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起業家メンタリングを沢山してきて思う、成長する起業家の3つの特徴 〜「コア」と「柔軟性」と「試行力」

お疲れさまです、uni'que若宮です。


起業家に必要な3つの資質

今年は自社で事業を立ち上げるかたわら、他の場所でも事業の種をまくことが増えてきました。このバランスは大事にしていて、「自ら事業をつくること」をしなくなり実践しない理論家になると井戸が枯れてしまうので、「自ら事業する」を軸足にすることは決めているのですが、一方で、自分がつくる事業だけでは数にも限界がありますし、おそらく僕はプレイヤーとして大成するよりはコーチとしての方が能力が高いタイプ(起業家として僕よりすごい人はそれこそゴマンといます)なので、種をまいたり起業家を育てることで未来の可能性を増やす方が僕らしい社会への価値の届け方かなと思っています。(アート思考もその一環ですが、もしかすると歳のせいかもしれませんw)


自社のスタートアップ・アトリエYour、Startuphub Tokyoなど公の機関での起業塾、Delight Venturesでのメンタリング、その他企業の新規事業での相談、全部合わせると一年でざっと50くらいの事業に対してメンタリングをしているはず。

メンタリングを沢山していると、起業家として大きく成長する方とそうでない人がいて、そこにある程度の共通点が見えてきます。

成長する人の特徴は、「芯」と「柔軟性」、そして「試行力」です。


①「コア(芯)」

起業家はこれまで世の中にない事業をつくろうとするので、わからないことが沢山あります。すると不安になり、いろいろな人に色んな意見をもらいたくなります。

しかし、多くの意見をきくことにはリスクもあります。

それは「ブレる」ことです。

たくさん意見をもらい、それらの意見に合わせているうちにブレていき、そもそも何をしたかったのか、わからなくなってしまうことがあります。

アクセラレータープログラムでもよくみることですが、色んな人からアドバイスをもらい、そのたびに一喜一憂、右往左往してしまう。それが業界で有名なひとだったり、知見のあるメンターだったり、企業の偉い人だったり、権威っぽいものがあると余計にそれに振り回されてしまいます。

しかし本来、新規事業はひとつひとつがユニークなものです。過去に別の事業で成功した経験があろうと、ものすごく多くの事例を「知って」いる大学の先生であろうと、それが自分の事業にとっての正解とは限りませんし、むしろ新たな価値であればあるほど「既存の定石が役に立たない」ということもありえます。

こうしたことに惑わされないために、起業家はブレない芯(コア)を持つことが重要です。

「コア」には2つポイントがあるように思います。

一つは「深さ」。植物の根の深さが深いほど安定しているように、起業して届けたい価値がどれだけその人の深くまで根ざしているかはとても重要です。それは単に「やってみたいこと」よりももっと深いもので、「やらずにはいられない」くらいに「原体験」や生来のいびつさとしてその人の中に深く埋め込まれているものです。

起業や事業のプランをきいた時、ざっくりだいたい半分くらいのアイディアが「あ、頭で思いついただけの案だな」という感じがします。とくに、(自分もそうでしたが)大企業で働く高学歴の知的労働者の中には、自分のアイディアや思考力にとても自信がある人たちというのがいます。

こうした人は「いいこと思いついたっしょ?」という感じで事業アイディアに課題な自信を持っている人が多いのですが、思いつきで根が「浅い」ためにアイディアが表層的で、深いインサイトを欠いていることも多いのですよね。

もう一つは「シンプルさ」です。上記の「賢い」タイプにあるあるなのですが、仮説に仮説を重ねてしまい、どんどん話が複雑になり寄せ集めのようなビジネスモデルになっていたりすることが多いのです。Aという仮説について質問すると、それには答えずに「BもあるしあとCもありまして…」と迂回して説明が増えていく。でも核心をつく部分からは逸れていってしまう。そうするうち、Aという一番大事なところをおざなりにしたまま、BとCとDとEとFと…と「言い訳」が増えてしまいます。

「深くシンプルなコア」。「あれもこれも」では「コア」になりませんし、「柔軟性」も欠いてしまいます。


②「柔軟性」

「柔軟性」というのは「変化できる」ということですが、これは「コア」とも連動しています。

本当に「コア」がしっかりしている人は柔軟です。というか、「コア」がしっかりしているからこそ柔軟でいられるのです。

スタートアップではよく「ピボット」と言いますが、起業というのは事業を世に出してからも思い通りにいくことは少なく、何度も試行錯誤を重ねていくものです。そして、よくいっているように「ピボット」というのは軸足がしっかりしているからこそ機敏にできるのです(軸足が定まっていないピボットはピボットではなく「トラベリング」です)。先日、舞踏家の松岡大さんのワークショップに参加した時に「身体を空ける」ということを習ったのですが、重心をしっかり軸足に乗せることで「身体を空ける」ということが自由な動きには重要なのですね。

そして「コア」=軸足がしっかりしていると、そこさえブレなければよいというところがはっきりわかっているので、人の意見がしっかり聞けるのですよね。ブレたり振り回されたりせず、柔軟に取り入れて変化できる

一方、「コア」がしっかりしていないとどこが大事でどこが大事でないかわかっていないので、かえって自分の意見に固執する方が多いのです。コアがシンプルではなく「あれもこれも」になっている方はどれも手放せずガチガチの凝り固まった感じになっていて、アドバイスを受け入れられず変化できない。傾向としていうと「あれもこれも」はそもそも高学歴の人に多いのですが、そこに高学歴のプライドも邪魔をするのでまったく耳を貸せない状態になっている人もいます。するとアドバイスを「否定」ととってしまうため、脊髄反射で打ち返したり不機嫌になったりするのですが、これは「ブレない」ということではなく単に「凝り固まっている」だけなのです。

こちらの新井さんのコメントにあるように↓「萎縮」も「意地」も自分らしさからは遠いよくない状態なのですよね。

【新井紀子さんの投稿】「二刀流」について疑問を呈する解説者や識者も少なくなかったと記憶している。
常識では「失敗するに違いない」と考えられる試みを成し遂げようとすると、必ずそうした雑音は起こる。そこから身を守ろうとすると、アスリートでも数学者でも起業家でも、大きく丸く膨らんでいた自分の中のイメージがどうしても委縮する。委縮すまいと努力すると、雑音をシャットアウトするか意地になる。そうしたほんの少しの歪みが、実際に失敗を引き寄せてしまうことはよくあることだ。
大谷選手の笑顔からは、そうした歪みを感じない。否定・過大な期待の両方から自由なままで、これからも彼らしさを貫いてほしい。

コアがあるからこそ柔軟でいられる、自分の考えに固執せず、変えていくことができるわけです。


③「試行力」

コアがあり、柔軟性があるからこそある起業家の資質のもうひとつは、「試行力」です。

思考のほうではなく、「試行」する力、要は「やってみる」ということですね。新しい事業は究極いうとやってみないとわからないのですが、頭でっかちな人ほど色々と仮説や説明はするけれども検証のための行動を起こさない。これでは永遠にわかりません。

メンタリングでなにか質問した時、「すみません、それは考えていませんでした」とか「そこはまだよくわかりません」と爽やかに答えられる人ほど強いんですよね。わからないことがわかっているからこそ、その後ちゃんと「やってみる」からです。逆にわからないことでも色々理屈をつけて有耶無耶にしてしまう人は成長しない。起業や新規事業は正解がないからこそ、理屈をつける前に「やってみる」しかない事が多いのです。「ブレてない」のか「凝り固まっている」のかはこの「試行力」やその胆力をみるとわかります。


成長する起業家は、「深くシンプルなコア」をもち、だからこそそれ以外は「柔軟性」と「試行力」をもってどんどん変化していきます。逆に「浅く複雑なアイディア」をつくって自分の考えに固執し、「試行」をしない人は起業家としては成長しない傾向があると感じます(過去の自分がそうだったのでよくわかります)。

起業したい、新規事業を起こしたいという方は複雑なビジネスモデルやフレームワークをこねくりまわしたり市場データを分析したりして分厚い事業計画書をつくる前に、①コアと②柔軟性と③試行力を意識してみるとよいのかな、と思います。


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2021年も日経COMEMOで60本以上の記事を書きました(たぶん平均4〜5千字は書いているのでCOMEMOだけで30万字(!)くらい書いている計算)。今日が今年ラストなので、もしよかったら今年の僕のCOMEMO記事でみなさんお気に入りのものがあったらコメント欄で教えていただけたらうれしいです。



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