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リスキリングには副業が効く ~人は時間があっても学ばない

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

ここ最近、「リスキリング」という言葉がすっかり定着してきたように感じます。背景には、東証のガバナンスコードに合わせるために人的資本情報開示をする企業も増えたこと、40-50代の社員がボリュームゾーンとなってきており、より企業が求めるスキルをどう開発するかが問われていることなどがあるでしょう。

私のコラムでも「中間管理職のリスキリングこそが一丁目一番地だ」と再三述べてきました。その理由は、人数的にもボリュームゾーンであり、すでに事業の中核を担っている人材であることから、比較的効果がすぐに見えて費用対効果を感じやすいこと。また、マネジメントスキルの向上はチームや組織全体に波及して効果が出るため会社全体を変革するくらいのパワーがあるからです。

一方で、スキルを身につけるだけでは効果が見えづらいというのも事実です。拙著『転職2.0』では自身への「タグ」をつけると表現しましたが、持っているスキルを実践を通じて証明され、それがわかりやすく人づてに流通することで市場に通用するものになるということです。

20、30代に提供しているリスキリングプログラムをキャリアステージの異なる40、50代社員にそのまま適用しても、なかなかうまくいきません。たとえば、50代社員にプログラミング言語のPythonを習得させたとしても、そのスキルを十分に発揮できる処遇やポジションを用意することは年齢が上がれば上がるほど難しくなります。なんとなくデジタルスキルを身につけてほしいと言っても、その先にどんな役割・責任をベテラン社員に期待しているのか、会社として明確に提示できないようでは、ベテラン社員本人も当然モチベーションは上がりません。

日本型雇用制度に端を発するこの問題は根深く、結果的に40、50代に対するリスキリングといえば、従来からあるEラーニングやセカンドキャリア研修くらいしか選択肢がありませんでした。しかし「Eラーニングを導入したのに誰も見てくれない」「研修を実施しても、受けて終わりで効果が見られない」というお約束のオチがつきものでした。

そこで最近注目されているのが、副業推進による実践的なリスキリングです。一昔前は、従業員の副業を禁止する会社がマジョリティでしたが、22年に経団連が実施したアンケートによると、副業を認めているあるいは今後認める予定の企業は83.9%にのぼっています。さらに昨今は、副業を単に認めるだけではなく、人材開発の手段としてむしろ奨励する時代にさえなっているのです。

NIKKEIリスキリング

リスキリングというと「全く新しいスキルを身につける」と想像する方も多いと思います。もちろんそれも有効だとは思うのですが、特に40-50代に対するもので言えば「今あるスキルを研ぎなおし、市場で通じるレベルのものに磨き上げる」方が効果が高いでしょう。

人材マネジメントや事業運営といった会社に不可欠なスキルは、日進月歩です。アカデミックな分野でも最新の理論が出続けていますし、それを元にした実践事例もたくさん存在しています。これまでなんとなくやっていたことを、しっかりとした理論に基づく実践にアップデートするだけでも抜群の効果が出ると思います。

先の記事での副業推進によるリスキリングは、社内だけでなく社外にも実践の場を求めることで「市場に通じるポータブルスキル」にできる可能性があります。社内だけだとこれまで培った社内ネットワークや既存の仕組みに助けられてしまいますが、全く違う環境でも同じことが再現できるかは微妙かもしれません。そして、やる気の問題もあります。研修を受けて終わりではなく、市場レベルのスキルになる=今後のキャリアにもプラス、追加の報酬が得られるとなれば真剣に取り組む機会になるでしょう。

というのも、人はいくら時間に余裕があったところで、やる気がなければなにも学ばないということが明らかだからです。この件については3年以上前に書いたコラムですが、今なお読まれ続けている記事を再掲します。

学びを始めるのに年齢制限はありません。自分に合うきっかけを見つけたらそれを機会を捉え、前向きに自己をアップデートし続けていきたいと思います。


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タイトル画像提供:Turn.around.around / PIXTA(ピクスタ)

#COMEMO #NIKKEI

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