Z世代にアナログレコードブーム到来。デジタルネイティブに刺さる「不便益の法則」とは
今、トレンドに敏感なZ世代を中心にアナログレコードの人気が高まっています。
こちらの記事では、ストリーミング配信やサブスクで音楽を聴いてきた若者にアナログレコードがよく聴かれていることが示されています。
たしかに最近、僕のまわりにもレコードを家に置いている人が増えているように感じます。SNSではレコードをおしゃれに部屋に飾っている投稿を見かけますし、店頭でレコードが売られている様子を見ることもあります。
実際、若者の街ともよばれる渋谷のタワーレコードでは2023年2月29日にアナログレコード専門店が入っているフロアがリニューアルされ、店舗の面積が約2倍に。在庫も3万枚以上になったそうです。
このような動きからも読み取れる、Z世代を中心としたアナログレコードブーム。テクノロジーが進化し、多くのものがデジタル化されたこの時代に、なぜアナログレコードが注目されているのか。
今回は、デジタルネイティブであるZ世代がアナログレコードに夢中になる理由を考えてみました。
レコードは音楽を聴くためだけのツールではない!コレクション、インテリア目的に
まず考えられるのは、Z世代がレコードに「音楽を聴くためのツール」としてだけではなく、インテリアや雑貨のようにコレクションする"モノ"としての価値を見出していること。
おしゃれでヴィンテージ感のあるレコードはSNS映えするため、まわりとは一線を画したアイテムを探している人のハートを掴み、部屋にレコードプレーヤーを置いている写真や、お気に入りのジャケットが投稿されるようになりました。
このような需要もあり、最近ではAdoやTWICEなど、Z世代に人気のアーティストでも作品をレコードとして出したり、過去に流行した楽曲がアナログ化されるケースもあり、それを機にレコードプレーヤーを買って聴くようになったZ世代も多いそうです。
インテリアとしてもおしゃれでSNS映えは抜群。かつ、好きなアーティストの音楽を聴くためのツールとして利用できる。Z世代は、このようなデジタルにはない「モノ」としての価値を、レコードから見出しているのではないでしょうか。
Z世代が見出す「ひと手間」をかける価値とは
もう1つ考えられるのは、Z世代が"ひと手間"の価値を重視していることです。
「だからこそ、過程を大切にしたい」
便利な時代を生きるZ世代のなかには、スマホひとつでインスタントにモノを手に入れられるからこそ、「過程を大切にしたい」と考えている人が少なくありません。
特に、毎日身につけるものや家具など、こだわりを持ちたいものに対しては、準備や手入れをすることでより強い満足感や愛着を感じています。
僕は最近、観葉植物がブームで時間を見つけてはショップに足を運び、せっせと植物のお世話をしているのですが、やはり手をかければかけるだけ愛着が沸きますし、より大切にしたいと思えます。
お店に足を運んで、棚からお気に入りのレコードを選び、家でレコード機にセットして針を落とす。Z世代がアナログレコードを聴くのは、このような一連の流れ自体を楽しんでいるからであり、このひと手間をかけることで、より音楽に愛着が湧くからなのではないでしょうか。
不便益を追い求めて。「写ルンです」もブームに
手間がかかるからこそ、モノへの価値観が変わってくる。これは「不便益の法則」と呼ばれます。不便なサービス・モノ・行為には、かえって便利さを上回る価値が生まれるという考え方です。
不便益の法則はアナログレコード以外にも、Z世代の間で流行しているさまざまなものに反映されています。例えばフィルムカメラの「写ルンです」。Z世代が生まれる前の1986年に販売を開始しましたが、最近は旅行やディズニーランドに行くときなどにわざわざ購入しているZ世代をよく見かけます。
実際に、「写ルンです」は2023年7月に販売台数が前年同月比で約5割増え、再ブームとなっていることはたしかです。
富士フィルムのホームページにもこのような記載があります。撮り切るまで写真を確認できない。現像作業を挟まなければならない。こういった"不便さ"は、Z世代にとって新鮮でおもしろいものなのです。
Z世代は「便利」より「不便」であることを好むのか?
レコードを買い、レコードプレーヤーにセットしなければ聴けない音楽。
撮影してもすぐに確認できず、現像しなければSNSにシェアできない写真。
Z世代はこのようなものに価値を見出しているというと「Z世代は不便なほうが喜ぶのか?」と思われる方もいると思います。
しかし、そうではありません。僕は、Z世代は不便を好んで選んでいるのではなく、そもそも不便なものだと思っていないという言い方が正しいと考えています。
Z世代のほとんどは、物心がついた頃から音楽を聴くならスマホを使うのが当たり前で、レコードやCDにはあまり触れてきませんでした。そのため、レコードやCDはむしろ新鮮な存在であり、「不便」が「ひと手間」という付加価値になっているのです。
テクノロジーですべてが手に入る世界で育ったZ世代は、このような「ひと手間」を経ることで得られる体験の価値を見出したり、手をかけること自体に娯楽の要素を見出しているのだと思います。
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アナログレコードの流行から読み取れるのは、Z世代がレコードを「音楽を聴くためのツール」としてだけでなくおしゃれなもの、もしくは「ひと手間をかけて、音楽をより楽しむもの」として捉えていること。このような価値観は今後もさまざまな場所で広がっていくと考えています。
オンラインで繋がれる時代だからこそ、オフラインな場での出会いや交流を求め、イベントに参加する人が増えるなど「あえて〇〇〇する」ことの価値が見直されるのではないでしょうか。
このnoteでは、Z世代経営者の僕がZ世代の最新事情や日常で感じたことを発信しています。経営者やZ世代の皆さんの役に立てる情報をお話したいと考えていますので、ぜひスキやコメントお願いいたします!
※このnoteは個人の見解です。
今瀧健登について
1997年生まれ。SNSネイティブへのマーケティング・企画UXを専門とし、メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』、お酒とすごらくを掛け合わせた『ウェイウェイらんど!』などを企画。
Z世代代表として多数のメディアに出演し、"サウナ採用"や地方へのワーケーション制度など、ユニークな働き方を提案するZ世代のコメンテーター。
日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。
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