どうしようもない小売業界における、D2C事情2020

こんにちは。KATALOKoooの翠川です。

この投稿をしてから、1年半が過ぎました。このときはもちろん「新しい生活様式」なんて誰も想定しておらず、この短い期間で、小売業界の状況はまた変化しています。コロナ以降、小売業界が元々抱えていた問題がすごいスピードで顕在化したようなこともあります。小売業界における、D2Cというキーワードは、どうなっているのでしょうか。

日本のD2C事情、D2Cはサブスクとセット…?!

D2C(Direct to Consumer)」がビジネス的に話題のワードだったこの数年。『D2Cって通販と何が違うの?』という質問に答えるのも飽きてきましたが、日本の小売業界では実際のところ、D2Cはスピード感を持って広がっているのでしょうか?

D2Cでビジネス展開しているプロダクト(コンテンツ)ですが、アメリカではアパレルをはじめ、マットレスやスーツケースなど、様々なものがありますが日本で盛り上がっている商材はほぼ、

食料品(サプリ含む)・化粧品・アパレル

など、消耗品が目立っているように見えます。そしてほぼサブスクリプションのビジネスモデルです。一部のアパレルは消耗品的ではないように見えますが、自分のサイジングや好みの形で展開してくれるアパレルを信頼して、消費者としてはサブスク的に注文する…というようなことは起こっている感じがします。

既存メーカーのD2C化は進んでいない

D2Cが話題になり始めた時とき、大変だ!全てのメーカーはこれからD2Cにシフトしていく!新しく生まれるブランドはみんなD2C!小売は終わりだ!と話されていました。しかしながら、既存のメーカー/ブランドがどんどんD2C化する…ということはありませんでした。

日本でD2Cが盛り上がりにかける3つの原因は、

・消費者は、自分で選べない人が圧倒的に多い
・メーカー/ブランドは、マーケティング優先ではない
・製造側が、革新に沿ったものづくりに対応できるところが少ない

という関わる3者の性質によるものだと考察します。この性質の循環が、小売・製造業界のD2C化を遅らせている正体だと思います。

この性質についての考察は、下記投稿に掘り下げて書いています。

小売店の勝機は、専門店化

さて一方で、消費者に、メーカーに、D2Cがはまらないなら、小売は安泰!ということもないのが悲しい小売業界です。この市況に対して引き続き苦しんでいます。これまで時代を築いてきた小売の重鎮たちは業績が思わしくありません…。

現場を見ていて深く感じるのが、「差がすごい」ということ。流行っているところは流行っていて、人がいないところはいないのが顕著。いつでもそうではあるんですが、本当に真ん中がない。

これは、過去に書いた「アフターコロナに向けてやるべきはどうしても会いたいリストに入ること」で書いたことが割と顕著に出てしまっているのかもしれません。

お客さんにジャッジされちゃったんじゃないですかね

その差について話していたときに聞いた怖いフレーズです。いやほんと、事業縮小してしまったところは、ジャッジされちゃった…ということなんでしょう。。

「どこにでもある」「よく見かける」ものをおいているところは閑古鳥。
「ここにしかない」「今しかない」ものをおいているところは人気。

自分で買えるものはネットで探す。ネットより早いものはリアルでかなり売れている、というのもあると思います。

すなわち、小売店でも専門店には勝機がある気がします。消費者はおすすめしてくれる人は求めているので、専門店でコンシェルジュのような専門家が紹介してくれるのであれば、小売店で買う意味があると感じるようです。

小売店がコロナ禍半年の中で、ようやくECに力を入れ始めたのも感じますが、ECを立ち上げて広告を打つだけではリアルで落ちた分の売上を補完できないでしょう。オンライン上でも、「専門家」「新しいものの紹介」など、小売がすべき新しい提案の仕方を考えるべきタイミングだと強く感じています。

小売に代わるインフルエンサー

もう一つ可能性を感じるのは、その人の目線を求めるフォロワーを持つインフルエンサーが、小売店に代わる位置づけになりそうだということ。キーオピニオンリーダーとしてのインフルエンサーに、おすすめされたい、センスや知識、人気かどうかを伝えるのをインフルエンサー が小売店に代わった役わりとして紹介していく方法は可能性がありそう。インフルエンサーマーケティングはもう古い、という雰囲気ありますが、ただ情報をばらまいていくのではなく、一緒に歩むスタイルでターゲットがぴったりあったとき、効果を生み出していくと考えられます。

小売とメーカーは共存して生き残る方が絶対いい

メーカーは、専門店やインフルエンサーに扱ってもらえる商品開発とブランドの表現と両立させると同時にD2Cの比率を上げる意識はもっていく。

最近の気配としては、D2Cの定説「ダイレクトな分単価を下げて数を売る」のではなく、「単価を下げずに生産量は減らすが利益は同じ」という方にこのコロナ以降シフトしています。受注生産に切り替えていく流れなど、このシーズンから加速しています。SDGs的にも、この方が今っぽい。

すなわち今後は、D2Cでも単価は上げていく=価値をあげて提供していけるところが勝者になるでしょう。

価格のトピックでいうと、良品計画の事業部化したイデーの家具が、11月から大幅に値下げをすることを発表しました。

日本では、作る量・環境でコストダウンが可能になるので、「単価を下げていく」で勝負に出るのは日本では厳しそう。単価を下げて勝負するなら、大手と組むの一択。そんな選択肢が現れることがなかなかないのが現実ですが…。

メーカー/ブランドは、顧客との距離が近づいた

なかなか話がしんどくなってきましたが、いい気配もないわけではないです。メーカー/ブランドの発信に人が見えている(デザイナー・中の人など)にはお客さんがついていて、SNS+オンラインショップがコミュニティ化していいスパイラルが生まれたりしているのもよく見かけます。

コミュニティ化が進んでいるブランドは、

短期的に、とにかく「即」動いている
中期的に、お客様を大事にしてることが伝わる企画を定期的にしている
長期的に、世界観を表現する発表を続けている

という時間軸が特徴です。

出合って1-2点購入してから直接やりとりしている消費者は、ブランドとの新しい関わりが楽しくなっていきます。こんなブランドが声を聞いてくれるんだ!やりとりできるんだ!というのは新鮮です。

ミュージシャンが、配信メインの販売方法に変わってから、メジャーで売れなくても抱えているフォロワーに向けて配信を続けられアーティストとして成り立っているというのに似たような、新たなコミュニティ型のブランド形成(マーケティング優位ではなく、アウトプットメインで広がるコミュニティ型)は、D2Cの変形?的な位置付けで今片鱗があり、今後増えていく気がします。

消費者は、ふるいにかけたものだけで楽しめると気づき始めた

最後に、消費者の変化にも触れておきたいと思います。コロナ禍において消費者が失ったもの第一位は、「なんとなく」だと思います。皆さんも、「なんとなく電車に乗っていた時間」「なんとなく選んでいた余暇に使うもの」「なんとなくする飲み会の約束」がなくなったのではないでしょうか?

ふるいにかけて残ったもので十分楽しめる、なんとなくのものはいらない

ことに気がついたのでしょう。これが、「ジャッジされちゃった」の正体です(震)。

不要不急の排除で、「なんとなく」は削られた。それでも、半年がたった今、次に人が求めていることは、「不要不急」だけど欠かせないものです。「必要至急」ではなく、「なんとなく」でもないものに、注目が集まっている雰囲気があります。「鬼滅の刃」無限列車編の大ヒットなどは、このタイミングの代表例だと思います。

要するに、正直者が馬鹿を見ない時代がリアルすぎる

小売が、新しいものを見つけ紹介し続けなければいけなくなった。
ブランドが、お客様を意識しなければいけなくなった。
消費者が、「なんとなく」はいらないと気づいた。

まとめてみると、あるべき姿になっていると思います。1年半前の結論と、まさか一緒とは…。コロナ禍で、加速的に進んだとも言えると思います。でも実際は、消費自体が減るというのは業界全体的には恐ろしいこと。

それでも、正直に、実直に、そして素早く対応していくことでしょう。なんとか、業界自体が苦しいといってもなんだろうが食らいついていきたいと思います。

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翠川裕美( KATALOKooo 代表 )
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