみろ」というような意味なのですが、ナイキというメーカーはそういう精神で会社を運営していますよという、ある意味 自社マインド宣言のような意味ですね。少なくともUSPではないです。提案になっていないですからね。

ライザップの「結果にコミットする」というのは USPなのかスローガンなのかと、一度社内でも議論になったのですが、これは基本的にはスローガンですね。 スローガンではあるのですが、それをマスメディアで訴求することによってその言葉をUSP化させることに成功した例だと思います。CMのビジュアル戦略とスローガンを合わせて、宣言を提案に変えてしまった例でもありますね。それを実現させるためにはメディアに訴求する馬力が必要だから、資金力が必要な方法なのかなとも思いますね。


それでは次に有名なUSPを見てみましょうか。有名すぎるUSPで申し訳ないのですが、今回はそちらを例にしてお伝えしたいと思います。


超有名なドミノピザのUSPと、ダイソン・アップルがここに書かれていますが、今回は一番上のドミノピザで説明していこうと思います。

熱々でジューシーな出来立てピザを、お宅まで30分でお届けします。1分でも遅れたら料金はいただきません。

これ、今の時代ではピザ屋としては当たり前のサービスでもあります。だからもしかしたらこの記事を読んでいる人の中にはピンとこない人がいるかもしれないのですが、どこもこんなサービスをやっていない時代のUSPですからね。Uber Eatsとか当時は無い時代のUSPです。デリバリーのピザ屋はあったけど、だいたい1時間以上は待つのがスタンダードだった時代のピザ業界だと思ってください。

これは明らかに「提案」ですね。こういうサービスを使ってみませんか?という提案。どこに向いてるかというと、それは消費者にです。それを買ってくれる人です。その消費者に対して「提案」したものになっています。

イメージとして伝わるといいのですが、宣言ではなく提案というところがUSPのキモです。自分のUSPをつくるときは、書き出したUSPを眺めて自問自答してみてください。これは提案なのか、はたまた宣言なのか。ということを。


そして私はいつもUSPをつくるときや、人のUSPを目にしたときには USP分解 という方法を使います。USPを分解することで、そのUSPのメカニズムを整理することができます。このUSP分解という方法は「つくるため」ではなく「学習すること」が目的です。言葉化するための感覚を磨く意味でも習慣にすると効果的です。


USP分解の例

USP分解とは、それぞれの Uと、Sと、 Pに 分解して、そのUSPを考えてみるのです。実際にUSPを作るときもそうですが、教えるときなどのケーススタディーはこうすると作りやすくなります。

ここはUSPの順になっていますが、先ほどの PUSの順でいうと Pが提案で、Uが他が真似できないこと。 Sがウリにしている強み という分解で考えていくといいでしょう。

最終的にUSPをどんな表現にするのか。キャッチコピーのように短い言葉でいくのか、ストーリー的に読んでもらうのか、それはどういう狙いでもいいと思います。しかし、このUSP分解はしっかり時間を使ってできるように考えていくことが大切です。それがUSPを作っていく上でのコツみたいなものなのかもしれません。 皆さんもUSPをつくるときには、ぜひこの「USP分解」をやってみてください。USPに対して、考え方の整理がついてくるはずです。

競合との”差”を出すのではない。 競合との”違い”を出すのだ。

「差」ではなくて「違い」を考える。ということ。 実はこれが「お客さまに選ばれるため」に必要なキーワードみたいなものになってくると私は思っています。私の経験上、「他との違い」を先に意識した方がビジネスの成功率も圧倒的に高いし、競合がたくさんいる職種なら尚更だと思いますね。それでは「差ではなくて、違い」について説明していくとしましょう!

一般的に、競合が多いジャンルでビジネスをするときに、他と比べて何か優位に立ちたいと思うはずです。そうしないと売れない気がするし、選ばれる人というのは何か大きな強みを持っているように感じるモノだからです。

そしてそれは金額の場合もあるし、サービスの質とかデザインとか。それが何にしても、そういう優位性を出そうとするところで普通は競合やライバルと張り合うわけです。そのジャンルで一番売れてる商品とか、人気のあるものや人とか。そういうものと自分を比べて、そしてその差が少しでもなくなるようにしたいわけです。

イメージ事例(ダイエットジム)

例えば、ライザップみたいな ダイエット系のパーソナルジムをやっている人がいたとしましょう。それでその人の店の近くにライザップがあって、しかもそのライザップはすごく繁盛しているとしましょう。そして自分の店はライザップの半分も売れていないとします。よくある話です。

そうすると引け目というか、なぜかわからないけどライザップよりも安くしなくては売れないと思ってしまうのです。例えばライザップが40万円のサービスと同等のサービスを25万円で出したりとか。これ、実は売れないパターンに陥った思考なのです。

これは競合のライザップに対して金額の「差」によって顧客に来てもらおうとしたということであり、結果として「ライザップを中心にして 差を考えてしまった」ということなのです。

ビジネスで重要なのは、差ではなくて「違い」です。この例でいうと、ライザップとの違い。「それを買ってくれる人にとって、ライザップと何がどう違うのか」ということを考えなければいけないのです。
だって、そのジャンルはライザップがもうアンカーポイントでしょう。アンカーポイントであるということは、もうライザップの価格が標準価格として認知されているのです。

安くすれば売れるかもしれない。それはもう幻想なのですよ。安くても価値がないものに人は財布の口を開かない。金額で「差」をつけようとしてもそれは「自分には価値がない」ということをアピールしているのと同じことです。

家の近くの八百屋で CHANELのバックが3,000円で売っていたら買いますか?買わないでしょう。「何かあるなこれは...」「絶対に偽物だよな」と思うのですよ、普通買う側は。

ではどうするかと言ったら、「違い」をつくるんですよ。「差」を考えるのではなく「違う部分」を打ち出すことですよ。

例えを出した方がわかりやすいと思うので感覚的に例を出しますが、例えばライザップと同じかそれ以上のサービスを「家まで訪問してやります」とか。それは「差」ではなく「ライザップとの違い」にフォーカスしていることがイメージできるでしょうか。

もうひとつ言うと、ライザップはいろいろ器具を買わないといけないけど、当店は家にあるものを使ってトレーニングを組み立てます。とか。とにかくそれを買う人にとって「何が違うか」という、ライザップとは違うアプローチが必要だと思うのですよ。ちなみにライザップが器具を買わせるかどうかはわかりません。言いたいのはそこではないのでそこはご判断くださいね。

「差ではなく、違いを打ち出す」。つまりそれは、それを買う人にとって「いいころ合いの違い」を見出して、競合との明確な「違い」を言葉でUSPとして表現することです。それが 競合ひしめくフリーランス市場で生きていく方法だと私は思うし、実際に自分だけのUSPを組み立てることで苦難から脱却した人をたくさん見てきています。「差」ではなくて「違い」。競合と自分を見比べたときに、その差よりも「どこか明確な違いが打ち出されているか」ということを考えるべきでしょう。


USPのボツ事例から読み解く

ここでUSPの「事例」を一緒に見ていこうと思うのですが、この事例は私の会社が「ボツにした」USPになります。 なぜボツにしたUSPをここで使うのかというと、その理由は2つあります。

ひとつは、著作権の関係です。私がつくったとはいえ、今は顧客が使っているUSPですし、ネットで検索すればすぐにわかってしまいますので、契約上使えないという理由ですね。

もうひとつの理由は、ボツ作には「ボツになった理由がある」からです。 USPを作っていくということは、ある意味「ボツ作の山を作る」ということでもあります。つまり、ボツの山の中からいろんな意味やフレーズを引き抜いていきながら完成させるものだと私は思っているということですね。

そんな理由で今回は実際に私たちが出したUSP事例について一緒に見ていきたいと思います。


USPのふたつのカタチ。

USPには大きく分けてふたつのスタイルがあります。 ひとつ目は「ベネフィット型」と言われるもので、ふたつ目は「ギャップ法型」と私が呼んでいるものです。

もちろんUSPのパターンはこれだけではなく、もっといくつもあるのですけどね。基本的にUSPというのは自由なのです。どんな方式かとか、どんな表現かは自由。そこに型をはめ込まない方がいいと思います。 USPは相手に「刺さる」ことが目的。相手の動機に直結することが目的です。カタチに捉われないようにしたいのですが、それでも白紙のままだと考えにくいからやむを得ず型を使うという考えでいてほしいと思います。

そして今日は「文字で表現するのUSP」について言っていますが、動画だっていいし、音声だっていいんです。 「どんな方式で発信するのか」を第一に考えるのではなくて、何を発信するのかを考えることがUSPづくりにおいて重要です。

今日はその意味を知ってほしいので、これから紹介する2種類をピックアップして説明しようと思います。両方とも、弊社スタッフの「不採用作」をいれています。


[ 題材①ベネフィット型 ]

まずベネフィット型。 これは、USPというよりもキャッチコピーとして使用されていますが、これはUSPの要素もあるので紹介しておきます。

「こどもといっしょにどこいこう」という、だいぶ昔のステップワゴンのキャッチコピー題材にした勉強会で、それをスタッフがUSPに変換させたサンプルです。

まず、ベネフィットというのは、それを買った後で手に入る「自分へのいいこと」のこと。

結局人は、商品の機能やスペックではなく「買った後に自分にやってくるいい未来」がほしくて買うのだという考え方を"ベネフィット"と言います。ベネフィットについてはVoicyでも詳しく話していますので ぜひアーカイブ放送を聴いてみてくださいね。


さあ それでは、少し恥ずかしいけど弊社のボツ案をご覧いただきましょう。これです。

[ USP ※不採用 ]
私があなたにお届けするのは、 このステップワゴンと「忘れられない家族の思い出」です。 星野リゾートの宿泊券ご家族分とご一緒にどうぞ。


※ボツになった理由を考察


全体的に少し長いですよね。長いことがダメだとは言いませんが、長ければ長いほど読んだ瞬間のインパクトがより必要になります。ドミノピザのUSPも長いですが「瞬間的なインパクトが強い」ので効果を発揮していると言えますね。 あと、空想の特典(星野リゾート)を付けたこともボツになった理由でしたね。 それではUSP分解を見ていきましょう。

Uは 特典ですね 星野リゾート。 Sは 家族で旅行に行けるだけの大きい自動車 そして「提案(P)」は この広い車で一生の想い出づくりしませんか?

このUSPは、もしかしたら文字の一行の長さが見にくくさせてるかもしれませんね。もう少し改行がスッキリしてたら、また違う印象を与えたかもしれません。USPはつまり印象的かどうかが重要なのです。改行ひとつで印象が変わるのなら、その改行までも考えるべき要素だということですね。



それでは続いて「ギャップ法型」について解説していきましょう。

「ギャップ法」というのは、ベストセラーになった「伝え方が9割」という書籍を書いた佐々木圭一さんがその本に書いた手法なのですが、


ギャップを使うことで、その言いたいことが「強調化される」という方法ですね。有名なギャップ法表現としては「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」という、踊る大捜査線で織田裕二が言ったやつですね。

この言葉で言いたいことは「事件は現場で起きてるんだ」というところですが、あえて「会議室うんぬん」を先に入れることで 言いたいことを強調させるという方法。それがギャップ法という手法です。

それではギャップ法の題材をご覧いただきましょう。


[ 題材②ギャップ法型 ]

このプロジェクトにおけるUSP案(不採用作)はこちらです。

 ウチの商売は野菜を売ることじゃない。 野菜を通じて、地域の皆さんに 健康とおいしさを届けることだ。

◯◯下町の八百屋 ◯◯。



※ボツになった理由を考察

少し抽象的なんですよね、提案が。UとSは多少抽象的でもいいと思いますが、提案(P)が抽象的だと来店動機に繋がりにくくなってしまいます。 なかなかいいセンいっていると思うのですけどね。この言葉に響く人はいると思いますが、八百屋に来店する動機には繋がらない印象ですね。

実際の店のユーザー(来店客)はその地域に住む人で 野菜を買いに来る人ですからね。そういう意味ではUSPの特に(P)が弱いという判断です。

しかしながら組み立て方はいいと思いました。横に書いてあるスローガンもわかりやすくて明確だし、惜しい!という意味でここに記載させていただきました。

それでは一応USP分解も見てみましょうか。

Uは 八百屋としては独特の世界観     Sは 健康にいい野菜を売っている     Pは 野菜を通じて「健康」を提案します

このようになります。 何度も言うようですが このUSP分解という作業は重要なので、私はボツ案でもできる限り分解してみるようにしています。そうすることでボツ案からも思いがけないヒントが出てきたり 気付きを得ることがあります。ぜひ皆さんもこの「USP分解」を積極的にしていってくださいね。



あなたのUSPをつくろう。

さあ、ここからがUSPを実際につくる準備というところに入っていくわけですが、まず最初にUSPを考えるときに整理しておくことがあります。それは 今あなたがいるジャンル(または業界)で「まだ満たされていない欲求」という点に着目するということです。

USPの切り口はいろいろです。これという決まりはありませんが、少なくとも「まだ満たされているものではない」という点がキモです。それを必要としている人にとって、それが満たされていないからこそ提案が「新しい」という考え方ですね。

上の図の右側に「USPの切り口」の例を8項目書き出していますが、実際はこれ以上の切り口があります。ここに書かれているのは主要な例だと思ってください。

USPというのは「そのジャンルの隙間を埋める」という考え方が必要です。何も特別なサービスを考えることだけじゃないし、どこよりも安い値段をつけることでもない。いろいろな切り口のもとでそれらをクロスさせてあなただけの新しい価値を作り上げ、そしてそれを言葉化したものがUSPです。

あと、USPというのは必ずしも「その商品の価値」である必要はないということですね。「ある必要はない」という意味は、あってもいいし無くてもいいという意味で捉えてください。

例えば ドミノピザの本質的な価値は「美味しくて本格的な出来立てピザ」ということですが、ドミノピザは「美味しい」ということをUSPにはしていませんね。

他にもアメリカのノードストロームという「ノーと言わない」ということで有名な百貨店は、その品揃えやブランド力を使ったUSPではなくて「レシートがなくても返品可能」という部分で他ができない独自の提案をしています。

商品や品質を中心に考えるとかなり限定されてしまいますが「お客さまが求めること」を中心に考えると、もっと幅広くいろんな案が出てくるものです。

実際に私がつくるUSPは、傾向としてあまり商品のことを考えずにやる傾向があります。それが私のスタイルといえばスタイルですが、私はその方が幅が広がると思えるのですね。まあここは人それぞれです。

最も大事なことは、お客さまが不満に思っていることは何か。それを解決することは何か。そこから考えていくことです。例えば、返却が面倒くさいと思われているサービスなら「返却しなくて済む方法」を考えてそこからUSPを組み立てていくなど、何がしかの「顧客不満」を知恵と工夫でクリアにすることで「他との違い」が明確にできることもあるのです。



作成ツールの紹介

ここからは実際に私が提供しているマンツーマンUSPという、USPを作るためのコーチングメニューで使う工程ツールをみながら、ご自分でUSPを作っていくイメージをしていただきましょう。 それらのツールをここでは表にして載せていますが、実際はオンラインで送受信できるようにNotionフォーマットにしています。ここではわかりやすくシート化して掲載していますので予めご了承ください。これはサンプルと思ってください。



[ USP グリッド ]


このツールは「USP グリッド」というフレームワークシートです。USPをつくる上で一番最初に使うツールがこの「USPグリッド」です。 基本的には最初に使うツールとして存在するのですが、私は個人的にこの「USPグリッド」で最終形まで持っていくことが多いといえます。いろんなツールを使いながら最終的にここに落とし込む形で私は使っています。

主に、「知る」→「想う」→「創る」→「動く」という工程で考えていくのが私のやり方です。これはUSPだけではなくコンセプトメイクも同様な工程で組み立てていきます。


[ スキマピックアップシート ]

続いて「スキマピックアップ」 というシートです。これは9×3の変形グリッドのフレームワークで、「今あるものではなくて自分が提供可能な未来の提案を考案するシート」でもあります。

そこで考えた提案をいつも、そしていくつも考えることで、あなたのUSPをグレードアップできるという、そのための準備ツールになります。


[ ベネフィットシート ]


これはベネフィットシートと言いまして、USPには直接は関係ないのですが、ベネフィット自体はUSPを作る上でキーポイントになり得る価値あるものであるということで、このシートを使う人が多くいます。

すでに自身のベネフィットが明確になっている人はこのシートは使わなくても結構ですが、実際のところベネフィットを更に明確化していくために使う人が多いというのが現状かと思います。


[ 別の土俵 ] ※図表

これは「別の土俵」という 私が大事にしている考え方なのですが、ここではシートではなくて図表を出しています。 競合と同じ土俵で勝負するのではなく「別の土俵」をつくってそこで仕掛けるという考え方ですね。これは「他との違い」を出すためのシートですね

※「別の土俵」を呟いたツイート



[ その他 Pickup ]


ひとりブレストシート

上の表は「簡易ブレストシート」。 下の表が「ひとりブレストシート」です。自分で自分のブレーンストーミングをやるためのもので、頭の中を整理するために何度でもやる人もいます。私はもうトータル100枚以上書いてますね。

しかもこれはUSPだけではなく、いろんな用途に使えますので使われる頻度が高いシートでもあります。

自分で自分のビジネスを客観視する上で必要なツールです。

※この記事でも「ひとりブレストシート」について説明しています。



今回はここまでとさせていただきます。ここで紹介していないツールも含め、現在は全部で16ツールあります。ヒアリングの段階で私がチョイスすることもありますし本人の希望で すべてのツールを段階を踏みながら使う人もいます。

逆に「USPグリッド」だけで、あとは真っ白い普通のノートを使う人もいます。そこは自由です。

目的はUSPを完成させること。これらのツールはその道具に過ぎません。ツールを使わずにできればそれでいいし、USPをつくって見込み客に「自身の強み」が伝わればいいのですから。

いずれにしても、いろんな情報やいろんな方法論を駆使していきながら、USPというものを組み立てていくことが重要なのです。



そうでなくても競合の多い、競合が増えているフリーランスの市場です。 その中で、その多くの中で お客さまに自分を選んでいただく。

それは簡単にいうと「他とは違う何か」を発見して、それを打ち出すということです。そしてそれを、言葉にして明確に発信する。それがUSPの役割です。

ぜひ皆さんもこのUSPをつくってください。そして、多くのフリーランスが食えないなんて風評を打ち破ってほしい。 今回この記事は「 USPの考え方・つくり方」について書かせていただきました。 間違いなくUSPは、フリーランスとしてのあなたに「選ばれるべく権利」を与えることでしょう。なぜならば、あなたという「価値」を世の中に提案していくもの。それが「USP」だからです。

フリーランスが増えていき、フリーランスの時代にこれからなっていくでしょう。そんな中、ブレイクスルーするために頑張っているフリーランサーに少しでも持ち帰ってもらえるものがあるなら、この記事を書いた甲斐があるというものです。こんな幸せなことはありません。

フリーランサーの皆さんのUSP。それをお目にかかれる日を、私は心待ちにし、そして楽しみにしています。


マウスコンピューターがブランドのUSP(独自の特徴)として掲げる、「国内生産」「豊富なラインアップ」「24時間365日サポート」を紹介する30秒の動画を用意した。これをTrueViewインストリーム広告や「TrueViewアクション広告」を使って配信している。


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