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「THE MODEL」型営業組織の導入で苦戦したポイントを思い返すnote

矢野経済研究所(東京・中野)によると日本の音声認識市場は2025年度に244億円と20年度の約2倍に成長する見通しだ。非対面のコールセンターや、潜在顧客にオンラインで営業するインサイドセールスの需要が高まる。

「THE MODEL」型営業組織の導入苦戦記

「THE MODEL」が刊行される3年前の2016年頃から、当時の私が所属していた会社ではマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの分業体制に転換していました。

当時、米国で流行していた手法が日本法人に輸入され実践され始めたタイミングで、それを見聞きし、見様見真似で運営していた記憶があります。正解も分からないまま走り続けていたので、今でいう「分業体制ゆえの縦割り化問題」「良いリード不足、良い商談不足問題」にもぶつかりました。

当時の私は経営企画部門にいたのですが、各部署の調整ごとに追われた記憶があります。流した血の量は、平均より多いはず。後に福田さんの執筆された「THE MODEL」を読んで「そうすれば良いのか!」と何度口にしたか。

そうした経験もあって、通算5年ぐらいは「THE MODEL」型営業組織の導入と運営については向き合ってきました。ほんの少しだけですが、経験と理論で語れます。以前には、こんなnoteも書きました。

このnoteをキッカケに、マーケターやインサイドセールスの方からTwitterのDMを通じて「こういう場合はどうしたら良いの?」と相談を頂く機会も、たまにあります。(あくまで個人の体験談で良ければ…という前提で)

ローカルディレクトリを整理していたら、前職・前々職時代に「THE MODEL」型営業組織に変化する際にまとめていた5年分のメモが出てきたので、備忘もかねてnoteにまとめておこうと思います。

「THE MODEL」型営業組織は、本当に良い変化をもたらしてくれます。ここに書いた内容が、参考になれば幸いです。


マーケティング部門の重要性

統計的に担保されたn数があるわけでは無いのですが、相談内容は「初回訪問の商談件数を想定より作れない」「フェーズ2に移行する商談件数が想定より少ない」という問題に収斂されます。

個別に考えると「インサイドセールスの架電をもっと増やそう」「商談の確度を高めるための準備をしよう」といった解決策が浮かぶのですが、そもそも問題を解かずに問題を解決する策があると考えます。

それは「マーケティング部門からリードが大量に供給されること」です。

相談下さった方に、事業にかけているリソース(人・物・金・時間)を聞くと、たいていの場合はフィールドセールス >> インサイドセールス > マーケティングです。マーケティングに割くリソースは、だいたい平均10〜15%ほど。数少ないリードにインサイドセールスがアタックし、フィールドセールスも既存顧客の掘り起こしを行なっているケースがあります。

それは、干からびた湖で「水が無い」と言っているようなもの。リードが潤沢に無い状況で、組織のリソース85%を「水の奪い合い」に費やすべきでは無いですよね…? とお話することが多いです。

それに、そんな状況で「フェーズ2移行率は約3割」と説明を受けても、そもそも「ほんまかいな」と思います。試行回数が少な過ぎるだろ、と感じるのです。

野球で考えると良いのですが、打率3割と言っても内訳が10打数3安打だったなら、次の打席にヒットを打てる確率が3割とは限りません。実際には1割しか打てない能力がなのに、たまたま10打数3安打かもしれないからです。いわゆる大数の法則です。

山のように打席に立って見える実力があり、改善すべきポイントが分かります。量をこなさないと質は見えません。理想は、20商談に必要なリード件数は20件ではありますが、そこまで洗練させるには場数は必要でしょう。だから、まず最初に「マーケティング部門からリードが大量に供給される」状態が大事だと思うのです。

一方で、「マーケティング部門にリソースを避けない」状況が「THE MODEL」型営業組織の導入の難しさのハードルを高める一因だと感じています。

分業体制を敷くのは「組織の生産性向上」のためだと理解しています。そもそもリード供給量が少なければ、わざわざ分業するメリットはほぼ無いのではないかと過去経験上考えます。

ですから、リードがまだ潤沢に無いなら(マーケティングにリソースが割けないなら)、業務にマーケティング的要素が含まれつつ、役職としてフィールドセールスのみで十分ではないでしょうか、というのが私の思想です。


良いコンテンツを増やそう

…と、こういう話をしますと「そうは言っても、組織体制については決まった話だから」と返されます。それもそうだ。…そうか?

さて。そこで、そういった場合は「まずリードを少しずつでも増やしていきましょう」と話します。「リードを大量に供給するには、広告宣伝費が必要ですよね?」と問われるのですが、そうなんですけど、そんなこともありません。

(商材により相性は違うでしょうが)FB広告を出稿する、展示会に出展するのにお金はかかります。一方で、それだけでインサイドセールスがリードに接触できる状態かと考えれば「大半は違う」と答えます。

このあたりは、栗原さんの書かれた「虎の巻」に最適解があります。以下、お手製の図を引用します。ちなみに、めっちゃ名著だと思っていまして、定期的に読み返しています。

自分自身に置き換えて考えます。FB広告で興味のあるホワイトペーパーを見つけたのでダウンロードした。すぐさま相手先から「ぜひ詳細をお話させて下さい!」と言われた。営業だ…と察知して、絶対拒否しますよね? 温度感が高まっていないと、そうなります。

ホワイトペーパー、ウェビナー、事例セミナー、操作説明会など、見込み顧客の温度感に合ったコンテンツを提供した方が良いでしょう。そして、これらは人件費はかかっても広告宣伝費は0円です。

広告出稿や展示会出展で獲得したリードは、この階段で言うところの0〜1段目であることが大半です。商談までの段を継ぎ足さない限り(見込み顧客が段を上っていくかは別にして)、永遠に「こちらの状況も踏まえずに何度も電話かけてくる失礼な会社」止まりだと私は考えます。(自分への戒めの意味も込めて)

自社の提供するベネフィットにどハマりした顧客だけで良い…って場合もあるでしょう。しかし、それはLTV数千万以上、高単価・コンサル要素が強い商材ではないでしょうか。少なくともSaaSでは難しいですよね…。

ホワイトペーパーは、事例系、eBOOK系、ウェビナーオンデマンド視聴系の3種類に分かれると思います。私は「まずは1年で100本作りましょか」と言うのですが、相談相手には露骨に嫌な顔をされます。

しかし、SEOやら何やら考えると、(商材にも依るのですが)こんぐらい必要でしょう。逆に、1つの商材で100の観点からコンテンツ作れないと、市場が無いんじゃないの?と、逆に私は不安になります。

余談ですが、ホワイトペーパーは「DLした人が思わず社内で広めたくなる内容」を心がけると良いです。社内で1名しか見ない資料だと効果が薄い。1名を起点に大勢(特にキーマンや意思決定者)に広まるのが理想です。

良いコンテンツを作る。評判を呼ぶ。さらに良いコンテンツを作る。さらに評判を呼ぶ。そうしたサイクルをグルグル回し続けると、自然にメルマガの開封率やホワイトペーパーのDL率は高まります。逆に、1回でもサイクルが途切れると、元の状態に戻るのに2〜3ヶ月かかっちゃう。怖。

例えば、メルマガでも「本メルマガは転送OKです。ご興味を持ちそうな方にぜひ転送して下さい。」の一文を入れるだけで、自社主催ウェビナーでも5〜10件程度は必ず新規リードが発生します。

そもそもが自社の都合でホワイトペーパーを作り、自社の都合で商談までの段を注ぎ足しているのです。絶対に無理やり「見込み顧客」に接触しない、というのが大原則だと思います。

「そんなことよりも、松本さんの成功事例を教えて下さい」と言われるのですが、ぶっちゃけ、なぜ上手く行ったのか、どの打ち手が効いているのかは分かりません。先ほど紹介した「虎の巻」にこんなイラストがあります。

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積み上げに積み上げて、正直何が良かったのか分かりません。なので、ジェンガのように後になって「打ち手」を抜くのですが、それも最初から効果が無かったのか、徐々に効き目が切れたのかは分かりません。

ただ、B2Bマーケティング&セールスは、成果を出すプロセスが明確な分、どれだけやり切れるかにかかっているとは考えます。


THE MODEL、THE GOAL、トヨタ生産方式

「THE MODEL」について書籍で学び、実際に経験して、「トヨタ生産方式」「THE GOAL」に通じる部分があると感じました。

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスという3つの部署を経由して最終的に受注するのであれば、マーケティング部門は2つの歩留まり(受注率、商談設定率)を考慮して、n週にX件の新規リードを獲得し、Y件の既存リードと接触する必要があります

つまり多少のキメであっても、卓上の計算式で過ぎないものの、総広告予算に対する受注件数は、ある程度は「決まって」います。ユニットエコノミクスという制約を課すことで、どの指標が破綻しているかも見えます。

したがって、「THE GOAL」の言う「統計的変動」「依存的事象」の影響も考えて、部署それぞれが部署の中の論理だけでKPIを決めてはならないのです。3つの部署は一蓮托生、受注件数から逆算してKPIを決めていき、不足しているならリソースのバランスを変えるなど手当てします。

「THE GOAL」の言う「統計的変動」「依存的事象」については、以前にマーケティングネイティブの連載で解説しています。よかったら、ご覧いただければ幸いです!

ただし、何件架電したか、何件会話できたか、何件商談を獲得できたか、何件商談化したか(いわゆるフェーズ2移行)を日次で監視しても、あまり意味が無いと思うのです。

なぜなら、日単位は偶然に左右され易いのです。電話に出れるかは偶然に左右されますし、顧客の都合で商談が必要かは決まります。運に左右され易い指標は、あまり追いたくありません。(ただし週次でのトラッキングは必要です)

仮にインサイドセールス部門のAさんが商談を獲得する確率が10%だったとして、50回/日電話したら5件/日の商談が作られる…のではありません。

二項分布で考えると(そもそも二項分布なのかというツッコミはありつつ)4件〜6件の商談が作られる可能性は約52%しか無いのです。1〜3件/日の可能性は約25%、逆に7〜9件/日の可能性は約21%あります。(冒頭で話した大数の法則の話です)

では、仮に50回/日電話をして、10件/日の商談獲得だった際、マネージャーとして「二項分布で考えると、Aさんが商談を作る確率が10%だから、こういう事態は2%の可能性で起こるから許容する」と言えるでしょうか? いや、恐らく「Aさんの商談設定率の実力は20%だ」と見誤るでしょう。平均で見れば10%の実力なのに。

Aさんの商談設定率を推し量るのには、3ヶ月分で見ると良いのではとアドバイスします。1Q分もあれば、月の好不調も平均化されます。新しく入社されてデータが無い場合は、部門全体の平均の半分で見積もると良いのでは。

私は、このB2Bマーケティング&セールスの現場で発生するブレを「ガチャ理論」と名付け、「確率的変動の多い指標は日次で積極的に追わない」ことを提唱しています。

もちろん、アポ獲得件数は追わなければいけません。ですので「架電件数」のような自社でコントロールできる指標をKPIとして追うと良いですよ、と話します。

着電率、商談設定率は日で見ると「ガチャ」ですが、架電件数は「ガチャ」ではありません。架電件数に対して必要な商談件数が満たしていなければ、インサイドセールスにリソースを補充します。例えば一時的にマーケティング部門から短期的に移動する等の対策が考えられます。

この辺りは、多品種少量生産のトヨタ生産方式における多能工化(一人の作業者が複数の工程を担えるように訓練すること)と発想は同じです。

「THE MODEL」型営業組織は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスが1本の線でつながっており、現工程は前工程の影響を受け、後工程に影響を及ぼすと考えます。

したがってガチャ指標とコントロール指標に分けて、ガチャ指標に一喜一憂せず、コントロール指標を増減して売上へインパクトを作らないといかんなと思う次第です。

この点さえ頭に入っていれば、導入に最初は戸惑っても、定着すれば大きな成果を発揮すると考えます。いや〜、すごいです。すごいですね。


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松本健太郎
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