5-11歳の子どもへの新型コロナワクチン接種をめぐる課題・続報
3月に入り、全国的に5-11歳の子どもへの新型コロナワクチン接種が始まっています。前回の投稿でもこの話題に言及しましたが、オミクロン株に対する発症予防効果が米国CDCなどのグループにより初めて発表されました。
また、ニューヨーク州保健当局の研究者らも調査を行っており、研究論文(査読前)を投稿しています。
12歳と11歳で大きな差が出たのは、12歳以上は成人と同量ですが5-11歳は3分の1量となっていることが考えられます。この影響からか入院を予防する効果も12-17歳に比べ低い水準でした。
日本小児科学会の5~11 歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方は以下です。但し2022年1月19日公開ですので、新たな見解が出されるかもしれません。
1)に関してはこれまでと同じ考えですが、オミクロン株に対する発症予防効果の低下から、その実証性が下がっていると感じます。
2)重症化の予防に関しては2回目接種から1-2か月で74-48%程度にまで低下することから、接種をしないよりはした方が良いですがその効果は長くは続かない印象です。
3)に関しては健康な子どもに対しての意義が見当たりません。米国の報告ではもはや発症予防効果は期待できない数値です。
4)取り扱い注意、問診と診察を丁寧にとありますが、一部の自治体ではパート医師(小児科医でなくても可)を大量に募集しており、慣れない人たちの集団で正確な取り扱いができるのか、親御さんに納得のいく説明ができるのか大いに疑問です。
以上から5-11歳の子どもに対するワクチンの私見です。
①日本において健康な小児における死亡事例や重症事例はきわめて少ない。
②現在のm-RNAワクチンの効果は重症化予防が主たるところであることかから重症化しにくい小児に対して推奨できるものか疑問。
③発症予防効果が高くはないワクチンによって学校などでの集団感染を抑え込めるかどうかは疑問。
④但し接種後短期間であれば発症予防効果が期待できる可能性があることから、地域での一斉大規模接種などが実現できるのであれば抑え込むこともできるかもしれないが現実的にはほぼ不可能。
⑤有害事象は12-17歳に比べて頻度は少ないものの発生はあり、事例が少ないことから今後もすべてが許容できるものかどうかは未知数。
①~⑤からすれば接種を推奨するメリットがほとんどなく、デメリットの方が存在する状態ですので、やはり親御さんから質問された場合には「今の段階では勧める理由はありません」となるでしょう。
成人においても3回目接種が進行中ですが、オミクロン株に対するワクチン効果に関する論文が最近発表されました(Andrews N, et al. Covid-19 Vaccine Effectiveness against the Omicron (B.1.1.529) Variant. NEJM. 2022 Mar 2. Online ahead of print.)。新型コロナワクチンの効果に関しては様々な意見がありますが、開発当初は短期的な評価しかできなかったことで高い発症予防効果があると報告されていましたが、時間の経過とともに抗体価の減衰によると考えられるブレークスルー感染が相次ぎ、さらにはスパイクタンパクの変異によるオミクロン株に対しては、デルタ株以上に発症予防効果の低下が著しいこともわかってきたことは、事実として受け止めなければなりません。一方で追加接種をすれば一時的ではあるものの発症予防効果を引き上げることができることも確認されています。ただそうなると何度も追加接種をしなければその時の感染拡大を抑え込むことが難しくなります。
Nature Newsに以下のような記事がありました。
Three, four or more: what’s the magic number for booster shots? Nature News, 28 January 2022
COVID vaccine boosters are proving a useful tool against Omicron, but scientists say that endless boosting might not be a practical or sustainable strategy. "Better solution than endless boosters"
追加接種をすれば一時的には発症予防効果も上昇し、短期間で流行を抑え込むこともできるかもしれませんが、いつまでも従来のワクチンを選択していたら「エンドレス・ブースター」になるでしょう。新たなワクチンの開発と流通が望まれるところです。
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