見出し画像

良い会社 最大の条件は、気骨のある社長が率いている、ということである

今回のCOMEMOのお題は、こちらである。

https://comemo.nikkei.com/n/n016756880bc4?magazine_key=mb7af516ae320&fbclid=IwAR3tikH01CjG_ALWULGzRH5hW95HTA_AtNWGB1Umkpm8eibZOpXpCu15edE

良い会社の条件・・・・?!

と問われ、筆者がまず想起したのは、
・風通しが良い
・心理的安全性が高い
・公平である
・チャレンジ精神が漲っている
など、つまり、モチベーションにつながる組織カルチャーがある、ということであった。

しかし、これらは、なんというか、当たり前でいかにも予定調和な回答に感じられる。マーケティングを仕事とするものとして、ちょっとそれはいただけない。逆張りで行かなければ。

ということで、次に思いついたのは「誇りに思えるポイントがたくさんある」ということである。

好むと好まざると、どの企業に勤めているか、は、他者から見られた際、その人のアイデンティティの多くを占める。
本人にとってみれば、企業は主要な所属先でもある。

そんな企業に、誇れるポイントがあったら、本人は結構幸せなのではないだろうか?

自分の子供に対して、「パパ/ママの勤めている会社は、日本一XXなんだよ」とか「環境にとてもいいものを作ってるんだよ」などと言えたり、買い物に行ったとき、店頭に自社の商品が並んでいるのを見せられたり、なんなら「こんな立派なビルに入っているんだよ」と社屋を見せられたり、などなど。

子供に対するコミュニケーションだけではない。自分が所属する組織にそういう感覚を抱ける、ということは小さからぬ自己肯定感につながる気がする。

だが、この見方は重要だとは思うものの、ちょっと一面的に過ぎる。いくら自社の商品が店頭を賑わしていても、泣く子も黙るブラック企業だ、というのでは、良い会社とは言えない。

そこで、これらの上位に位置付けられる要件は何か、と考えたところ思いついたのが、「気骨のある社長が率いている」ということである。

まず「気骨のある社長」と「先だって思いついた2つの点」について、整理してみたい。
初めは企業カルチャーについて。

企業カルチャーは、MVV・パーパスと同時に語られることが多い。
確かにこれらは不可分なことではある。が、MVV・パーパスを制定することによってのみでは、カルチャーは絶対に醸成されない。これらに則った行動を大多数の社員が取って初めて、生まれるのだ。

一方で、MVV・パーパスは、それを決めることだけでも結構な負荷・工程がかかるので、そこで一旦立ち止まってしまい、お題目化してしまうケースも散見される。

そこで重要なのが、トップの行動である。

https://comemo.nikkei.com/n/nd4b31a0297b9

これは以前筆者が記した記事で、自身が勤めていた企業のCEOが取っていた一貫した行動により、次第にそのカルチャーが築かれていったエピソードが記してある。

すなわち、良い社長は、カルチャーの源泉だ、という次第。

次に、誇れるポイントについて考えてみたい。

こちらはカルチャーよりもさらに自明だと思うが、会社が優れた業績をあげ、日本一になったり、どこにでも自社商品が並んでいる状態を作るためには、一貫して明確なヴィジョンを発信し、それを達成するための戦略を策定し、組織全体をそちらに意識づけした上で、実行しなければならない。これらはトップの構想力やリーダーシップなしでは為し得ない。

立派な自社ビル、というのだって、そのために巨額の費用を拠出する意思決定が必要である。近視眼的に「とにかく安くあげよう」というトップからは
そういう決断は出てこない。

反証もある。

「馬鹿な大将、敵より怖い」という言葉がある。
せっかく確立した規律を人気取りでそれを緩め、結果オペレーションが崩壊してしまったり、率先して頭越しのコミュニケーションを行うことにより、組織の自立と活力を自ら削いでしまったり、そんな社長の姿は枚挙にいとまがない。短絡的だったり、利己的な判断を先行させたりする社長が率いる組織の将来には、幸福はない。

では、気骨のある社長とは、どんな社長のことだろうか?筆者が思うに、

(1)一貫性がある
常に一つのヴィジョンに向かっている、判断基準が明快である。
と、リーダーがこういう行動をとると、その内在論理、すなわち一つひとつの意思決定の背景にあるロジックを、組織全体に指し示すことができる。
リンカーンは、アメリカの政治家の範となっており、「リンカーンならどう考えるか」という問いの立て方があると物の本で読んだことがあるが、それが成立するのも、リンカーンの判断に一貫性があり、それにより周囲に内在論理が伝わったからである。
一旦その回路が回り始めると、リーダーのディシプリンは組織全体の規範となり、カルチャーの一部となっていく。

(2)公平である
上に引用した筆者の記事にもあるように、誰かを特別扱いすることは、政治・それに端を発する疑心暗鬼、諦め、マウンティングの原因になり、生産性を下げる。人には必ず好き嫌い・相性があるので、全ての人にイーブンに接するのは非常に骨の折れることであるが、心理的安全性・風通しなど、従業員の幸福につながるカルチャー醸成のためにとても重要である。

(3)正直である
筆者が以前勤務していた会社で、CEOの跡目を3人の実力者が争っていたことがあった。
このうちの一人 A氏が、CEOに「自分の芽があるか」と直談判した時に、CEOは「次はB氏であると考えており、君ではない」と告げた。
それにより、A氏は会社を去り、別の会社のエグゼクティブに転身した。
A氏は泣く子も黙る、凄腕の実力者であり、彼が組織を去ってしまうことは、組織内のスキル・リソースの合計値を下げることであった。
ので、CEOとしては、組織の損得だけ考えたら、A氏に本音を告げず、騙し騙し在籍させるのが合理的だったかもしれない。
しかし、A氏の将来にわたる納得や幸福を考えた場合、CEOが取った判断は多分正しく、結果としてCEOおよび企業は、社員の幸福を一番に考えてくれる組織である、という信頼を勝ち取った。
そして、社員にとっては、自分たちが信頼できる環境で仕事ができるのは、幸福なことである。

(4)前向きである
色即是空ではないが、現実は複雑であり、どの様な観方をするか、すなわち
・そのどこに着目しするか?
・着目点とその周辺の関係性からどのような意味を見出すか?
により薔薇色にも灰色にもなる。
なのでリーダーは、直面する景色から合理的な範囲でポジティブな景色を読み取り、不確定性の高い未来を照らす光として、それをベースに組織を鼓舞しなければならない。
世界を一面的にしか見られないと、これは出来ないし、多面的に見られたとしても、ネガティブな切り取りばかりしていると、組織は傷を最小限に抑える行動原理に陥り、縮小均衡になる。

とまぁ、このような要件が、気骨を構成しているのではないか、と考える。

社長の気骨は、なかなか社外からは見えにくく、なので就職や転職の材料にするのは難しいかもしれない。
しかし、会社の良さを大きく左右する社長の個性、興味を持って現職の社員に聞いてみる、などの試みは、その会社の見極めをする上で、結構有用なのではないかと思う。

読者の皆さんは、どうお考えですか?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?