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セルフレジのインバウンド対応強化を2020までに

ここにきてセルフレジ対応店舗が増えてきている印象がある。私が日常的に利用しているスーパーも、完全セルフではないものの、商品のチェック(バーコードスキャン)は従来通り店員さんがやるが、支払いはセルフの精算機に誘導される方式に変わった。商品チェックの列よりも精算機の数が多いので、小銭を財布から探しているお客でレジの流れがストップする、といったことがなくなった。店側としても閉店後の現金勘定に要する時間が格段に少なくなっているのではないだろうか。

一時期もてはやされた「無人店舗」というのがすっかり鳴りを潜め、こうした現実的な対応が進んできているのは好ましいことだと思う。

そんななか、駅コンビニのニューデイズが、初のセルフレジ専用店をJR中央線の武蔵境駅にオープンした、というので行ってみた。

この店は、武蔵境駅の立川寄り改札口のすぐ外にある。店頭には、セルフレジとか無人店舗といった表示はなく、かわりに「キャッシュレス店舗」と書かれている。出入口ドアには「交通系電子マネー専用」と書いてあるが、レジはクレカも受け付けている。

店内は、記事によると25平米ほどということで、ざっと大型バスの車内くらいの広さ。通常の店舗からすれば狭く感じ、置いてある商品は、飲み物とおにぎりやパン類、菓子類がメインで、駅ホームにあるキオスクよりも取扱商品数は少ないくらいではないかと思う。タバコや酒といった年齢確認が必要な商品はおいていない。

店舗の出入口は普通の自動ドアで、特に認証などは必要がなく自由に出入りできる。レジ横の店員の控室と思しきスペースの窓がハーフミラーのようになっていて、ここで見られているかもしれない、というのが、監視カメラとともに、万引き等の犯罪の抑止力ということだろうか。この意味で、実際には無人の時間があったとしても、あえて無人店舗と言わないところがポイントなのかもしれない。

こうした店舗の作りは、以前ここでも紹介した、台北メトロの駅にある店とよく似ている。出入口の認証を設けていない分、一層簡素化されている。この台北の店は人の気配を消していたが、武蔵境の店は、むしろ人の存在を匂わせている。

店の全体的な造りのほかに、今回一番興味があったのは、セルフレジの多言語対応状況だ。結論から言うと、ニューデイズの有人店舗にあるセルフレジ機と変わらないものが2台置かれていた。

画面の上方をみると、デフォルトの日本語のほか、英中韓の4ヶ国語に対応している。画面下の利用可能クレカはマークで表示されていることを考えると、対応言語も国旗のシンボルを活用したマークになっているとわかりやすいのに、とは思う(「中」に関しては、繁体簡体の別とか、各国国旗の違いなど、少々面倒はあるのだが)。そして、中国語は、簡体のみ対応のようだが、決済手段としては銀聯カードもアリペイ・ウィーチャットペイも使えない点は、少し違和感があった。

画面以外の利用方法などの表示は、ほぼ英語併記されているが、「バーコード読み取り」の部分などは日本語のみ。こういった場所は、直感的に利用できるように、イラストなどを併用してわかりやすくなっていればなおさらよいのに、と思う。

参考までに、パリのデパート「ギャラリ・ラファイエット」にある食品売り場のセルフレジは写真のような状況になっていた。

まず言語を選ばせる画面から始まるのは、この店がオペラ座に近い店舗で、観光客も多く現地人の利用比率が必ずしも高くない、という事情もあるのかと思われる。日本の、しかも武蔵境という立地ではここまでする必要はないと思うけれど、日本では多言語対応店が少ないだけに、パッとみて多言語対応しているとわかるような国旗アイコンなどをレジ画面だけでなく店舗の入口などに表示することも、利用者の利便に加えて集客にもつながるように思うのだが、現状ではそれとわからないのがもったいない。

これは、セルフレジに限らずディスプレイを備えた日本の機器類すべてに共通する課題で、先日もセブン銀行ATMの前で、どう操作してよいのかわからずに立ち往生している外国人をヘルプした。これにしても、国旗アイコンが出ているだけで、それと直感的に分かるのにそうなっていないところが残念なところ。

コンビニ等の店員で英語や中国語が話せる人を採用する動きは以前からあるが、それにしても結局は日本語のほかに1−2カ国語の対応言語が増えるに過ぎない。接客が必要な商品であれば別だが、コンビニやスーパーにある商品のほとんどは購入に説明を要しないものであり、そうであれば、複数言語をしゃべれる人材の採用よりも、機器の多言語対応をすすめることが優先されるべきではないだろうか。人間によるサービス・おもてなしが大切、といっても、言葉が通じない人間より、自分の母語で操作できる機械の方が親切ではないかと、自分が海外に旅行したときの実感からは思う。

そして、日英中(簡・繁)韓の対応は基本として、他にも話者数や来訪者数が上位に来る国の言語、たとえばスペイン語やフランス語などにも対応言語を広げていきたいところだ。

さいわい、ディスプレイの表示はソフトウェアの更新で対応が可能な分、ハードウェアの更新よりは、コストと時間がかからない。東京五輪までの今後1年の間に、レジやATM等インバウンドが操作する可能性がある機器の多言語対応と、それがひと目で分かる工夫が推進されることを期待したい。

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