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復活【インバウンド】 × コロナ後【エンタメ】の掛け算から生まれるビジネス

アニメ・漫画などのエンタメビジネスをアップデートするスタートアップ、株式会社MintoのCEOの水野です。今回は、復調の兆しがあるインバウンドとエンタメについて、徒然と書いてみたいと思います!

インバウンド(日本向け観光)が復活の兆し

新型コロナウイルス禍が一段落し、海外からの日本向け観光、いわゆるインバウンドも回復の兆しが見えて来ました。

日本政府観光局(JNTO)のデータでもその傾向は明らかです。2023年8月の訪日外客数は、コロナ禍前の2019年8月と比較して85.6%、215万6900人まで回復しています。2019年比較の推移では、
6月が72%(-28%) →7月が77.6%(-22.4%) →8月が85.6%(-14.4%)
と、急速に回復して来ているのが分かります。

JNTO 訪日外客統計から抜粋

コロナ禍前との変化は?

とはいえ、コロナ禍に入ってから約3年半。この期間に世界を取り巻く環境は大きく変化しています。まず、日本への観光客増加の大きな要因になりそうなのは、為替相場の大きな変化、つまり円安です。
ドル円の為替レートは、コロナ禍前の2019年12月末は1ドル約109円でしたが、2023年9月22日現在、1ドル約148円と、35%の変化があります。他の通貨に対しても軒並み30%超の円安が進行しており、海外から来日する観光客の人にとっては、3割引で旅行に来れるような感覚なのではないでしょうか?短期の爆買いというよりは長期の滞在が増えている印象です。(短期のホテルなどはダイナミックプライスで値上がりするものの、飲食や日常的な料金は急には値上げできません。)

日経 SmartChartPLUS

次に、大きな変化としては、中国からの観光客がまだまだ少ない点です。コロナ禍前の2019年8月に100万人だった中国からの観光客は、2023年8月では、36万人と36%の回復率。これには、いくつかの要因はあります。

・中国政府による日本の団体旅行規制が8月10日に解禁になりこれから団体客の予約が入る可能性
・団体旅行規制が解禁になったものの、東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に対して中国政府が懸念を示している点(結果、ツアー中止など)
・中国国内の景気が悪い(上海ロックダウンの後、景気が停滞している)

弊社も中国支社があります。昨年新たな中国支社長が上海に赴任して1年経ちますが「上海ロックダウン後の景気の悪さは底を打ったが、まだ完全回復ではない」と言います。下記レポートからも同じ雰囲気が伝わって来ます。

逆に、中国以外で、月間10万人以上の来訪がある国・地域に注目してみると、2019年と比較して増えているが、韓国(30万人→56万人)、香港(19万→20万)、米国(11万人→13万人)と、なっているのも興味深いポイントです。

もし、中国からの観光客が2019年並みに戻るとすると、全体としては過去最高の訪日観光客数になります。個人的な予測では、早ければ2024年中にはコロナ禍前の訪日数を超えると思われます。

JNTO 訪日外客統計から抜粋
インバウンドとは 訪日客、25年までに「コロナ前」目標(日経記事)

新しいエンタメ施設や体験は?

視点を変えて、日本のエンタメ業界に目を向けると、コロナ禍は、世界的に自宅エンタメ需要が急激に高まった時期でした。中でも顕著だったのは、Netflix、Crunchyroll等の動画配信サイトで、日本のアニメ視聴者が急激に増加したこと。直近の"推しの子"はもちろんのこと、"鬼滅の刃""呪術廻戦""僕のヒーローアカデミア"などのヒット作品に加えて、過去の有名アニメ作品も、改めて多く視聴されました。

そして、このような日本アニメの再興は、コロナ禍が明けて復活した日本アニメ映画興行の大ヒットに繋がっています。2022年-2023年は日本のアニメ映画が軒並み世界的に大ヒットした期間でした。

・ドラゴンボール超 スーパーヒーロー 全世界138億円
・ONE PIECE FILM RED 全世界319億円
・すずめの戸締り 全世界475億円
・THE FIRST SLAM DUNK 全世界300億円
・ ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 全世界1,996億円

参照元:『キネマ旬報』2023年3月号、オリコンニュースKOBIZまんたんウェブTHE NUMBERS読売新聞オンライン

全世界での動画配信でのヒット、劇場映画でのヒットに続いて、漫画・アニメの聖地、日本へ実際に訪れたいという人が増えるのも、自然な流れだと言えます。

先日オープンした飲食・ホテル・ゲーム・映画・IP等を一体化した新しいエンタメ施設の東急歌舞伎町タワーは、そうした流れにピッタリとハマった施設だと思います。

また、既存のエンタメ施設でも、例えば、ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーを見た人は、大阪のUSJのスーパー・ニンテンドー・ワールドに遊びに行きたい、となるでしょうし、欧米からの訪日観光客が増えるならば、日本のコンテンツIPだけでなく6月にオープンした「ハリー・ポッタースタジオツアー」もインバウンド需要に応える施設だと思います。

この辺りは、2023年4月に経団連からの政府へ提言された資料「Entertainment Contents ∞ 2023」にも具体的に取るべき施策として観光拠点の整備があげられています。

経団連資料より

更に、少し先の話になりますが、2031年には、横浜市に東京ディスニーランド規模の大型テーマパークを建設すると発表されており、ここでも、アニメーションやゲームなど日本の魅力あるカルチャーを生かすほか、仮想現実(VR)など最先端技術を活用したアトラクションが構想されています。

インバウンド × エンタメの掛け算で新たに生まれるモノ

施設だけではなく、漫画・アニメ・キャラクターの施設や聖地などの点を線にしていく企画やプロデュースも求められます。

2016年にスタートした一般社団法人アニメツーリズム協会は、ガンダムの生みの親ともいわれる富野由悠季さんが会長になり「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」の選定などを行なっています。

アニメツーリズム協会 HP

弊社(Minto)には、東南アジア支社がありますが、日本に来る前の訪日観光客向けの事前マーケティングを、どのようにやるべきか日本の自治体や企業・店舗から相談が来ます。

漫画・アニメ・キャラクターに触れた海外の人達が、日本に来る前に情報を集めてプランを立てられるようにする事、日本に来た際の体験価値を高める事、日本から帰ったあとも継続的にタッチポイントを作る事などが、インバウンド事業創りで必要なポイントになっていると感じます。

このあたりの企画・プロデュースによって新たに生まれる事業やビジネスは、まだまだありそうですね。

ということで、今回は、"復活【インバウンド】 × コロナ後【エンタメ】の掛け算から生まれるビジネス"というタイトルで徒然と書いてみました!

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日経COMEMOに寄稿を初めて今回で17本目の記事。エンタメを切り口とした独自のコラムを毎月書いていますので、フォローと過去記事のチェックもぜひお願いします。

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