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人口減少、縮小均衡。今こそ官民総動員 リスキリングで産業構造変革を

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

人口減少により人手不足が深刻化する。そのような意見を聞くようになってかなりの時間が経ちます。継続的な人口減少局面に入ってから、すでに14年の月日が経過しました。今後さらに減少カーブが急になっていくという予測が正しければ、年金や医療などへの影響も避けられません。

予測が正ければ、と言いましたが、実はすでに未来はほぼ確定しています。子どもを多く産む25~39歳の女性の数は今後減り続け、2045年には2020年比で23%減まで落ち込むとされています(国立社会保障・人口問題研究所による推計)。母親となる人が減り、死亡者は増加します。出生率が人口置換水準である2.07を超えなければ人口減少は止まりませんし、増加に反転させようとすると出生率にして3を超える数字にしなければなりません。現状を鑑みると、このハードルは達成不可能な高さでしょう。

世界を見れば、少子高齢化を見据えて官民がタッグを組んで生き残りをかけた戦いをしています。これまでは足りない分を移民で補っていた国、シンガポールです。

こうなると中高年世代も含め、中の人を鍛えるほかない。シンガポールは生産性向上に賭けた。新型コロナウイルス下での渡航制限の影響もあって21年、外国人の数は147万人と前年比で10%減った。人口は初めて2年連続で減少した。それでも政府関係者に動揺は見られない。
学び直し運動は第2フェーズへと移行した。コロナ禍でブレーキを踏むのではなくギアを一段上げたのだ。一律の助成金に加え個々の業種や職種に合った能力を育てようと、国内外の企業との提携プログラムを次々に立ちあげた。

コロナ禍の影響で移民に依存するリスクが表面化したこと、また自国民の職の機会を奪っているのではないかという意見が噴出したことなどから、リスキリングプログラムにより需要の高いスキルを見極めて集中的に人材開発をしようという試みです。

この「スキルズフューチャー運動」は2014年から開始されましたが、コロナ禍ではさらに国内外の企業と協力して、より実践的な取り組みとして進化しました。以前の記事でも取り上げたことがありますので、参照していただければ幸いです。

すでに公開情報として各国政府や州にも提供されており、より企業のニーズに合う職業訓練プログラムの開発等に生かされています。今後はこれをさらに推し進め、オンラインでの学習プログラムとスキルを証明するための試験、そして求人応募と面接までをセットにした「スキルズパス」という取り組みを開発しています。これにより過去の学歴や経歴ではなく、今あるスキル・能力をベースに採用を可能にし、より多くの方々に機会を提供できる見込みです。

「スキルズパス」というのは非常に画期的な取り組みです。いくらスキルを開発しても、実際に企業に応募してみると実務経験がないという理由で受からないという課題を解決しようとしています。所定のコースを修了した場合には書類選考を免除し、直接面接できる機会が提供されます。そして、OJTを含めた仮採用期間で実務を問題なくこなせば本採用になるという仕組みです。賛同する企業がいないと実現しないものですが、政府の後押しもあり多くの企業がパイロットプログラムに手を挙げました。学歴や経歴を重視せず、スキルと人物に重きを置くことでこれまで見逃していた優秀なタレントを採用する機会と判断したのだとおもいます。

これらの事例から学べることはたくさんあります。ゆっくりと人口が減少して経済も縮小均衡していく状況は、いわゆる「茹でガエル」状態とも称されます。ちなみに、実際にカエルを鍋に入れてゆっくりと温度をあげていくという実験の結果では、ちゃんと気づいて途中で飛び出すそうです。いまこそ、我々も気づいて未来に向かってジャンプをすべきときなのかもしれません。

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タイトル画像提供:うぃき / PIXTA(ピクスタ)

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