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組織の中核となるミドル世代を活性化させるための秘訣。ミドル世代の能力開発が企業成長のカギを握る。

皆さん、こんにちは。今回は「ミドル世代」について書かせていただきます。

会社の中核を担い、将来の会社を背負っていく立場にあるミドル世代
中堅社員の中には、事業の中核を担うプレイヤーとして活躍している人もいれば、チームやプロジェクトメンバーに働きかけるリーダーとして活躍している人、新入社員や後輩を育成するトレーナーとしての役割を持っている人など様々ですが、中堅社員の成長は企業成長において非常に重要です。

中堅社員は若手とは異なり、担当している業務は一人で完遂することもできますし、仕事を進める上で自律的に適宜判断をし、効率的に仕事をすることもできます。そのため、どんどん難易度の高い案件を任されたり、大きなプロジェクトにアサインされたり、後輩の指導や育成も担うなど、企業成長を実現する上では欠かせない層になっています。だからこそこのミドル世代を生かしきれず、モチベーションの低下や成長鈍化を引き起こすと、それはやがて会社にとって大きな損失となり、業績悪化や企業価値低下につながってしまうこともあります。

今後、少子高齢化が加速していく中、社内人材も高齢化が進んでいき、業界業種・企業規模等によっても異なりますが、会社全体においてミドル・シニア層が占める割合がどんどん増えていくことは間違いありません

ミドル世代の活性化が企業の大きな経営課題の一つとなっていく中、私たちはどのようにミドル世代を生かしていくべきなのでしょうか。
そして、ミドル世代が特に求めている「成長実感」を得られる環境をどのように提供していくべきなのでしょうか。
具体的に考えていきます。

貴重な30代社員の流出を防ぎ、生き生きと働いてもらう秘訣はなにか。リンクアンドモチベーションの2023年の調査によると、30代社員の働きがいは「成長欲求」との相関が特に強かった。
責任を伴う役職や挑戦的な仕事を任され、自らの創意工夫を発揮して成長を実感する。こうした環境を整えることが肝要だ。
日経ビジネスが実施した調査では、30代のうち72.2%が、今の仕事を通じて「満足がいくほど成長できていない」または「全く成長できていない」と答えた。若い社員が責任ある仕事を通じて成長を実感できる環境づくりは日本企業の急務といえる。

■なぜミドル世代の活躍が必要なのか

ミドル世代のキャリア不安や悩みは尽きず、状況によっては、組織内での昇格や昇進に行き詰まり、キャリアの限界を感じてしまう人も少なくありません。キャリアに対して停滞感や成長の鈍化を感じている人にとって、新たなキャリアの選択肢を提示したり、動機付けによって意欲やパフォーマンスを引き出すことができるかどうかが、企業に問われているのです。

それにも関わらず、

  • 社内にポストがなく、ポストや役割を与えたくても適切な機会を提供できない

  • マンネリ化した仕事に刺激を与えたくても、本人が新しい仕事に飛び込む覚悟がない

  • 業務量の増加や、周囲からの期待値の高まりによって、必要以上にプレッシャーを抱え込んでいる

  • 役割の曖昧さや成長機会の不足によって、キャリアに対する停滞感が組織全体に蔓延している

  • テクノロジーの進化や働き方の変化など、環境変化に適応できない組織に対してストレスを感じている

  • 他社の働き方や評価制度、報酬制度が魅力的に見えて、組織に対する不満が溜まっている

  • 自己認識のギャップにより、自分の能力や役割に対して不安や不満が生じている

  • 自分がやりたいことと、会社の方向性とにギャップを感じ、働く意欲が低下している

  • 経営層のミドル世代活性化に対する関心が薄い

などの状況が生まれてしまいがちです。

いくら企業がミドル世代を活性化させるための施策を実行しようとしても、本人が諦めていたり、やりがいのある仕事を通じて成長することに対して後ろ向きな考えを持っていては、期待する効果が得られません。まずはミドル世代に該当する社員に、

  • 健全な危機感を持ってもらうこと

  • 自分のキャリアに自分で責任を持つ意識を持ってもらうこと

  • 未来の目標から逆算した上で具体的な行動変容を生み出すこと

  • 自ら新しい役割やミッションを開発し、活躍の場を広げてもらうこと

  • 自分の居場所や過去の成功体験に固執せず、新しいチャレンジや創意工夫を生み出すこと

などが実現できる環境を意図的に構築していくことが重要ではないかと思います。

ミドル世代は、
「上司」に対して、組織の目標やビジョンを理解した上で、円滑なコミュニケーションを求められる
「後輩」に対して、指導や育成が求められる
「同僚」に対して、チームや組織の中核となって、目標に対する貢献を求められる
「顧客・パートナー・他部署など」に対して、緻密な連携のもと、チームとしての成果を求められる

というように、多くの人と接点を持ち、それぞれに対して大きな役割や貢献を期待される極めて重要な立ち位置にいて、職場の中核としての影響力の発揮が求められています。

しかし、多くの企業の人材育成施策、キャリア開発施策は、新入社員や若手社員に偏重してしまっています。入社して数ヶ月、または数年間の研修を実施した後は、OJTなど実践を通して経験を積んでいくことが多く、次に用意されているのは管理職や幹部候補となる人向けの研修ではないかと思います。そうすると、それに該当しない社員に対して、何も実効性のある育成施策を講じていなかったと後から気づくことも少なくありません。

だからこそ、手薄になりがちなミドル世代へのキャリア形成支援のあり方や仕組みを見直さなければならないのです。

■ミドル世代の生かし方①管理職への登用を加速させる

ミドル世代を上手に生かすための手段の一つとして、「管理職への登用を加速させる」ことが挙げられます。

引用した記事の中の一事例としては、ジョブ型雇用への転換をした上で、管理職への昇進プロセス等も変更し、年功序列を廃止することで「実力のある人を登用できる環境に変わった」とあります。

初級管理職のうち30代の比率を見ると、ジョブ型導入前の22年3月は全体の2.5%だったが、24年4月時点では10.9%まで上がった。

管理職になる人が増えると、

  • 個人の成果から、チームの成果を追求する人が増える

  • 日々の業務だけではなく、長期的な視点での業績や成果を追求する人が増える

  • 組織の方向性を理解し、経営層や上司と密接に連携する人が増える

  • チームや組織の業績に対して、適切な責任やプレッシャーを持つ人が増える

  • 自部署の利益だけでなく、全社的な視点で他部署も含めた利益を最大化しようとする人が増える

  • 問題が発生した場合に、解決に向けて迅速に対応しようとする人が増える

  • チームをまとめ、目標達成に向けて導くためのリーダーシップを発揮する人が増える

  • 自分のスキルや知識の向上だけでなく、チーム全体の成長に責任を持つ人が増える

といった、プラスの効果が期待できます。

ミドル世代の管理職登用を加速させるためには、

  • ミドル世代自らが自分のキャリアの方向性を明確にし、管理職としての可能性を考える場を設ける

  • 明確な目標を設定し、達成することで評価や昇進につなげる仕組みを導入する

  • ミドル世代がこれまで得た経験やスキルを把握し、それらを生かせる部署やミッションに配置する

  • 不足しているスキルや知識を明確化し、スキルギャップを特定する

  • スキルギャップを埋めるための研修やスキル向上のための学習機会を提供する

  • ミドル世代の経験を生かせるプロジェクトにアサインし、適切にフィードバックの機会を設ける

  • 新しい役割に挑戦した結果、仮に失敗しても失敗を許容する文化を醸成し、心理的な負担を軽減する

  • 実際に管理職になる前に、プレマネジメント経験を積める機会を提供する

  • ミドル世代がロールモデルを見つけやすいように、様々なバックグラウンドを持つ管理職を登用する

などの取り組みが必要です。「適切な目標とミッションセット」「必要なスキルや経験を習得する機会の提供」、さらに「管理職に登用しやすい評価制度・文化醸成」などがポイントになります。

今や「管理職は“罰ゲーム”」とまで言われるようになっており、こちらの記事には、

マイナビは9日、管理職を対象に実施した仕事の負担や満足度などについてのアンケート調査の結果を発表した。管理職になって「心身の健康が損なわれた」と答えた人が全体の68.9%に上った。業務負荷が大きくかかっていることを背景に挙げる声が多い。部下との接し方に悩みを抱えて健康への影響を感じる人も多かった。

とあります。「仕事の比重が増えた」「プライベートの時間が少なくなった」「ハラスメントと言われるのを避けたい」など管理職の負担は実際に大きいことは事実ですが、その一方で、管理職になったことで「それまでとは違う働きがいややりがいが生まれた」「報酬が上がった」などの声もあります。

管理職を増やしていくための方法としては、以前もこちらに書かせていただきましたが、特に今の時代は、

①管理職の役割を明確に定義した上で、役割を魅力的なものにすること
②管理職は「やりがいがある」だけでごまかさずに、報酬も魅力的なものにすること
(感情報酬も金銭報酬もどちらも重視)

という点に目を向ける必要もあります。

■ミドル世代の生かし方②責任と権限を与える

同じ記事の別の事例では、ミドル世代に「責任と権限を与える」ことで、成長実感を得られる工夫をしています。大きな仕事を信頼して任せ、自ら試行錯誤することで成長し、さらに大きな仕事を任されるというサイクルを作っているのです。その結果、

社内で実施しているエンゲージメント調査の「職場診断」の結果を見ると、20〜30代がおよそ8割を占める「担当者中堅グレード」で、成長実感に関する項目は23年度のスコアが4.32(6点満点)、裁量権に関するスコアが4.65。どちらも19年度と比べて改善され、30代の離職率も19年度は4.8%だったが、23年度は4.0%と定着度が高まっている。成長を求める30代への対応として参考にする余地は小さくないだろう。

とある通り、「成長実感」も「裁量権の大きさ」も感じるミドル世代が増え、組織や会社に対するエンゲージメントも高まるという相乗効果を得られています。

ミドル世代の社員は、経験とともに実力がつき成果を上げていたとしても、業務上重要な意思決定が一人ではできない立場にいることが多く不満を抱えがちです。一定の裁量権や権限を与え、意思決定できる機会を増やしていくことが、ミドル世代のモチベーションを高めることにつながるのは明らかです。

ミドル世代に責任と権限を与えることで、

  • 自分の仕事の重要度が高まり仕事への意欲や満足度が向上する

  • 迅速な意思決定ができるようになり、業務の効率化柔軟な対応につながる

  • 自らの行動が組織全体に影響を与えるという意識が高まり、責任感が芽生える

  • チーム内の信頼関係が深まりチーム全体の協力体制が構築される

  • リーダーシップを発揮する機会が増え、将来的なリーダー候補を育成する土壌が整う

  • 新しいアイディアやアプローチを試す機会が増え、イノベーションが促進される

というようなメリットが生まれますが、それは以下のようなデメリットをも上回るプラスの効果ではないかと思います。

  • 過度な責任や権限を与えすぎると、ミドル世代が精神的・肉体的に疲弊する可能性が高まる

  • 権限を与えられたミドル社員が、権限を乱用するなどしてチームの士気低下につながることがある

  • ミドル社員に過度な権限を与えることで管理職との役割が曖昧になり、責任範囲や指揮系統が混乱することがある

  • 特定の社員に権限を与えすぎると、業務の依存度が高まり、異動や退職をする場合に組織全体が混乱する可能性がある

  • 責任と権限を与えても十分なサポートがない場合、期待通りの成果が得られないことがある

ミドル世代に「権限だけ与えてサポート環境を整えない」「部下育成も含め、責任をなすりつける」というようなことがあると、成長実感を与えるどころか逆効果となり、業務過多やモチベーション低下、心理的負担の増大を引き起こし、そのような環境から逃げ出したくなる社員が増えてしまいます。

あくまでミドル世代だけでなく、若手社員や次世代のリーダーにも裁量を分配することで権限委譲のバランスを取り、ミドル世代が適切な自由度と権限、裁量権を持つことで、組織全体の生産性や競争力を高めていく必要があります。

■ミドル世代の生かし方③チャレンジ精神を引き出す仕組みを作る

さらに別の事例では、ミドル社員の「チャレンジ精神を引き出す仕組みを整える」ことで、新たな取り組みに多くの社員を巻き込み、会社全体の風土に変革を起こす取り組みを行っているという紹介がありました。

九州電力は23年度から、全社的な組織変革の取り組み「Qden Transformation(QX)」を始めた。個人の「こうしたい」という意思(Will)と会社の方向性を対話によって擦り合わせ、社員の主体的な挑戦を企業成長の力としていく。

トップダウン型の経営から脱却し、社員の発想や熱量を引き出しながら、社員自らの思いを尊重できる風土への変革を試みた事例で、次世代人材の能力開発を行うための育成の仕組みを整え、ミドル世代に受講してもらうという取り組みのようです。社員の思いや熱量を汲み、挑戦意欲を失わせずに、様々な挑戦に対する後押しがある環境というのは、間違いなく社員のモチベーション向上や成果の最大化につながっていきます

こちらの記事には、

40代以上のスタートアップへの転職が目立ってきた。人材大手のエン・ジャパンによると2024年は22年比8割増で推移している。資金の流入で給与水準が高まり、従来は難しかった「やりがい」の追求に現実味が帯びる。経験やノウハウを新天地で生かそうと中高年が動き出した。

 とあり、これまでの経験を新しい分野で生かし、まだまだ挑戦したいと考えるミドル世代が少なくないことが分かります。スタートアップへの転職で「年収」も「やりがい」もどちらもアップできるという労働市場環境が整いつつあるとすると、特にチャレンジ意欲の高い優秀な人材ほど「転職」という道を選ぶ可能性も高まっていくはずです。

こちらの記事にも、

賃金の上昇が40〜50代でも鮮明になってきた。2000年前後に社会人となった「氷河期世代」が就職活動していた時期は採用を絞っていた企業が多く、管理職などの人手不足が背景にある。スタートアップは「ミドル」の経験や専門知識を評価し、積極採用に動いている。

とあり、企業側も単なる欠員補充のための中途採用ではなく、「自分のやりたい仕事をしたい」「もっとチャレンジをして給与も上げたい」という前向きな“チャレンジ精神”と、事業変革のための“専門的な知識”や“経験”を持つミドル世代を求めるケースが増えているのです。

豊富な経験やノウハウを保有しているミドル世代に対して企業がすべきは、可能性を自ら閉ざしてしまっている社員がいた場合にキャリアデザインの機会を適切に設けることです。中長期のキャリアについて考えることで、本当は挑戦したいと思っているのに諦めていたことや、他の部署や職種で生かせる強みやスキルを自ら理解する機会となることも珍しくありません。本人に新たな可能性に気づいてもらい、「どのような役割を期待しているか」「どのような経験やスキルを評価しているか」をしっかりと伝えて新しい挑戦への原動力としてもらうことも有効な手段だと思います。


最後に、前述した通り、ミドル世代は全従業員の大半を占めていきます。その大半の成長が鈍化してしまうと、組織全体のパフォーマンスが低下していくのは明らかです。繰り返しになりますが、いかにミドル世代のモチベーションを高めて成長を促進させていくかが、組織力の強化やビジネスの成功、企業価値向上において重要なカギを握っているのです。

グローバル化やテクノロジーの発展により、市場環境は今後もさらに激化していきますが、競争戦略の差別化を図ることが難しくなりつつあります。戦略で差別化しにくいとなると、策定した戦略を実行するための「オペレーション力」や「運用力」が決め手となっていきます。

そのオペレーションを支える「ミドル世代の能力開発」こそが、各企業の未来を作っていくことになり、ミドル世代の個々の能力を最大限発揮させることに成功した組織・企業は、他社が真似したくても真似できない強い競争力を手にすることになるはずです。


#日経COMEMO #NIKKEI

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