日銀は1月まで持つのか~通貨政策化する金融政策~
「12月or 1月」から「1月or 3月」へ
19日に開催された日銀金融政策決定会合は3会合連続で政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%で据え置きました:
7月・10月の展望レポートで想定された通りの経済・金融情勢が確認されており、田村審議委員が+25bpの利上げ提案を行ったことは首肯できる動きにも思えました。それでも現状維持に至った背景として植田日銀総裁は「賃金と物価の好循環の強まりを確認する上で、春闘などもう少し情報が必要と考えた。米国など海外経済の見通しも不透明で、米国政権の経済政策に対する不確実性もある」と回答しています。
つまり、利上げに向かう方針は不変だが、「2025年の春闘」および「第二次トランプ政権にまつわる不透明感」がある以上、決断はできないという説明です。しかし、率直に言って、これら2つの不透明感が1月24日の次回会合で払拭されている可能性は高くないでしょう。
結局、金融市場で「12月or 1月」と思われていた追加利上げは「1月or 3月」で検討が進められているという期待形成にシフトしており、上述の2つの不透明感に照らすのであれば3月の可能性が高い、と考えた市場参加者は少なくないと思います。もっとも、賃金動向は必ずしも集中回答日を意味しないとも述べているため、3月決め打ちは危険でもあります。
とはいえ、会見内容はやや円安圧力を甘く見ているのようにも思いました。12月ドットチャートのタカ派化はどう考えても読めた話だったはずであり、会合の時間的順序を踏まえれば、今回のような決定&会見で円安が加速するのは火を見るよりも明らかだったと思います。大塚さんの記事が全てです。よって、私は今回利上げでも良いと思っている立場でした(しかし、直前の見送り報道の多さが不自然過ぎるので見送りで構えてはいました:
円売りの余力は依然大きそう
そもそも、3月まで為替市場が持つのか、という考え方も持ちたいところです。言い換えれば、3月まで円安が抑止された状態が続くのでしょうか。
12月10日時点の円のIMM通貨先物ポジション(対ドル)はネット円ロングであり、ここから中立化した上でさらに円ショートを積み上げていけるような状態にあります。端的に言えば、まだ投機的な円売りの余地は大きいと考えられるわけです:
こうした状況下、1か月以上先の次回会合におけるドル/円相場が160円を突破していない保証はないでしょう。160円近傍で迎えた7月会合では「円安によるインフレ上振れリスク」を理由に追加利上げされているわけですから、160円を追加利上げの号砲のように金融市場は考えても不思議ではありません。折しも、今回の声明文では「このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある」と明記されています。今後1か月間は従前以上に円安が利上げの主因に用いられやすくなるでしょう。徐々に、しかし確実に金融政策の通貨政策化が進む状況と言えますし、通貨安方向を阻止するという意味では先進国よりも途上国に近い所作と言えます。
その真逆(通貨高抑制)を地で行っているスイスフランとの対比は面白いところですので、下記に貿易収支構造などを考察しています: