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外食チェーン店の質が低下?ー工業品質的管理の脆さ(日本滞在記3)

日本滞在記の3本目です。2本目は福岡県で経験し考えた「手仕事を社会のなかにどう再構成するのか?ー福岡県八女での経験(日本滞在記2)」を書きました。先週でかけた山形において(トップの写真にある場所で)田園風景を眺めながら思ったことを書くつもりでいたのですが、問題のシリアスさを鑑み、チェーン飲食店のことを書くことにしました。

以下は外食店舗の効率化が急務であるとの記事です。今回の滞在でチェーン店の料理とサービスの質が落ちた感をもちました。母数がたいしたことないので、ぼくの思い込みかとも考え、日本に住んでいる数人に聞いてみたのですが、「それはイレギュラーな体験に過ぎない」と指摘する人はいませんでした。

工業製品品質的な、いわば機能的な管理の「脆さ」が現象となってでている、とぼくは思いました。上の記事にあるような方策自体が悪いのではないです。経営陣がビジネスの機能しか見ていないことで「心を失っているのに気が付かない」ことによるマイナスが蔓延しているのでは?と想像しました。

日本の食は安く美味い・・・と言うが

海外に住んでいらっしゃる方が、久々に日本に戻られ「円安もあり、日本の食は安くて美味い」とソーシャルメディアに書いていらっしゃるのを散見します。確かに、チェーンではない店ではそう思います。メニューの数が少なくなっていたりはしますが、味そのものは変わらないと思える。サービスも同じです。

しかし、かつて美味しかったチェーン店で、味とサービスの劣化が激しいと思うのです。さまざまな対策を講じる必要から、どうしてもコストは膨れ上がります。そしてサービスをする人も十分に採用できない。料理とサービスの低下は必然としか言いようがないとも言えますが、どうしてチェーン店において顕著なのか?です。

ぼくは、この業界をよく知りませんが、「経営マインドがより高い」と評されるその中身は、「飲食の質を工業製品品質的に捉える」人が多いのではないかと想像したのです。

美味しい店には手作り感がある

個人経営の飲食店は、経営マインドのなかに「手作り感」があるのでしょう。

ここでいう「手作り感」とは、それこそ手を使う作業が多いことをダイレクトに意味するのではなく、「すべてを工業品質管理的にやれば、必ず計算上、うまくいく」との思考を採らない、そのような方向にはまやかしがあると思っていらっしゃる。ややこしい言い回しですが 苦笑。

例えば、このような店にとっては客の顔が見えています。いわゆる常連客がおり、その時々で、店が困ったことがあれば客が相談にのったり、応援してくれたりします。だから台所事情が苦しいからといって質を落とすことができにくい構造になっています。

「あの人に嫌な思いをさせたらおしまいだ」との緊張感があるわけですね。それを避けるために、あらゆる知恵を働かせ、腕をふるい、客に、あるいは仕入れ業者にも細かい気を遣っていくのです。

「手作り」が社会のレジリエンスを強める

何百店舗ももっているチェーン飲食店に、そのような緊張感がないわけではないです。もちろん、緊張感があるなかで経営しているはずです。

だが、余剰コストの吸収のために「質を下げざるを得ない」選択肢を、(唯一の策ではないにせよ)選んでしまっているのだろう・・・と客に想像させるに相応しい振る舞いが多い。それは、あまりに工業製品品質的に店の運営を推し進めてきたツケなのだろう、とサービスの受け手としては勘繰ってしまうのです。

そして、こう思うのです。「チェーン店が主体の社会は危うい」と。

要は、機能としての飲食店ばかりが突っ走り、食を味わい楽しむとの部分も機能的にしか考えられていない。これまで、「もはや、生産工場を管理するような頭ではだめだ」と、あらゆる分野で決まり文句のように指摘されました。それは飲食も同じで、外食のレベルが一気に低下する大きな要因になります。

今までローカルコミュニティとの観点で、「個人商店が多い街では、街づくりの真剣味が増す」と考えてきました。しかし、食そのものにも適用できるのです。最近、よく使う言葉で表現するなら「個人経営の飲食店は社会のレジリエンスに貢献する」ことになります。

イケていないものが減ったと思ったのは幻想か?

さて、中野香織さんとの共著『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』で、ぼくは冒頭に「先進国においてイケていないものが減った。すべて、そこそこに良い。不味いものも減った。しかし、本当に心から愛せるようなものとの出逢いはなかなかない」と書きました。

今回の前述の体験で「イケていないものが減った」のは工業製品品質管理の恩恵であり、イケていないものが減少したと判断するのは瞬間的風景に過ぎなかったのだろうか、とふっと思ってしまいました。

いや、そんなに悲観的にみることもないのではないか。そうも思います。しかし、それにしては、外食チェーン店の劣化は激しくないだろうかと気になります。

みなさんの経験やご意見をお聞きしたいテーマです。コメント欄にでも、気楽に書いてください。

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